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「観る将」が観た第61期王位戦挑戦者決定戦

だいぶ前になりますが、6月23日に行われた挑戦者決定戦の感想です。王位戦は前期成績でシードされた4名と予選を勝ち上がった8名が紅白6名ずつ分かれてリーグ戦を戦い、両組の優勝者同士で挑戦者決定戦を行う仕組みです。今期は王位戦リーグ白組で全勝した藤井七段と紅組で全勝した永瀬二冠が、棋聖戦に続きまたも挑戦者決定戦で顔を合わせることになりました。挑戦者決定リーグを全勝するのは過去5年間で1例しかなく、両者の充実ぶりが伺えます。

将棋は、振り駒で先手番となった藤井七段が角換わり早繰り銀に駒組を進めました。永瀬二冠の最も得意とする戦法の一つだそうです。▲4六角と打って相手の動きを牽制した藤井七段に対し、この戦型では一日の長がある永瀬二冠も△5四角と打ち角筋を活かした攻勢を仕掛けました。先手陣はかなり危うい状況に見えましたが、藤井七段は▲2九飛と引いて凌ぐと反撃に転じ、最後は挟撃体制を作り討ち取りました。

解説の佐藤天彦九段によれば、永瀬二冠も相当クオリティの高い将棋を指しましたが、最後は藤井七段の読みが上回ったとのことでした。棋聖戦第一局でも感じましたが、藤井七段は目先の1勝より、敢えて相手得意の戦型で対局することにより経験値を高めようとしているように思います。それでも結果を残してしまうのは、まさに横綱相撲という感じがします。

木村王位は、昨年初タイトル獲得の最年長記録を更新した47歳です。タイトル挑戦の最年少記録を更新したばかりの藤井七段とは対照的ですが、両者がお互いの持ち味を出し合い、白熱した七番勝負を繰り広げてくれることを期待します。

※藤井さんは、7月16日に棋聖位を獲得しましたが、本稿では当時の段位で記述しています。

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