見出し画像

ABEMAトーナメント2023 本戦準決勝第一試合

9月9日に、ABEMAトーナメント2023の本戦準決勝第一試合が放映されました。Aリーグ2位で本戦ではチーム広瀬とチーム糸谷を降したチーム永瀬「川崎家」と、Cリーグ1位で本戦ではチーム羽生を破ったチーム天彦「天辺堂」の顔合わせとなっています。


一局目:増田康宏七段 vs 三枚堂達也七段

チーム永瀬はエースの増田七段が先陣を切ります。振り駒で先手となった三枚堂七段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換します。増田七段が飛車を7筋に寄せて△7六飛と歩を取ると、三枚堂七段は▲6六角と上がって後手の飛車の可動域を狭めます。増田七段が△6四銀と繰り出して5筋の歩をぶつけると、三枚堂七段は▲7五銀とぶつけて銀交換します。増田七段は飛車を8筋にかわして下段に引くと、3筋の歩を突き捨てて桂頭を叩いて銀を吊り上げ、△5七銀と打ち込んで金と交換し、更に角取りに△5六金と打ちます。三枚堂七段は角を4筋に引き、増田七段が△7五角と攻め駒を足すと、▲7九玉と早逃げします。増田七段が5筋に歩を垂らすと、三枚堂七段は▲4七銀打と受けてから歩で自陣の傷を消します。増田七段が△4八角と打ち込むと、三枚堂七段は飛車に当てて▲5七角と合わせます。増田七段は桂と銀を取って馬を作り、三枚堂七段が角で飛車を取ると、馬で銀を追います。両者時間に追われながらの激しい攻め合いとなりましたが、最後は桂で先手陣の金銀を剥がした増田七段が即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:1勝 - チーム天彦:0勝

二局目:本田奎六段 vs 戸辺誠七段

チーム天彦は前の試合で3戦3勝の活躍を見せた戸辺七段が出陣します。後手の戸辺七段は中飛車に振り、角を交換してから向かい飛車に振り直すと、穴熊を目指します。本田六段は9筋の位を取り、銀冠に囲って戦機を探ります。戸辺七段が4筋の歩を突き捨てて、飛車を4筋に回すと、本田六段は飛車が走るのを防ぎつつ桂取りに▲4四角と打ちます。戸辺七段は△4五桂と歩を取り、本田六段が▲3三角成と馬を作って飛車に当てると、飛車取りに△3九飛と打ち、△5七角成と馬を作って攻め合います。お互いに飛車を取り合い、本田六段は▲1二飛と打ち込んで"と金"攻めをしますが、戸辺七段は5筋に香の二段ロケットを設置し金銀を剥がします。最後は本田七段が9筋から端攻めして後手玉を追い詰め、戸辺七段の反撃をかわして逃げ切りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム天彦:0勝

三局目:永瀬拓矢王座 vs 佐藤天彦九段

両チームとも予定通り、リーダー対決が実現しました。後手の永瀬王座が横歩取りに誘導し、佐藤九段は青野流で受けて立ちます。永瀬王座が9筋の歩を突いて△7二銀と上がると、佐藤九段は1分以上の長考を重ね、飛車を2筋に戻して角を交換します。永瀬王座が飛車で4筋の歩も取ると、佐藤九段は3筋の桂頭を歩で叩いて飛車で取らせ、飛車に当てて▲5六角と打ちます。永瀬王座は飛車を8筋に回し、銀頭を△8七歩と叩いて引かせると、△8八角と打ち込んで攻め掛かります。佐藤九段は構わず3筋の歩を伸ばし、永瀬王座が香を取って馬を作ると、▲3三歩成と桂を取ります。佐藤九段は▲7四角と飛び出し、王手銀取りに▲6四桂と打って銀桂交換しますが、永瀬王座も△7六歩から桂を取って"と金"を作ります。時間に追われた佐藤九段は▲4五桂~▲3三銀と踏み込みますが、永瀬王座は銀交換の後、"と金"を寄って王手し、馬の利きを通して△3三馬と万全を期します。佐藤九段は懸命に攻め続けますが、永瀬王座は丁寧に受けてから△6九飛成と王手で飛び込み、そのまま寄せ切りました。
チーム永瀬:3勝 - チーム天彦:0勝

四局目:増田康宏七段 vs 戸辺誠七段

チーム天彦は順番を変えて戸辺七段を送り出します。後手の戸辺七段が四間飛車に振り、角を交換してから3筋に振り直して石田流を目指すと、増田七段は左美濃から7筋の位を取り、金銀を繰り出して厚みを作ります。増田七段が3筋の歩を交換して銀を繰り出すと、戸辺七段は△4七角と打ち込みます。増田七段は2筋の歩を突き捨ててから▲3四歩と打ち、戸辺七段が桂を2筋に跳ねてかわすと、3筋の歩を成り捨て、飛金両取りに▲4二角と打って飛角交換します。増田七段が飛車を打ち込んで▲1一飛成と竜を作ると、戸辺七段は△3六角成と馬を作って銀を追います。増田七段は▲6五桂~▲7四歩と後手の玉頭を攻め、戸辺七段が3筋に金底の歩を打って凌ぐと、▲3二飛成と金を食いちぎって攻め掛かります。戸辺七段が△6四角と打って竜に当てると、増田七段は銀を取り、竜角交換に応じます。戸辺七段は2枚飛車で先手玉に迫り、△5一馬と引いて自玉のコビンを守りますが、増田七段は▲7三銀から清算して馬取りに▲8五桂と打ちます。この瞬間に先手玉には即詰みが生じており、狙いすましていた戸辺七段はノータイムで△8八銀と王手し討ち取りました。
チーム永瀬:3勝 - チーム天彦:1勝

