ABEMAトーナメント2024 予選Aリーグ第三試合

7月6日、ABEMAトーナメント2024の予選Aリーグ第三試合が放映されました。予選突破には3敗しかできないチーム広瀬「ダメ元」と、予選1位突破を目指すチーム中村「長考派」の顔合わせとなっています。
※本稿は収録当時の段位で記述させていただきます。

一局目：黒沢怜生六段 vs 佐々木大地七段

チーム中村は佐々木七段に先陣を託します。振り駒で先手となった黒沢六段は中飛車に振り、佐々木七段が2枚銀を繰り出して5筋の歩を取る間に穴熊に潜ります。佐々木七段は飛車を7筋に寄せて△8五桂～△7七歩と飛車先突破を図り、黒沢六段が桂取りに▲8六歩と突くと、△7八歩成と"と金"を作ります。黒沢六段が飛車を角と刺し違え、飛車取りに▲6二角と打って馬を作ると、佐々木七段は銀桂両取りに△5九飛と打って竜を作ります。佐々木七段が"と金"で銀を1枚剥がし、4筋の歩を伸ばして攻め掛かると、▲4九歩と底歩を打って竜の横利きを緩和してから、▲5六角～▲4五香と後手の飛車を狙います。佐々木七段が桂で合い駒し、△4七歩成と飛び込んで金を剥がすと、黒沢六段は▲4五歩と打ち、二歩の反則負けとなりました。
チーム広瀬：0勝　－　チーム中村：1勝

二局目：杉本和陽五段 vs 佐々木大地七段

チーム中村は勝った佐々木七段の連投です。先手の佐々木七段が初手▲9六歩と趣向を見せ、杉本五段が四間飛車に振ると、お互いに穴熊に潜ります。佐々木七段は角交換して香取りに▲6六角と打ち直し、杉本五段が9筋を端攻めすると、9筋から逆襲して後手の穴熊を崩します。杉本五段は△5七角と打って飛車に当てつつ自陣の玉頭の守りに利かせ、佐々木七段が9筋で清算すると、金取りに△8五桂と打って金桂交換します。佐々木七段は金の両取りに▲6四桂と打ち、歩で馬を吊り上げてから金桂交換し、飛馬両取りに▲3四竜と引きます。杉本五段は△9五飛と受け、佐々木七段が飛車取りに▲8六銀と打つと、△9七香と打って攻め合います。佐々木七段は落ち着いて飛車を取り、杉本五段の反撃を凌いで寄せ切りました。
チーム広瀬：0勝　－　チーム中村：2勝

三局目：広瀬章人九段 vs 渡辺和史六段

連敗スタートとなったチーム広瀬はリーダーが出陣します。先手の広瀬九段が変則的な出だしを見せますが、渡辺六段が角を交換して角換わり模様の将棋となります。広瀬九段が4筋から仕掛けて飛先の歩を交換すると、渡辺六段は△2三金と上がって追い返し、桂取りに△3六歩と打ちます。広瀬九段は▲4五銀とぶつけて銀交換して桂で取り、渡辺六段が△3九角と打ち込み、広瀬九段が飛車を5筋にかわしてから▲6一角と打つと、△5四銀と引いて玉頭を守ります。広瀬九段は▲8三角成と馬を作って飛車と交換し、▲2二飛と王手で打ち込んで金を剥がしますが、渡辺六段は△8七歩成と飛び込んで攻め合います。広瀬九段は▲3一角から王手を続けますが届かず、渡辺六段が逃げ切りました。
チーム広瀬：0勝　－　チーム中村：3勝

四局目：杉本和陽五段 vs 中村太地八段

予選突破には残りを全勝するしかないチーム広瀬は、ダメ元で杉本五段を送り出します。後手の杉本五段が9筋の位を取って四間飛車に振ると、中村八段は銀冠穴熊に囲います。杉本五段は角取りに△6五桂と跳ね、中村八段が▲6六角とかわすと、角交換して△5七桂成と飛び込みます。中村八段が▲3二飛成と竜を作って後手の飛車を追い、▲4五銀とぶつけて銀交換すると、杉本五段は△5六角と打って攻め駒を足します。中村八段は▲5四歩と打ち、杉本五段が成桂で金を剥がすと、▲3五角と打って攻め駒を足します。杉本五段は△4五馬と引き付けて角と交換し、△7九銀と打って先手陣の金を剥がし、△6七角と打って攻め掛かります。中村八段は▲3六竜と引き、馬と交換して粘りますが、杉本五段は着実に攻め切りました。
チーム広瀬：1勝　－　チーム中村：3勝

五局目：杉本和陽五段 vs 渡辺和史六段

チーム広瀬は初勝利の杉本五段が連投です。先手の杉本五段が三間飛車に振り穴熊に囲うと、渡辺六段は6筋から仕掛け、飛先の歩を交換します。杉本五段は▲3三角成と桂を食いちぎり、▲6五飛と桂をもう1枚取ると、2枚の桂で金を1枚剥がします。渡辺六段が飛車取りに△7五角と打ってから△8九飛成と竜を作ると、杉本五段は▲3三桂成と角と交換してから、竜金両取りに▲7四角と打って竜と交換します。渡辺六段は△3九角成と金を食いちぎり、杉本五段が角取りに▲6一飛と打ち込むと、△7二角ともう1枚の角を繋ぎ、△2七角成と飛び込みます。杉本五段は▲3六香と打って角の利きを止め、渡辺六段が△1八桂成から詰めろを掛けると、連続王手で詰めろをを逃れます。時計の叩き合いの中、形勢が何度も入れ替わる大激戦となりましたが、最後は2枚の竜を作った杉本五段が寄せ切りました。
チーム広瀬：2勝　－　チーム中村：3勝

