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ABEMAトーナメント2023 予選Aリーグ第二試合

4月22日に、ABEMAトーナメント2023の予選Aリーグ第二試合が放映されました。第一試合に勝ったチーム永瀬「川崎家」と、前回優勝のチーム稲葉「NIN NIN」の顔合わせとなっています。
※本稿は収録当時の段位で記述させていただきます。

一局目:増田康宏六段 vs 出口若武六段

チーム永瀬は初戦からエースを投入し、前回大会でも2回当たったという顔合わせになりました。先手の出口六段が相手が得意とする角換わりに誘導し、相掛かりを予想していた増田六段の読みを外しますが、お互いにテンポ良く駒組みを進めます。増田六段は居玉のまま6筋の位を取り、出口六段が▲5六銀と腰掛けると、△5四歩と突きます。意表を突かれた出口六段が2分以上考えて、6筋から反発して銀で桂を食いちぎると、増田六段は△4七銀と打って飛金両取りを狙います。出口六段が▲6四歩と打って銀を引かせ、更に1分半程考えて▲4九飛と受けると、増田六段は8筋の歩をぶつけて仕掛けます。出口六段は▲4七金と銀を取りますが、増田六段は△8七歩成から角で金を食いちぎって竜を作ります。出口六段が構わず▲7五桂から攻め合うと、形勢でも時間でもリードしていた増田六段も、ついに秒読みに追われる激戦となります。出口六段は▲2二金と打って後手玉の退路を封鎖し、増田六段の連続王手をかわして逃げ切りました。
チーム永瀬:0勝 - チーム稲葉:1勝

二局目:本田奎五段 vs 出口若武六段

チーム稲葉は、前回大会で多用した連投で連勝を狙います。先手の本田五段が角換わりに誘導し、お互いに6分以上に増やして相腰掛け銀の駒組みを進めます。本田五段が▲4五桂から仕掛けると、出口六段は△2二銀と引いて受けます。本田五段が1-2筋も絡めて攻め掛かって▲3三歩と金頭を叩くと、研究を外れた出口六段は4分の長考で△3三同桂と応じます。本田五段が銀取りに▲1二角と打ち込むと、出口六段は飛車取りに△2五香と打ち返します。6分半以上残している本田五段は、あまり時間を使わずに飛車を諦め、▲3四角成と銀を取って馬を作ります。出口六段は飛車を取り、△8六桂から反撃に転じて攻め合いとなりましたが、本田五段も少しずつ時間を使って両者秒読みに追われる激闘となります。最後は先手玉に長手数の即詰みが生じたようですが決めきれず、再び先手に大きく形勢が振れたところで出口六段が駒を落とし、指し手が間に合わずに投了を告げました。
チーム永瀬:1勝 - チーム稲葉:1勝

三局目:永瀬拓矢王座 vs 服部慎一郎五段

チーム永瀬は、第一試合で3連勝のリーダーが登場します。先手の服部五段が矢倉を選択し、永瀬王座は現代調の駒組みから5筋の歩を交換します。服部五段が角をぶつけると、永瀬王座はいったん角を引いて避けますが、先手が銀を前進するとあらためてぶつけて角交換します。服部五段が金取りに▲4六角と据えると、永瀬王座は△3三桂~△4五歩と角を追います。服部五段が2筋から攻め掛かると、永瀬王座は歩で先手の飛車を6筋に追い、角銀両取りに△6五桂と跳ねます。服部五段が構わず銀取りに▲4四金と打って攻め合うと、永瀬王座は銀桂交換から飛銀交換して△6九飛と打ち込みます。服部五段が詰めろを掛けて下駄を預けると、永瀬王座は△7九竜と銀を食いちぎり、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム稲葉:1勝

四局目:増田康宏六段 vs 稲葉陽八段

チーム稲葉は、満を持してリーダーが登場します。後手の稲葉八段が角道を止めて雁木に組むと、増田六段は右四間飛車に構えます。稲葉八段が飛車を4筋に回して備えると、増田六段は飛車を3筋に寄せて歩を交換します。両者とも駒組みに戻り、稲葉八段が右玉に構えると、増田六段は9筋の位を取ります。ジリジリした中盤戦が続きましたが、増田六段が1筋に馬を作る間に、稲葉八段は9筋から反発して位を奪還します。増田六段は"と金"を作り、馬を取らせる代わりに香で飛車を捕獲して▲4一飛と打ち込みますが、稲葉八段は金銀両取りに△7五桂と打って奪った金を自陣に投入すると、馬を後手玉に近づけて攻め合います。増田六段も金銀を自陣に投じて粘りましたが、稲葉八段が△6五桂と王手すると、取ると王手竜取りがあるので投了となりました。
チーム永瀬:2勝 - チーム稲葉:2勝

