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ABEMAトーナメント2023 予選Bリーグ第二試合

5月13日に、ABEMAトーナメント2023の予選Bリーグ第二試合が放映されました。第一試合を圧巻の5勝0敗で勝利したチーム羽生「不動心」と、前回大会ではエントリーチームで下剋上を起こしたメンバーを迎えたチーム斎藤「飛慎隊」の顔合わせとなっています。
※本稿は収録当時の段位で記述させていただきます。

一局目:伊藤匠五段 vs 冨田誠也四段

チーム羽生は前の試合と同様に伊藤五段が先陣を切り、プロ入り同期の対決となります。振り駒で先手となった冨田四段が中飛車に振り、伊藤五段は右銀を繰り出し、飛車を7筋に寄せて飛先の歩を交換します。冨田四段が▲5五銀とぶつけると、伊藤五段は△6五銀とかわして角に当てます。冨田四段は歩で飛車を8筋に追ってから角を引き、更に▲4六角と転回しますが、伊藤五段は△8六歩とぶつけて攻め合います。伊藤五段が△5六銀~△4五銀と角を追うと、冨田四段は角を引いて飛車に当てます。伊藤五段が飛車を7筋にかわしつつ金に当てると、冨田四段は金を前進して飛車を追います。冨田四段は▲4六歩と銀を捕獲しますが、伊藤五段は金桂交換してから角取りに△7八金と打ち込みます。冨田四段が銀を取ると、伊藤五段は角金交換してから竜を作ります。冨田四段は自陣に金を投じて粘りますが、伊藤五段は△2五角と打って飛車と交換し、△1五歩からの端攻めで先手玉に迫ります。伊藤五段は端を清算して△1九飛と打ち込み△1四竜と2枚飛車で攻め、上部脱出を図る先手玉を逃がさず即詰みに討ち取りました。
チーム羽生:1勝 - チーム斎藤:0勝

二局目:梶浦宏孝七段 vs 黒田尭之五段

チーム斎藤は黒田五段を送り出し、エントリーチーム経験者同士の対局となります。後手の黒田五段が三間飛車に振り美濃囲いに構え、飛先の歩を交換すると、梶浦七段は穴熊を目指します。黒田五段が△3四銀~△3五銀と棒銀を見せると、梶浦七段は銀をぶつけて交換し、飛先の歩を突き捨てて▲2三銀と打って飛車に当てます。黒田五段は飛車を4筋にかわし、継ぎ歩から飛車をぶつけて交換すると、△2八飛と打ち込みます。梶浦七段は▲2一銀成と桂を拾い、歩で角を追いますが、黒田五段は△5八銀~△4七銀不成と金と交換し、△6六角と飛び出します。この角を取ると自陣の角を取られつつ竜を作られるので、梶浦七段は▲7九銀と打って辛抱しますが、黒田五段は△8八角成と銀を食いちぎって先手陣の穴熊を崩します。黒田五段は再度△5八銀と打ち、数の攻めで先手玉に迫って寄せ切りました。
チーム羽生:1勝 - チーム斎藤:1勝

三局目:羽生善治九段 vs 黒田尭之五段

チーム斎藤は勝った黒田五段の連投です。先手の黒田五段が初手に三間飛車に振ると、羽生九段は4手目に5筋の歩を突き、角を交換して向かい飛車に振ります。意表を突かれたか小刻みに時間を使う黒田五段が▲5六角と打って8筋と3筋を睨むと、羽生九段は△8四角と打って8筋を受けます。黒田五段が4筋の歩を突いて角の退路を作ると、羽生九段は△7五銀とぶつけて銀交換し、飛桂両取りに△7六銀と打って桂を取ります。早くも時間に追われた黒田五段は1筋を端攻めしますが、羽生九段は△5五歩と突いて角を追い、△5四桂と打って攻め掛かります。黒田五段は玉を引いて両取りを防ぎますが、羽生九段は△4六桂~△6七成銀と圧力を掛けます。黒田五段は飛頭に銀をタダ捨てする勝負手を放ちますが、羽生九段は冷静に△8六歩と飛車の利きを止め、お互いに飛車を取り合います。黒田五段は▲8一飛と打ち込みますが、羽生九段も△8九飛と打ち込んで寄せ切りました。
チーム羽生:2勝 - チーム斎藤:1勝

