見出し画像

ABEMAトーナメント2023 本戦2回戦第二試合

8月19日に、ABEMAトーナメント2023の本戦2回戦第二試合が放映されました。Aリーグ2位で1回戦ではチーム広瀬を降したチーム永瀬「川崎家」とDリーグ1位のチーム糸谷「鉄拳流」の顔合わせとなっています。


一局目:永瀬拓矢王座 vs 森内俊之九段

チーム永瀬はリーダーが自ら先陣を切ります。振り駒で後手となった永瀬王座が横歩取りに誘導し、森内九段が横歩を取ると、9筋を端攻めしてから7筋と3筋の歩を取ります。永瀬王座が4筋の歩を伸ばして銀に当てると、森内九段は8筋の歩を伸ばして飛車に当て、銀と飛車を取り合います。永瀬王座が△5五角と出て1筋の香を狙うと、森内九段は7筋の銀頭を叩いて攻め合います。永瀬王座が△1九角成と香を取って馬を作ると、森内九段も▲1一角成と香を取って馬を作ります。永瀬王座は△4六馬と引いて先手玉を睨むと、△3六金と打って飛車に当て、森内九段が▲7九香と銀を狙うと、△7一香と手厚く守ります。森内九段は8筋に"と金"を作って攻め合いますが、永瀬王座は飛車を取り、馬を自陣に引き付けてから△8八飛と打ち込んで攻め切りました。
チーム永瀬:1勝 - チーム糸谷:0勝

二局目:増田康宏七段 vs 糸谷哲郎八段

一局目を落としたチーム糸谷は、リーダーが流れを変えに出陣します。後手の糸谷八段が角道を止めて雁木を目指すと、増田七段は矢倉に構えます。糸谷八段が右玉に構え、銀交換してから△2八銀と打って桂香を狙うと、増田七段は▲4六角と出て銀と桂香の2枚替えに応じます。糸谷八段が角をぶつけて交換し、飛車取りに△2八角と打って馬を作ると、増田七段も金香両取りに▲2二角と打ち込みます。糸谷八段が力強く△3五金と前進してかわし、更にタダ捨ての△4六金と出ると、作戦会議室では森内九段が「どえぇっ、えっ、えっ」とつぶやきます。意表を突かれた増田七段が残り2秒まで考えて馬頭を歩で叩くと、糸谷八段は馬を見捨てて△5六金と銀を取り、更に△6七金と突進して先手陣を崩すと、挟撃態勢を作って寄せ切りました。
チーム永瀬:1勝 - チーム糸谷:1勝

三局目:永瀬拓矢王座 vs 徳田拳士四段

チーム永瀬は早くもリーダーが2回目のカードを切ります。後手の永瀬王座が再度横歩取りに誘導しますが、徳田四段は角道を止めて雁木に構えます。永瀬王座は銀矢倉の堅い陣形を作り、徳田四段は▲8八金~▲7八玉とバランスよく構えて4筋から仕掛けます。徳田四段が飛先の歩を交換すると、永瀬王座は△2三金と上がって金冠の形で飛車を追い返し、△1六歩~△2五桂~△3七桂成と飛び込んで銀に当てます。徳田四段は5筋から反撃しますが、永瀬王座は△4八角と打ち込んで馬を作ります。徳田四段は銀桂交換し、馬を作って攻めの糸口を探りますが、永瀬王座は徹底して相手の攻め筋を消し受け切りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム糸谷:1勝

四局目:本田奎六段 vs 森内俊之九段

チーム永瀬は本田六段が出陣します。先手の本田六段が相掛かりに誘導し、森内九段が先に飛先の歩を交換します。本田六段も飛先の歩を交換して六段目に引くと、森内九段は△4四角と出て飛車に当てます。本田六段は3筋の歩をぶつけ、森内九段が角で取ると、▲1一角成と激しく踏み込み、両チームの作戦会議室から驚きの声が響きます。森内九段は飛角交換して王手銀取りに△2八飛と打ち込み、本田六段が▲4八角~▲5五馬と竜の捕獲を目指すと、8筋の歩を合わせます。本田六段が銀を上がって8筋を受けると、森内九段は2分半程の長考で角取りに△3六桂と打ちます。本田六段は角をかわし、森内九段が△2五桂と追撃して銀桂交換すると、馬で後手の飛車を追います。森内九段は△4八竜と金を食いちぎり、△5五飛と角と刺し違えると、△4九角と王手し寄せにいきます。本田六段は玉をかわして▲5六馬と守りに利かせますが、森内九段は△8七銀から挟撃態勢を作ります。本田六段が▲8二飛と打ち込んで攻め合い、▲5二竜と金を食いちぎると、作戦会議室では糸谷八段が「大丈夫か、あぁー怖い」と悲鳴を上げますが、森内九段は冷静に逃げ切りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム糸谷:2勝

