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ABEMAトーナメント2023 予選Eリーグ第一試合

7月8日に、ABEMAトーナメント2023の予選Eリーグ第一試合が放映されました。活躍の目立つ若手を獲得したチーム渡辺「ラン ラン ラン」と、関西の若手を獲得した初出場のリーダーが率いるチーム千田「シーソーゲーム」の顔合わせとなっています。
※本稿は収録当時の称号で記述させていただきます。


一局目:岡部怜生四段 vs 西田拓也五段

チーム渡辺は、いきなり初出場の岡部四段の登場です。振り駒で先手となった西田五段が四間飛車に振り美濃囲いに構えると、岡部四段はミレニアムに囲います。西田五段が中飛車に振り直すと、岡部四段は△5三角と引いて8筋から仕掛けます。西田五段は飛車を8筋に回して受けますが、岡部四段が角を5筋に引くと、飛車を5筋に戻します。岡部四段が8筋の歩を伸ばすと、西田五段は歩で角頭を攻め、▲6五銀と桂を取ります。岡部四段が角を交換して△7五飛と銀に当てると、西田五段は飛銀両取りに▲8四角と打ち返します。お互いに銀を取って西田五段が馬を作ると、岡部四段は1筋の歩を突き捨ててから△7九飛成と竜を作ります。西田五段が▲5三歩成と"と金"を作り、▲5四銀と援軍を送ると、岡部四段は金と銀に当てて△7六角と打ちます。西田五段は構わず"と金"を寄って金銀交換し、銀取りに▲1四桂と打ちますが、岡部四段は歩の連打で香を吊り上げます。西田五段は▲1七同馬と引き付け、更に5筋に底歩を打って堅陣を築き、▲3三桂成から寄せ切りました。
チーム渡辺:0勝 - チーム千田:1勝

二局目:渡辺明名人 vs 藤本渚四段

チーム千田は、期待の現役最年少藤本四段が出陣します。後手の藤本四段が角道を止め雁木を目指すと、渡辺名人は矢倉を組んで、入城する前に3筋から仕掛けます。藤本四段が力強く金銀を前進して受けると、渡辺名人は何度か首を振って少考し、▲3五同銀から清算します。藤本四段が飛車取りに△3四銀と打つと、飛車を引くと飛金両取りがあるので渡辺名人は▲3四同飛と銀を食いちぎります。渡辺名人が▲6三角と打ち込むと、藤本四段も力強く△2九飛と打ち込みます。渡辺名人は▲3八銀と打って竜を捕獲しにいきますが、藤本四段は△2八香と打って逃れます。渡辺名人は▲4五桂と歩頭に跳ねて竜飛両取りを狙いますが、藤本四段は△6三銀と打って防ぎます。渡辺名人は馬を犠牲に竜を取りますが、藤本四段はじっと金を引き、玉を6筋に寄って飛車を打たれる隙を消します。先手陣はまだすぐに詰まされる状況ではありませんが、大きく駒損して攻めの糸口がつかめない渡辺名人は潔く投了を告げました。
チーム渡辺:0勝 - チーム千田:2勝

三局目:佐々木勇気八段 vs 藤本渚四段

チーム千田は、大金星を挙げて喜びを隠し切れない藤本四段が連投します。後手の佐々木八段が横歩取りに誘導しますが、藤本四段は横歩を取らずに飛車を引き、相掛かりの将棋となります。藤本四段が右玉に構えると、お互いに仕掛けが難しく、下段の飛車を左右に動かして千日手となりました。

指し直し局は先後を入れ替え、佐々木八段が4分26秒、藤本四段が5分22秒の持ち時間で始まります。先手の佐々木八段は角換わりに誘導し、藤本四段が角道を開けずに拒否すると、飛先の歩を交換して7筋の歩も取ります。藤本四段が角道を開けると、佐々木八段は角を交換します。藤本四段は銀冠に、佐々木八段は銀矢倉に組みます。藤本四段が△4二角と手放し、9筋を端攻めすると、佐々木八段は3筋を継ぎ歩で攻め、▲6一角と打ち込みます。藤本四段は△3四歩と打って先手からの桂打ちを消し、△7四桂と打って先手の玉頭に攻め掛かります。時間に追われた佐々木八段が▲7六銀と上がって受けると、作戦会議室では渡辺名人が「うぁー」とつぶやき、藤本四段は△8七歩成から殺到します。佐々木八段は懸命に粘りましたが、時間にも余裕のある藤本四段は要所で腰を落として考え、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:0勝 - チーム千田:3勝

