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「観る将」が観た第16期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦

3月3日に、マイナビ女子オープン挑戦者決定戦が行われました。準決勝で山根ことみ女流二段を破った甲斐智美女流五段と、準決勝で香川愛生女流四段を破った加藤桃子女流三段の顔合わせとなっています。

甲斐女流五段は1997年に13歳でプロ入りした39歳のベテランで、タイトル獲得は通算7期です。加藤女流三段は2019年に奨励会から女流棋士に転向した27歳で、タイトル獲得は通算9期です。両者の対戦はこれまで11局あり、加藤女流三段が8勝3敗とリードしています。

三間飛車対居飛車穴熊

振り駒で先手となった加藤女流三段の居飛車に対し、甲斐女流五段は三間飛車に振り美濃囲いに構えます。加藤女流三段が左美濃から銀冠穴熊を目指すと、甲斐女流五段は6筋の位を取って高美濃に組み替えます。

中央で開戦

甲斐女流五段が飛車を5筋に振り直して歩をぶつけると、加藤女流三段も飛車を5筋に回します。甲斐女流五段が30分の長考で5筋の歩を取り込み△7三桂と跳ねると、加藤女流三段は10分の考慮で力強く▲5五銀と出てぶつけます。甲斐女流五段が角道を通して5五の地点への利きを足すと、加藤女流三段は歩で飛車の利きを止めますが、銀を交換してから飛車をぶつけます。

加藤女流三段の馬と甲斐女流五段の竜

加藤女流三段は▲3三角成と角を取って馬を作り、甲斐女流五段は△5八飛成と飛車を取って竜を作ります。加藤女流三段が馬で香を取り、甲斐女流五段が飛車を先手陣に打ち込んだところで昼休となりました。形勢はわずかに甲斐女流五段に傾いているようです。各3時間の持ち時間の内、残り時間は甲斐女流五段が1時間54分、加藤女流三段が2時間7分となっています。

加藤女流三段の二段ロケット

昼休明け、加藤女流三段は9筋の歩を突き捨ててから▲9七香打と二段ロケットを設置します。甲斐女流五段が持ち駒の銀を9筋に打って守ると、加藤女流三段は▲4四馬と好所に引き付けます。甲斐女流五段が△2九飛成と桂を取って2枚目の竜を作ると、加藤女流三段は33分の長考で▲9五香と端攻めを決行します。

端の制空権を巡る攻防

9筋で銀と香2枚の交換となり、△9五同香と先手玉に王手が掛かると、加藤女流三段は▲9六歩と防ぎます。甲斐女流五段が△9一香と援軍を送ると、加藤女流三段は歩で香を1枚剥がします。甲斐女流五段が△5三金と馬に当てると、加藤女流三段は馬で金を食いちぎり、▲9八香と打って玉頭を守ります。甲斐女流五段が△9二香打と攻め駒を足すと、加藤女流三段は香の利きに▲9四銀と打って支えます。

甲斐女流五段の穴熊攻め

甲斐女流五段は△4四角と好所に据え、加藤女流三段が角を合わせると、角を交換して再度△4四角と打ち直します。加藤女流三段は自陣に金を投じて粘りますが、甲斐女流五段は歩で香を吊り上げ△9七桂と打って詰めろを掛けます。加藤女流三段は銀を引いて詰めろを逃れますが、甲斐女流五段は桂を交換して銀取りに再度△9七桂と畳み掛けます。

怒涛の寄せ

加藤女流三段は▲7九桂と打って竜の横利きを緩和しますが、甲斐女流五段は竜で桂を食いちぎります。加藤女流三段は取れる竜を取らずに▲9八玉と上がって竜と角の利きから逸らしますが、甲斐女流五段は角で金を食いちぎります。加藤女流三段が金で竜を取ると、甲斐女流五段はもう1枚の竜で金を取り返します。加藤女流三段は玉で桂を取りますが、甲斐女流五段が桂を犠牲に作った空間に△8六金と王手すると、無念の投了を告げました。

まとめ

本局は穴熊の堅陣を築いた加藤女流三段に対し、甲斐女流五段が後手番ながら中央から積極的に仕掛けました。飛車と角の取り合いとなり、甲斐女流五段が2枚飛車で攻め掛かると、加藤女流三段は端攻めで対抗しました。甲斐女流五段は端を手厚く受けると角を好所に設置し、縦横斜めから穴熊を攻略し寄せ切りました。
甲斐女流五段は西山朋佳女王への挑戦権を獲得し、2019年の第1期清麗戦以来久し振りのタイトル戦登場となりました。今年度は女流王位リーグで西山女王を倒し、紅組優勝で挑戦者決定戦への進出を決めています。4月に開幕する五番勝負での熱戦を期待したいと思います。

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