五局目:永瀬拓矢王座 vs 徳田拳士四段

チーム永瀬は早くもリーダーが3回目の登場で、三局目と同じ顔合わせとなります。後手の永瀬王座がまたも横歩取りに誘導し、徳田四段は横歩を取って応じます。永瀬王座も横歩を取り、飛車をぶつけて交換すると、お互いに飛車を打ち合って竜を作ります。徳田四段が竜取りに▲4六角と打つと、永瀬王座は竜をぶつけて交換します。お互いに自陣の傷を消し、永瀬王座が△6五桂と跳ねると、徳田四段は▲4五飛と打ち2筋の桂を取ります。永瀬王座が△7九飛と金取りに打ち込むと、徳田四段は▲6五飛と桂を食いちぎり、王手銀取りに▲6四桂と打って勝負します。永瀬王座は玉をかわすと、前局と同様攻めを急がず、指す手のなくなった徳田四段は投了を告げました。
チーム永瀬:3勝 - チーム糸谷:2勝

六局目:本田奎六段 vs 糸谷哲郎八段

チーム糸谷は後手番をリーダーが買って出ます。後手の糸谷八段が角道を止めて雁木に構えると、本田六段は矢倉に構えます。本田六段が3筋の歩を突き捨てて仕掛けると、糸谷八段は珍しく1分半程考えて△6五桂と跳ね、8筋の歩も突き捨ててから△3四銀と自陣に手を戻します。本田六段は飛車で3筋の歩を取り、糸谷八段が△2五銀と出て飛車に当てると、飛車を取らせる代わりに桂で銀と角を取ります。本田六段が▲5五角と打つと、糸谷八段は8筋の桂頭を歩で叩きます。本田六段は構わず銀で桂を食いちぎり、糸谷八段が桂を取って"と金"を作ると、▲8二銀~▲7三桂と飛車を追って攻め込みます。糸谷八段が銀で桂を食いちぎり、△2九飛と打ち込んで竜を作ると、本田六段は歩で竜の横利きを止めてから▲3五銀と前進します。糸谷八段は△4五桂と打って反撃に転じ、飛車で銀を食いちぎってから△5七桂打と先手玉に迫り、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:3勝 - チーム糸谷:3勝

七局目:増田康宏七段 vs 徳田拳士四段

チーム糸谷はこの試合は白星のない徳田四段を温かく送り出します。先手の徳田四段が矢倉を選択すると、増田七段は右銀を早めに繰り出します。徳田四段は左銀を繰り出して受けると、中住まいにしてバランス型の陣形を敷き、増田七段は9筋の位を取ります。徳田四段は4筋の歩をぶつけて仕掛け、増田七段が桂で取ると▲2五桂と跳ね違えます。増田七段は△6五銀とぶつけますが、徳田四段は構わず2筋の歩を合わせて角を飛び出し、▲3三角成と金と刺し違えます。増田七段が銀交換してから△2四角と打って先手陣を睨み、△6五桂と跳ねて玉頭から攻め掛かると、徳田四段は▲4三歩成~▲4四桂と後手玉に迫ります。増田七段は△8九竜と王手し、眠っていた角を△8六角と飛び出し、△2六銀と上部脱出を阻止して即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:4勝 - チーム糸谷:3勝

八局目:増田康宏七段 vs 森内俊之九段

チーム永瀬は勝った増田七段の連投で勝負を賭けます。力戦調の将棋となり、増田七段が雁木に構えると、森内九段は5筋の歩をぶつけて角で取り、△7三角と引きます。じっくりした駒組みが続き、増田七段が右四間飛車にして仕掛けると、森内九段は角を8筋に覗いて受けます。増田七段は▲2五桂と跳ね、森内九段が銀を4筋に上がってかわすと、▲4六歩と合わせて銀を吊り上げ、6筋の歩を突いて角道を通します。増田七段が▲4六銀とぶつけてから▲4五歩と銀頭を叩くと、森内九段はやむなく桂の利きに銀を引いて凌ぎ、8筋の歩を突き捨てて△7五歩と反撃します。増田七段が銀で取ると、森内九段は角で銀を食いちぎり、△7六銀と角頭に打ち込みます。増田七段は飛車取りにもい1枚の角を打ちますが、森内九段は角銀交換し、飛車を見捨てて先手陣の金を剥がします。森内九段は飛車取りに角を打って飛角交換し、△4九飛から竜を作って先手玉に迫りますが、増田七段が上部脱出を図ると、時間に追われて飛車取りに銀を打ちます。増田七段はチャンスを逃さず▲1三桂成と王手で飛び込み、そのまま長手数の即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:5勝 - チーム糸谷:3勝

第二試合の結果

チーム永瀬は、リーダーの永瀬王座が初戦に勝つと、若手を相手に辛い指し回しで前半に3勝してチームを牽引しました。後半の勝負どころではエースの増田七段が連投連勝し、チームの勝利に大きく貢献しました。エンディングでリーダーから激励された本田六段の調子が上がってくれば、優勝への道が開けてきそうです。
チーム糸谷は、リーダーの糸谷八段が2戦2勝と意地を見せました。森内九段も着実に1勝を挙げましたが、決着局では苦しい状況からギリギリの勝負に持ち込みましたが、最後は時間にも追われて惜しくも敗れました。新鋭の徳田四段はトップ棋士の洗礼を浴びる形となりましたが、今大会の経験を今後の成長に活かせるよう楽しみにしたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?