四局目:岡部怜生四段 vs 藤本渚四段

チーム千田は、勢いに乗る藤本四段が3連投します。後手の藤本四段が雁木に組むと、岡部四段は左美濃に構えます。藤本四段が7筋から仕掛けて飛先の歩を交換すると、岡部四段は4筋の歩をぶつけます。藤本四段は8筋の歩を合わせて先手陣を乱してから4筋の歩を取り、角交換となります。お互いに角を打たれる傷を消しますが、藤本四段が△3七角から馬を作ると、岡部四段は▲5三桂成と飛び込んで銀と交換します。藤本四段は△6四馬と引き付けて守りを固めますが、岡部四段は▲1六角と遠見の角を放ち、▲4三歩成~▲4三同飛成~▲4三同角成と飛車を犠牲に後手陣に攻め込みます。藤本四段は△8七歩成から反撃しますが続かず、岡部四段は▲7五金~▲9五角と上部から後手玉を押さえつけます。藤本四段は懸命に粘りましたが、岡部四段は▲9三桂のタダ捨てから即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:1勝 - チーム千田:3勝

五局目:渡辺明名人 vs 千田翔太七段

チーム千田は、満を持して初登場のリーダーが登場し、リーダー対決となります。先手の千田七段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換して中住まいに構えます。千田七段は角を交換し、渡辺名人が△2二角と打ち直すと、5筋の歩を突き捨ててから▲8八角と打ちます。千田七段は▲5五銀と歩を取り返し、渡辺名人が△5四歩と合わせると、銀で食いちぎります。渡辺名人は△8八角成と角を取りますが、千田七段は王手で金銀交換してから馬を取り返します。お互いに再び角を打ち合うと、千田七段は持ち駒の金を打って角と交換し、力強い手つきで▲2二角と打ち込みます。渡辺名人が金を打って馬を閉じ込めると、千田七段は馬で金を食いちぎって飛車を走ります。渡辺名人が△1三角と打って飛成を防ぐと、千田七段が7筋に歩を垂らしてから▲7二金と後手玉に迫ると、渡辺名人も飛頭に歩を連打して攻め合います。千田七段は飛車を見捨てて▲3三歩成と角を取りますが、飛車を取った渡辺名人は△2五角の王手から詰めろを続けて寄せ切りました。
チーム渡辺:2勝 - チーム千田:3勝

六局目:岡部怜生四段 vs 西田拓也五段

チーム渡辺は先手番を岡部四段に託し、一局目と同じ顔合わせになります。後手の西田五段が三間飛車に振り、岡部四段が穴熊を目指すと、ミレニアムに囲います。西田五段が飛車を5筋に振り直して飛先の歩を交換すると、岡部四段は飛先の歩を交換して角で取ります。西田五段が△5九飛成と竜を作ると、岡部四段は△6八角と引いて竜に当てます。西田五段が4筋に竜をかわすと、岡部四段は▲2一飛成と桂を取って竜を作ります。西田五段は6筋の歩をぶつけますが、岡部四段は▲8六角と覗いて、金取りに▲6四桂と打ちます。西田五段が△8二金とかわしてから9筋の歩を取り込むと、岡部四段は6筋の歩を取って攻め合います。西田五段が9筋から殺到し、角と玉を田楽刺しに△9六香と打つと、岡部四段は▲6二成桂と銀を取って下駄を預けます。西田五段は△9七香歩成から王手を続けましたが届かず、岡部四段が即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:3勝 - チーム千田:3勝