四局目:伊藤匠五段 vs 斎藤慎太郎八段

リードされたチーム斎藤は、温存していたリーダーが出陣します。先手の伊藤五段が相掛かりに誘導し、斎藤八段が先に飛先の歩を交換します。伊藤五段も飛先の歩を交換し▲3四飛と横歩も取ると、斎藤八段は△3三角と上がって受けます。伊藤五段が▲4五桂と跳ねて角に当てると、斎藤八段は△4四角と上がって飛車に当て返します。伊藤五段が飛車を浮いてかわすと、斎藤八段は角を交換してから△2三金と上がって飛車に当てます。伊藤五段が構わず飛車取りに▲7一角と打つと、お互いに飛車を取り合います。斎藤八段は△3九飛と打ち込みますが、伊藤五段は王手銀取りに▲3四桂と打ち、銀桂交換してから▲2三歩と玉頭を叩きます。斎藤八段は玉を3筋にかわしますが。伊藤五段は▲3一飛と王手で打ち込み竜を作ります。時間に追われた斎藤八段は△6五桂と怪しい勝負手を放ちますが、4分以上残している伊藤五段は30秒ほど考えて自陣に桂を打って飛車の利きを緩和します。斎藤八段は竜を作って攻め合いますが、伊藤五段は更に30秒程確認すると、▲3二"と"から即詰みに討ち取りました。
チーム羽生:3勝 - チーム斎藤:1勝

五局目:梶浦宏孝七段 vs 冨田誠也四段

チーム羽生は順番通り梶浦七段を送り出します。先手の冨田四段が四間飛車に振り美濃囲いに構えると、梶浦七段は△5五角と飛び出します。冨田四段が▲4七銀と上がって歩を守ると、梶浦七段は△6四銀と上がって急戦を狙います。冨田四段が▲5六歩と突いて角を追い返し、▲6五歩と角道を開けつつ銀にぶつけると、梶浦七段は角を交換して銀を5筋に引きます。お互いに陣形を整備し、冨田四段が▲6六角と据えると、梶浦七段は△3三桂と跳ねて角の利きを緩和します。冨田四段が▲5五銀と前進して銀交換し、飛車を5筋に回して▲6三銀~▲5四銀成と突破を図ると、梶浦七段は飛車取りに△6七銀と打って攻め合います。冨田四段が飛車を取らせる代わりに、成銀で後手陣の金を2枚剥がすと、梶浦七段は2筋の歩をぶつけて玉頭戦を挑みます。梶浦七段は王手銀取りに△2五飛と打ちますが、冨田四段は▲2七銀から飛車を追って捕獲し、▲2二飛と打って後手玉を追い詰めると、▲4二飛成と銀を食いちぎって寄せ切りました。
チーム羽生:3勝 - チーム斎藤:2勝

六局目:羽生善治九段 vs 斎藤慎太郎八段

チーム羽生は順番を変えず、リーダー対決が実現しました。先手の羽生九段が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となります。斎藤八段が△4一飛と回しますが、羽生九段は構わず4筋から仕掛けて▲4六角と据えます。斎藤八段が6筋の歩を突き捨ててから飛車を8筋に戻すと、羽生九段は2筋の歩を突き捨て、銀で取らせてから4筋の歩を伸ばします。斎藤八段は7筋の歩をぶつけますが、羽生九段は手抜いて▲4五銀とぶつけます。斎藤八段が1分半程考えて7筋の歩を取り込み、銀で取らせて△6六角と王手すると、羽生九段は▲7七歩と打って収めます。形勢互角のまま難解な中盤戦が続き、斎藤八段が銀取りに△3三歩と打って催促すると、羽生九段は▲2三銀不成と踏み込み、銀を取り合います。斎藤八段は△8六歩と金頭を叩いて攻め合い、△8六飛と金を食いちぎって先手玉に迫りますが、羽生九段は冷静に▲7一飛と王手で打ち込み▲7六飛成と自陣に引き付けます。斎藤八段が歩で竜を吊り上げ竜桂両取りに△6六銀と打つと、羽生九段は竜で銀を食いちぎって▲2六飛と走ります。時間に追われた斎藤八段は△8九金とタダ捨てして先手玉を下段に落として△7七角成と迫りますが、少し時間を残していた羽生九段は丁寧に受けて逃げ切りました。
チーム羽生:4勝 - チーム斎藤:2勝