六局目：広瀬章人九段 vs 中村太地八段

勝負所を迎え、リーダー対決が実現します。先手の中村八段が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となります。中村八段が▲4五桂と跳ね、7筋の歩を取り込んでから3筋の歩もぶつけると、広瀬九段は桂取りに4筋の歩を突きます。中村八段は5筋に桂を成り捨て、広瀬九段が6筋の歩をぶつけると、▲7二角と打ち込みます。広瀬九段は△7一飛とかわして角に当て返し、中村八段が▲6五歩と銀頭を叩くと、角と銀を取り合います。広瀬九段が△7六桂～△5五角と王手で先手玉に迫り馬を作ると、中村八段は飛車取りに▲6四銀打と攻め合います。広瀬九段はもう1枚の角を△7八角と打ち込み、中村八段が上部脱出を図ると、飛車を捕獲して点数勝負でも優位に立ち、入玉を果たして逃げ切りました。
チーム広瀬：3勝　－　チーム中村：3勝

七局目：黒沢怜生六段 vs 佐々木大地七段

チーム中村はこの試合既に2勝している佐々木七段を送り出します。先手の黒沢六段が三間飛車に振り美濃囲いに構えると、佐々木七段は角を交換して左美濃に囲います。佐々木七段が銀冠への組み替えを目指すと、黒沢六段は▲7七角と据え、▲8六歩から飛車をぶつけます。佐々木七段は歩で飛交換を拒否してから銀冠を完成し、黒沢六段が銀をぶつけて交換すると、△8七銀と飛車を追い、△7六銀成と角を追ってから8筋に"と金"を作ります。佐々木七段が"と金"で金を剥がし、飛交換後に互いに相手陣に飛車を打ち込むと、黒沢六段は角を取らせる代わりに金を取り、▲6六角と王手して反撃します。佐々木七段が△5七角と打ち込むと、黒沢六段は▲2一金と王手で後手玉を1筋に追い、角を交換して▲3一角の王手から一気に寄せ切りました。
チーム広瀬：4勝　－　チーム中村：3勝

八局目：広瀬章人九段 vs 渡辺和史六段

あと1勝となったチーム広瀬はリーダーが出陣します。先手の渡辺六段が雁木に構えると、広瀬九段は矢倉を組み、角をぶつけて交換します。渡辺六段が飛車を4筋に回して歩を交換すると、広瀬九段は△2八角と打ちます。渡辺六段は角を合わせて交換し、広瀬九段が3筋の歩をぶつけて桂頭を狙うと、▲4七金と上がって桂頭を守ります。広瀬九段は△7五銀と繰り出し、渡辺六段が銀取りに▲5三角と打ち込むと、△8六銀～△7七銀成と桂を食いちぎり、△7三桂と活用を図ります。渡辺六段は銀で桂を食いちぎり、金取りに▲2六桂と打ちますが、広瀬九段は飛車取りに△5九角と打ち、飛角交換してから△8九飛と打ち込み竜を作ります。渡辺九段は2枚の馬で後手玉に迫り、広瀬九段の2枚竜の攻撃を凌ぎ、▲3二馬と金を食いちぎって即詰みに討ち取りました。
チーム広瀬：4勝　－　チーム中村：4勝

九局目：黒沢怜生六段 vs 中村太地八段

フルセットとなりチーム中村はリーダーが出陣します。振り駒で後手となった黒沢六段が四間飛車に振り、美濃囲いに構えて角を交換すると、中村八段は矢倉を組んで7-8筋の歩を伸ばします。黒沢六段は△6三銀引と守りを固め、中村八段が金取りに▲2一角と打ち込むと、△4一角と支えます。中村八段が▲5四角成と銀を食いちぎり、飛車取りに▲5三銀と打って▲6四銀成と攻防の要所に据え、▲3四歩と打って桂を取って攻め掛かります。黒沢六段は△8五角と飛び出し、中村八段が▲6七銀と引いて角成を防ぐと、もう1枚の角を金取りに△5七角と打ち込み、馬を作って飛車と交換します。黒沢六段は△3九飛と打ち込み竜を作り、△6七角成と銀を食いちぎり、そのまま攻め続けて寄せ切りました。
チーム広瀬：5勝　－　チーム中村：4勝

予選Aリーグ第三試合の結果

チーム広瀬は3連敗のスタートでしたが、杉本五段が連投連勝して息を吹き返しました。一局目に痛恨の反則負けを喫した黒沢五段も2局続けて逆転勝ちして意地を見せ、チームの勝利に貢献しました。この試合はフルセットの接戦を制して3チームが1勝1敗で並びましたが、2試合通算で7勝9敗となり、残念ながら予選で姿を消すことになりました。
チーム中村は佐々木七段の連投連勝で勢いに乗り、渡辺六段も相手のリーダーを連破する活躍を見せましたが、リーダーの中村八段がこの試合では白星に恵まれず敗れる結果となりました。しかし2試合通算で9勝9敗となり、辛くも予選2位通過を果たしました。いつになく慎重な差し回しが裏目に出た感のある中村八段が復調すれば、本戦でも勝ち上がっていけると思います。