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NHK杯で西山女流三冠が初戦突破 ~次戦は藤井竜王名人~

第74回NHK杯は1回戦が進行中ですが、6月23日に木村一基九段vs西山朋佳女流三冠が放映されました。


三間飛車vs居飛車穴熊

振り駒で先手となった西山女流三冠は三間飛車に振り、美濃囲いに構えます。木村九段は持久戦調の駒組みを進めますが、西山女流三冠が7筋の歩を伸ばして急戦を匂わせると、いったん左美濃に囲います。木村九段は△6四銀と上がって7筋の歩を狙い、西山女流三冠が▲7六銀と上がって歩を支えると、穴熊に組み替えます。

西山女流三冠の馬

西山女流三冠は▲9七桂と跳ねて8筋の歩を狙い、木村九段が飛車を7筋に寄せると、6筋の歩を伸ばして銀を追い返してから▲8五桂と1歩得となります。木村九段は△3二金右と寄せて守りを固め、西山女流三冠が飛車を5筋に回すと、飛車を浮いて横利きを通します。西山女流三冠は5筋の歩を交換して▲4四角と捌きつつ飛車の利きを銀に当て、木村九段が6筋の歩を取り込み飛車の横利きで銀に紐を付けると、▲7一角成と馬を作ります。

木村九段の技

木村九段は歩の連打で飛車を吊り上げ、△5五銀と飛車に当てて引かせてから△6七歩成と飛び込み、西山女流三冠が▲4五桂と跳ねて角に当てると、△5八歩と打って飛車の侵入を防いでから、△4四角とぶつけます。西山女流三冠が馬と角の交換に応じてから飛車で"と金"を取ると、木村九段は△4五銀と桂を食いちぎり、飛金両取りに△5五桂と打って金桂交換します。形勢は穴熊の堅陣が無傷の後手に、わずかに傾いているようです。

一瞬の隙

西山女流三冠は金取りに▲4四桂と打ち、木村九段が金を引いてかわすと、▲5一飛成と竜を作って攻め合います。木村九段が△4一金打と竜を追い返すと、西山女流三冠は攻防に▲5五角と放ちます。放置すると馬を捕獲されるので、木村九段が△6八馬とかわすと、西山女流三冠は▲7四歩~▲7三歩成と"と金"を作って飛車を3筋に追います。後手は攻め駒が不足し、形勢は先手に傾いてきたようです。

豪腕の寄せ

木村九段は△2五歩と玉頭戦を挑みますが、西山女流三冠は"と金"で金を剥がし、▲3三角成と飛車と交換し、金取りに▲6一飛と打ち込んで畳み掛けます。木村九段は8筋の桂を取って攻め駒を補充し、西山女流三冠が▲3一金と攻め駒を足すと、銀取りに△3五桂と打って攻め合います。西山女流三冠は竜で自陣の玉頭に迫る歩を一掃し、木村九段が銀桂交換すると、▲2一金と桂を食いちぎります。後手玉には即詰みが生じており、この手を見た木村九段は投了を告げました。

まとめ

本局は木村九段が穴熊の堅陣を築いてわずかに優勢となりましたが、西山女流三冠は切れ味鋭く攻め込み、一瞬の隙を逃さず形勢を入れ替えると瞬く間に寄せ切りました。女流棋界No.1の豪腕が、「千駄ヶ谷の受け師」の異名を持つ達人の受けをねじ伏せる、会心の勝利だったと思います。
西山女流三冠は次の2回戦では藤井聡太竜王名人との対局が決まっており、対局直後には「現在序列1位の先生と指せるということで、良い内容の将棋を求めて頑張りたいなと思います」と話しました。どのような展開になるのか楽しみにしたいと思います。また、次の公式戦(7月4日の朝日杯一次予選)に勝つと、棋士編入試験の資格を得ることができるそうなので、こちらも期待したいと思います。

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