七局目:佐々木勇気八段 vs 千田翔太七段

両チームとも出番が少なかった2人が登場します。後手の佐々木八段が角道を止めて左高美濃に構えると、千田七段は早繰り銀から3筋の歩をぶつけて仕掛けます。佐々木八段が△4五歩と突いて角を交換し、飛車先の歩を突き捨てると、千田七段は▲6六角~▲1一角成と香を取って馬を作ります。佐々木八段は△8六歩と取り込み、△3三桂と跳ねて馬の利きを止めてから9筋を端攻めします。千田七段が▲2四歩から後手の陣形を乱し、▲3四馬と金を食いちぎって飛車を走ると、佐々木八段は9筋の歩を取り込んで制圧してから竜の利きを止めます。千田七段は▲2二歩から竜の活用を図りますが、佐々木八段は△7六歩から先手陣に攻め掛かり、△8八飛成と竜を作ります。千田七段は▲3二"と"と詰めろを掛けて下駄を預けますが、佐々木八段は△4八銀から即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:4勝 - チーム千田:3勝

八局目:渡辺明名人 vs 千田翔太七段

チーム千田は「責任を取る」とリーダーが出陣し、2度目のリーダー対決となります。先手の渡辺名人が矢倉を選択し、相矢倉の将棋となります。千田七段が6筋の位を取ると、渡辺名人も4筋の位を取り▲4六角と好所に飛び出します。渡辺名人が1度6筋に寄った玉を4筋に移動して右玉に構えると、千田七段は矢倉に入城します。千田七段が飛車を5筋に回して金銀交換すると、渡辺名人は桂取りに▲8四角と飛び出します。千田七段が△9三角とぶつけると、渡辺名人は角交換に応じて▲6三角~4一角成と急所に馬を作ります。千田七段は3分以上の長考で△5二銀と馬取りに打ち、△8四角の王手から銀を前進して金と交換し、△6一金と打って馬を捕獲します。渡辺名人は馬を銀と刺し違えますが、千田七段は△5七歩~△5八角と先手玉に攻め掛かります。千田七段が角で金を食いちぎり、もう1枚の角を△5七角成と飛び込んで馬を作ると、渡辺名人は▲6四角の王手から連続王手で後手玉に迫りますが届きません。千田七段は△3七金と桂を食いちぎって王手し、即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:4勝 - チーム千田:4勝

九局目:佐々木勇気八段 vs 西田拓也五段

決着局は若い2人に託され、佐々木八段にとっては前回大会で1勝3敗と苦しめられた西田五段へのリベンジマッチとなります。振り駒で後手となった西田五段が三間飛車に振ると、佐々木八段は穴熊を目指します。西田五段が△9三銀~△8四銀と、一昨年度に佐藤(康)九段が見せた暴銀を繰り出し地下鉄飛車を狙うと、佐々木八段は1度潜った玉を△8八玉と戻します。西田五段が9筋の歩を突き捨てて銀で取ると、佐々木八段は▲8七金と辛抱します。西田五段が△7四金と攻め駒を足すと、佐々木八段も▲7六金と対抗します。西田五段が飛車を9筋に回し、△6五歩と突いて角の利きも通すと、佐々木八段は▲8二金と飛車取りに打ちます。西田五段が飛車を取らせる代わりに先手玉に攻め掛かると、佐々木八段は▲9二飛から竜を作って後手玉に迫りますが届きません。西田五段は▲8六銀と金を取って王手し、着実に寄せ切りました。
チーム渡辺:4勝 - チーム千田:5勝

第一試合の結果

チーム千田は、初出場の藤本四段がいきなり連投連勝の鮮烈なデビューを飾り、チームを勢いづけました。チーム内で唯一の経験者である西田五段も一局目と決着局で貴重な白星を挙げ、大きく貢献しました。リーダーの千田七段は、自らもリーダー同士の決戦を1勝1敗で乗り切り、視聴者が観たいカードを意識しつつ、若い藤本四段の力を最大限に活かす采配が光りました。決して下馬評の高いチームではありませんでしたが、3人がこの試合の調子を維持できれば、勝ち進んでいけそうな勢いを感じます。
チーム渡辺は、リーダーの渡辺名人と佐々木八段がまさかの負け越しで波に乗れませんでした。初出場の岡部四段が2勝を挙げ、大きな戦力になりえることを示しましたので、2人が本来の調子を取り戻せば、まだまだ予選突破の可能性は高いと思います。

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