七局目:伊藤匠五段 vs 黒田尭之五段

後がなくなったチーム斎藤は黒田五段に託し、意外にも初対戦となる顔合わせが実現します。先手の黒田五段が三間飛車に振り穴熊を目指すと、伊藤五段も穴熊に囲います。4筋の歩を交換した後、伊藤五段が△2四角と覗いて銀に当てると、黒田五段は▲3五歩とぶつけます。伊藤五段が△4四銀と援軍を送ると、黒田五段は▲4五歩と打って催促し銀を交換します。伊藤五段は△3三銀打と埋めますが、黒田五段は▲4四銀と打って後手陣の金駒を剥がします。伊藤五段が△4六歩と打って先手の飛車の利きを止めると、黒田五段は飛車を3筋に寄せ、角と刺し違えて▲3四歩と銀頭を叩きます。黒田五段が▲4四角と打って2枚角で攻め掛かると、伊藤五段も△7九飛と打ち込んで攻め合います。黒田五段は角で銀を食いちぎり、もう1枚の角を飛車と刺し違えて殺到し、最後は端攻めを絡めて寄せ切りました。
チーム羽生:4勝 - チーム斎藤:3勝

八局目:梶浦宏孝七段 vs 斎藤慎太郎八段

後がないチーム斎藤は、先にリーダーが出陣してフルセットを目指します。先手の梶浦七段が相掛かりに誘導し飛先の歩を交換すると、斎藤八段も飛先の歩を交換して五段目に引きます。斎藤八段は7筋の歩も交換し、9筋の歩も突き捨てると△9六歩と垂らして△9五飛と回します。梶浦七段は▲8六金と上がって飛車を追い返し▲9五歩と打って収めますが、斎藤八段は飛車を8筋に戻し、△5四角と打って8筋突破を図ります。梶浦七段が角を追うと、斎藤八段は△4七角成と銀を食いちぎり、△7六歩と垂らして嫌味を付けます。両者時間に追われる中、梶浦七段は▲5三角から馬を作りますが、斎藤八段は△6四金と打って馬を捕獲します。梶浦七段が馬を見捨てて▲2六香から反撃すると、作戦会議室で冨田四段が「リーダー頑張ってくれ」と叫ぶ中、斎藤八段が凌ぎ切りました。
チーム羽生:4勝 - チーム斎藤:4勝

九局目:羽生善治九段 vs 冨田誠也四段

フルセットとなり、チーム羽生はリーダーが出陣し、冨田四段との初対戦が実現しました。振り駒で後手となった冨田四段が四間飛車に振り、羽生九段が穴熊を目指すと、三間飛車に振り直します。羽生九段が慎重に時間を使いながら7筋の桂頭を攻めると、冨田四段は△8五桂と跳ねて角に当てます。羽生九段は▲8六角とかわし、冨田四段が金を前進すると、金で桂を食いちぎって香取りに▲6四角と上がります。冨田四段が金を投じて角に当てると、羽生九段は角を切り▲2二飛成と竜を作って攻め込みます。冨田四段が上部に脱出し、端攻めで先手陣を崩すと、羽生九段も入玉を目指します。羽生九段が馬を取って点数で優位に立ちましたが、冨田四段も飛車と馬を田楽刺しにして取り返し、持将棋が成立しました。

指し直し局は先後を入れ替え、羽生九段は11秒、冨田四段は55秒の持ち時間で始まります。先手となった冨田四段が四間飛車に振ると、羽生九段は五局目の梶浦七段と似た駒組みを進めます。冨田四段が前局と同様▲6六角と据えると、羽生九段は△7三角と据えて対抗します。両者とも飛車を5筋に回してバランスを保ちますが、冨田四段が桂を犠牲に馬を作ると、羽生九段は角をぶつけて飛車と交換させます。冨田四段は竜を作って攻め込みますが、羽生九段も馬を作って駒得を拡大します。羽生九段は△5七銀と打って飛車を捕獲し、角と馬を先手陣に直射させて寄せ切りました。
チーム羽生:5勝 - チーム斎藤:4勝

第二試合の結果

チーム羽生は、リーダーの羽生九段が3戦3勝の活躍でチームを予選1位通過に導きました。過去の大会では目立った活躍がありませんでしたが、復調した公式戦と同様、フィッシャールールにも適応してきた感があります。伊藤五段も着実に勝ち星を挙げており、この日は白星に恵まれなかった梶浦七段の調子が上向けば、本戦でも勝ち上がっていけそうです。
チーム斎藤は、リーダーの斎藤八段がまさかの負け越しで波に乗れませんでした。黒田五段が2勝して前回大会の勢いを持続しており、冨田四段は1勝して決着局もあと一歩のところまで追い詰める内容の濃い将棋を指していますので、予選突破を懸ける次戦での活躍を楽しみにしたいと思います。

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