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棋聖戦二次予選の注目対局2局

第92期棋聖戦の二次予選決勝で、注目の対局が2局ありました。

■1月27日 屋敷九段vs西山女流三冠
西山女流三冠は奨励会では三段という段位ですが、女流タイトル保持者の立場で初めて棋聖戦予選に参加しています。一次予選では、先日渡辺名人を破って王位リーグ入りを果たした片上七段ら4人を撃破し、女性として初めて二次予選に進出しました。二次予選でも棋聖挑戦経験のある森下九段を破り、決勝にコマを進めています。屋敷九段は棋聖獲得通算3期の経験があり、藤井二冠に破られるまでタイトル挑戦とタイトル獲得の最年少記録を保持していたことで話題になりました。現在も順位戦はB級1組、竜王戦は2組に在籍する強豪です。

将棋は先手の西山女流三冠が得意の中飛車で美濃囲いに構え、屋敷九段は銀2枚を中央に繰り出して対抗します。機敏に仕掛けた屋敷九段が駒得から徐々にリードを拡げ、最後は挟撃体制を作って寄せ切りました。女流棋戦では相手をねじ伏せるような破壊力のある攻撃が持ち味の西山女流三冠ですが、屋敷九段の隙のない指し回しが光りました。
西山女流三冠は、現在三段リーグでもトップと1勝差で四段昇段を目指しています。今回は残念ながら惜しくも本戦出場を果たせませんでしたが、女性として初めてここまで勝ち上がった戦いぶりは称賛に価すると思います。近い将来、初の女性棋士として各棋戦で活躍する姿を予感させる快進撃だったと思います。

■1月28日 羽生九段vs森内九段
ともに永世名人の資格を持つ両者の対局は、2018年度の銀河戦以来およそ2年8か月ぶり、137回目の対局になるそうです。森内九段は2017年3月にフリークラス宣言をして以降、2年間は日本将棋連盟の理事を務めるなど将棋そのものでの目立った活躍はありませんでしたが、先日発行されたNumberの将棋特集で「わたしの最盛期はこれからです」というインタビュー記事があり、その中で「将棋の技術はいまが一番高い。来年の方がもっと高くなる」と語っています。自信に満ち溢れた森内九段が、かつての好敵手を相手にどのような将棋を魅せるのか、非常に注目されました。

本局の戦型は先手の羽生九段の誘導で相掛かりとなり、飛車が中段で飛び交う最新型の激しい将棋となりました。羽生九段が1筋からの突破を果たし馬を作りますが、森内九段は相手の馬を閉じ込めて反撃します。じわじわと追い詰められた羽生九段は、入手した飛車を敵陣に打ち込み攻めをつなぎますが、森内九段の手厚い受けの前に突破口を開けません。最後は竜も追い返され、万策尽きた羽生九段の投了となりました。
羽生九段がここで姿を消すことに寂しい想いもありますが、森内九段が復活の狼煙をあげたことで新たな楽しみがまた一つ増えた様に思います。羽生九段に快勝した勢いで、久しぶりのタイトル戦登場となるか、期待しつつ見守りたいと思います。

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