五局目:永瀬拓矢王座 vs 稲葉陽八段

チーム稲葉は勝ったリーダーが連投し、リーダー対決が実現しました。先手の稲葉八段が相掛かりに誘導し、永瀬王座は受けて立ち角を交換します。稲葉八段が▲5六角と好所に据えると、永瀬王座は2分近く考えて△3三桂と応じます。稲葉八段が▲3五歩と仕掛けて桂を交換すると、永瀬王座は8筋の継ぎ歩から△8五桂と跳ね、銀取りに△4四角と打ちます。稲葉八段が駒音高く▲6四歩と銀頭を叩き、金取りに▲5五桂と歩頭桂を放つと、取ると飛車を素抜かれてしまうので、永瀬王座は△6七歩と玉頭を叩いて攻め合います。稲葉八段は▲6五歩と打って催促し、飛銀と銀桂の交換をしてから一気に受けなしに追い込みました。
チーム永瀬:2勝 - チーム稲葉:3勝

六局目:本田奎五段 vs 稲葉陽八段

チーム稲葉は、リーダーの3連投で勝負を賭けます。先手の本田五段が角換わりに誘導し1筋の位を取ると、稲葉八段は早繰り銀から飛先の歩を交換します。本田五段が少しずつ時間を使い、▲6六角と打って打開を図ると、稲葉八段は△5三角と打って対抗します。本田五段は右桂を跳ねて後手陣の銀と交換しますが、稲葉八段は△7五歩から銀を取り返して角も交換します。本田五段が桂を5筋に成り捨て、飛金両取りに▲7一角と打ち込むと、稲葉八段はいったん飛車をかわしてから△7六桂と王手します。時間に追われた本田五段は銀で桂を食いちぎってから飛車を取りますが、6分以上残している稲葉八段は既に読み切っているようで、△6六角の王手から一気に投了に追い込みました。
チーム永瀬:2勝 - チーム稲葉:4勝

七局目:永瀬拓矢王座 vs 服部慎一郎五段

後がなくなったチーム永瀬はリーダーが流れを変えに出陣し、三局目と同じ顔合わせになります。先手の服部五段が前局と同様に矢倉を選択し、▲3七銀と上がって手を変えると、永瀬王座は5筋の歩を突き捨てます。服部五段が飛先の歩を交換すると、永瀬王座は△3三銀と上がって飛車を追い返し、△2四金と上がって2筋に厚みを築きます。服部五段は▲4四銀とぶつけて銀交換し、▲3五銀と被せて金銀交換し、▲6二角成と銀を食いちぎって攻め込みます。永瀬王座は1分程考えて△4三金とぶつけて金交換しつつ玉の退路を作りますが、服部五段は飛銀両取りに▲5三金と打ち、飛金交換して▲8一飛と王手で打ち込みます。永瀬王座は飛竜両取りに△3九角と打ち、取った飛車を自陣に投じて粘りましたが、時間に余裕のあった服部五段は落ち着いて即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム稲葉:5勝

第二試合の結果

チーム稲葉は、チームが1勝2敗と苦しくなったところで登場したリーダーの稲葉八段が、3連投3連勝で流れを一転させ、チームを勝利に導きました。出口六段も一局目に逆転勝ちして貴重な白星を挙げ、服部五段も決着局ではリーダーの作った勢いそのままに快勝して貢献しました。前回大会では服部五段の3連投3連勝が輝きましたが、今回も勝者が連投して勢いを付ける方針のようで、優勝候補らしい力強い勝ち方だったと思います。
チーム永瀬は、好調だったリーダーの永瀬王座がタイスコアで迎えた五局目のリーダー対決で力尽き、自力で予選突破を決めることは叶いませんでした。本戦に進むことができれば、本田五段は2勝2敗とまずまずの星を残しており、前回大会で10連勝を記録して期待された増田六段の復調次第で優勝を争うチーム力だと思います。

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