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祝「二冠」藤井棋聖が王位獲得

彼は、どこまで羽ばたいていくのだろう。
最年少でタイトル獲得したばかりだというのに、もう二冠獲得だ。
コロナ過で疲弊した社会に登場し、将棋を知らない人々の心まで明るくしてくれている。

彼の言動を見ていると、目先の対局の勝利を目標としていない。かつて「将棋の神様がいたら?」と問われ、願いを叶えてもらうより「対局したい」と答えたという。強い人と対局し勉強することだけが、強くなりたいという果てしない目標を叶える道と信じている。より良い将棋を魅せたいというモチベーションが、彼を動かしている。

棋聖戦五番勝負の第一局、先手の彼が選択した戦型は自分の得意とする角換わりではなく、相手が得意とする矢倉だった。相手のもっとも得意とする戦型を勉強したい、明日は今日より強くなっていたい、彼は自分の信じる険しい山道を、愚直に昇り続けている。タイトル戦の初舞台でさえ、彼にとっては自分が強くなるための通過点なのだ。

この若き新鋭と対峙したタイトルホルダーたちは、初めから彼を最強の挑戦者として迎え、持てる力を最大限に発揮して熱戦を繰り広げた。常識外れの彼にしか指せない一手の前に、なすすべなく敗れた一局。あと一歩のところまで追い詰めながら、最終盤に逆転された一局。全力を尽くして戦い、それでも負けたと悟った時、背筋を伸ばして彼に頭を下げた彼らの想いを慮る。しかし、彼らが先輩棋士として見せた言動・所作などは称賛に値する。彼に多大な影響を与え、将棋界の発展に大きく貢献したことは間違いない。

そして彼はこの2か月半、ダブルタイトル戦を7勝1敗で駆け抜けた。しかも彼はまだ18歳、伸び盛りなのだ。今後も彼は、私たちが想像できるような壁は、いとも簡単に乗り越えていくのかもしれない。プロ棋士にさえ「積んでいるエンジンが違う」「見えている世界が違う」と評される彼の行き着く先にどんな世界が広がっているのか、今は誰にも想像できない。
そんな彼の成長を見守ることができる私たちは、とても幸運なのだと思わざるを得ない。


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