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「観る将」が観た第6期叡王戦本戦トーナメント 藤井二冠準決勝

6月22日に行われた叡王戦本戦トーナメント準決勝、藤井聡太王位・棋聖と丸山忠久九段の対局を観た感想です。藤井二冠は1回戦で行方九段、2回戦で永瀬王座を降しています。丸山九段は1回戦で青嶋六段、2回戦で木村九段を降しています。

両者は昨年の竜王戦決勝トーナメントで初めて顔を合わせ、千日手指し直し局で得意の後手一手損角換わりを魅せた丸山九段が完勝したのは記憶に新しいところです。時間の使い方を含めた丸山九段の作戦が奏功した1局で、藤井二冠としては各3時間と比較的持ち時間の少ない本局での時間の使い方も気になるところです。

振り駒で後手となった丸山九段は4手目に相手の角を取り、伝家の宝刀一手損角換わりを採用します。藤井二冠は早繰り銀に構え、3筋から仕掛けて銀を交換します。丸山九段は持ち駒にした銀を自陣に打ってバランスよく守りを固め、相手の飛車の脇に△3八歩と手裏剣を飛ばします。藤井二冠は▲3四歩と突き捨て相手の銀を浮き駒にしてから、▲3八飛と歩を払います。丸山九段が飛車で狙われた銀を引いたところで昼休となり、AIの評価値は互角と示されていますが、持ち時間は丸山九段が1時間程多く残しています。

昼休明け、藤井二冠は▲2四歩からの攻撃を決行し"と金"を作ります。丸山九段は△2七角成と馬を作り△3七歩から"と金"を作りましたが、藤井二冠の"と金"の方が相手玉に近く、形勢も少し傾いてきたようです。丸山九段は何か誤算があったのか熟考を重ね、持ち時間も差がなくなってきました。

藤井二冠も敵陣に角を打ち、馬を作ってから"と金"で相手玉に迫りますが、丸山九段の"と金"は相手の桂香を拾いつつ戦場からは離れてしまいます。受けが難しくなってきた丸山九段は△8六桂と王手しますが、序盤に9筋の歩を突いた効果でそれ以上の寄せはなく、藤井二冠は着実に詰めろで迫って寄せ切りました。

本局は11か月前の対局と同様、丸山九段の後手一手損角換わりの将棋となりましたが、昼休明けに藤井二冠が攻勢を掛けると徐々に形勢が傾き、丸山九段にはチャンスらしいチャンスが訪れませんでした。前局では早々に秒読みに追い込まれた藤井二冠でしたが、それ以降の成長を裏付けるように時間を10分以上残しての快勝となりました。

この結果、藤井二冠は6月28日に行われる斎藤慎太郎八段との挑戦者決定戦に駒を進めました。もし豊島叡王への挑戦権獲得となれば、王位戦七番勝負と並行して最大十二番勝負を戦うことになります。タイトル戦の合間を縫っての厳しい日程が少し心配ですが、ファンとしては大いに期待したいと思います。

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