五局目:永瀬拓矢王座 vs 三枚堂達也七段

チーム永瀬はリーダーが出陣します。後手の永瀬王座がまたも横歩取りに誘導し、三枚堂七段は青野流で受けて立ちます。永瀬王座は角交換し、三枚堂七段が飛車を7筋に回すと、飛車に当てて△5四角と打ちます。三枚堂七段は5筋の歩を伸ばして後手の角を1筋に追うと、▲2七銀と上がって圧力を掛けますが、永瀬王座は飛車を2筋に回して歩で受けさせます。永瀬王座が桂をぶつけて交換すると、三枚堂七段は銀取りに▲3四桂と打って後手の角の利きを止めます。永瀬王座が銀を引いてかわし、桂取りに歩を打つと、三枚堂七段は飛車を3筋に回します。永瀬王座が桂を取ると、三枚堂七段は▲5六角~▲8三角成と馬を作ります。永瀬王座は1筋の歩を伸ばして銀を取り、三枚堂七段が飛車取りに▲5六桂と打つと、△5六同角と食いちぎって△3四桂と飛車取りに打ち返します。永瀬王座は勝勢となりましたが、焦らず先手からの攻めを受け、後手玉に詰めろが掛かったところで反撃して即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:4勝 - チーム天彦:1勝

六局目:本田奎六段 vs 佐藤天彦九段

後がなくなったチーム天彦はリーダーが出陣します。後手の佐藤九段が角道を止めて雁木を選択すると、本田六段は早繰り銀から3筋の歩をぶつけて仕掛けます。佐藤九段は8筋と7筋の歩を突き捨て、本田六段が2筋の歩を交換して飛車を五段目に引くと、角をぶつけて交換します。本田六段が飛車を追わずに▲2二歩と桂頭を叩くと、佐藤九段も△8八歩と桂頭を叩きます。本田六段が歩で飛車を追い、互いに桂を取り合うと、佐藤九段は△3四銀と上がって飛車を追ってから、△8七飛成と竜を作ります。本田六段は▲7七角と自陣に打って凌ぎますが、佐藤九段は△8五桂と跳ねて角を追い、△9五角と王手し、△6五桂と追撃します。佐藤九段は△7七桂右成から攻め込み、飛車を捕獲して△3九飛と打ち込み寄せ切りました。
チーム永瀬:4勝 - チーム天彦:2勝

七局目:永瀬拓矢王座 vs 戸辺誠七段

チーム永瀬は好調のリーダーが勝負を決めに出陣します。先手の戸辺七段が中飛車に振り穴熊を目指すと、永瀬王座も穴熊に囲います。戸辺七段が3筋の歩を突き捨て、7筋の歩もぶつけると、永瀬王座は飛車を浮いて桂頭を守ります。戸辺七段は飛先の歩を交換し、永瀬王座が歩で受けると、飛車を3筋に回します。戸辺七段が▲3五角~▲6二角成と馬を作ると、永瀬王座も△8六飛と走ります。戸辺七段は▲3三飛成と角と刺し違え、▲3四歩から後手陣を崩すと、永瀬王座も△3六桂から先手陣を崩します。戸辺七段が▲3三桂成と詰めろを掛けて下駄を預けると、先手玉には即詰みが生じていたようですが、3分以上残していた永瀬王座は2分程考え、手堅く飛車を打って詰めろ逃れの詰めろを掛けます。再び混戦になるかと思われましたが、最後は終始手堅く指した永瀬王座が寄せ切りました。
チーム永瀬:5勝 - チーム天彦:2勝

第一試合の結果

チーム永瀬は、一局目に増田七段、二局目に本田六段が勝ってチームに流れを呼び込むと、リーダーの永瀬王座が盤石の将棋で3連勝し、危なげなく決勝に駒を進めました。絶好調のリーダーに加え、増田七段と本田六段も期待通りの活躍を見せ、優勝候補の筆頭チームに、いよいよエンジンが掛かってきた印象です。
チーム天彦は、リーダーの佐藤九段がリーダー対決に敗れ、前の試合で3連勝した戸辺七段が1勝に終わり、残念ながらここで力尽きました。エンディングで各メンバーが他のメンバーへの感謝を口にし、それぞれが「楽しかった」と最高の笑顔を見せたところに、団体戦におけるチームワークの重要性を感じさせる素晴らしいチームだったと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?