見出し画像

第5回ABEMAトーナメント 予選Dリーグ第一試合

6月18日に、ABEMAトーナメントの予選Dリーグ第一試合が放映されました。羽生世代でメンバーを揃えたチーム康光「枝豆」と、注目の若手をメンバーに加えたチーム天彦「HADO」の顔合わせとなりました。チーム康光は格調高い将棋が健在の郷田真隆九段と初出場の先崎学九段が、ベテランの技で会長を盛り立て勝利を目指します。チーム天彦は各棋戦で上位進出が目立つ若手の梶浦宏孝七段と佐々木大地五段が、名人3期を誇るリーダーとともに戦います。
※本稿では、収録当時の段位で記します。

一局目:郷田真隆九段 vs 梶浦宏孝七段

両チームとも前回の経験があるメンバーが先陣を切ります。先手の梶浦七段が相掛かりに誘導し先に飛先の歩を交換すると、郷田九段も飛先の歩を交換し五段目に引きます。梶浦七段が角を交換して左銀を中央に使うと、郷田九段は銀冠の形を作ります。郷田九段は予定通りの進行なのか、時間を6分以上に増やしています。梶浦七段は▲8九飛と転回しますが、郷田九段はすぐに△8五歩と押さえます。梶浦七段が▲9八香と上がって9筋からの攻撃を匂わせると、郷田九段は2分以上考えて△7八金と寄って備えます。梶浦七段が構わず▲9八飛と寄ると、郷田九段は再度飛先の歩を交換して△8四飛と引きます。梶浦七段は飛車を2筋に戻して桂交換し、3筋から継ぎ歩攻めを見せます。郷田九段が飛先の歩を交換すると、梶浦七段は▲8五桂打と蓋をして飛車を捕獲します。郷田九段も金を取って金桂との2枚替えになりますが、梶浦七段は▲8一飛と打ち込みます。郷田九段は△7四桂と反撃し、梶浦七段が香を取って竜を作ると王手銀取りに△6六桂と跳ねて△2五桂と挟撃態勢を作ります。梶浦七段は構わず王手で▲6一角と打ち込み、▲8三角成と馬を作って詰めろを掛けます。梶浦七段が金取りに▲3三香と打つと、郷田九段は△4四角と打ち、金を取らせて竜を取ります。両者秒読みに追われる中、郷田九段は取った飛車を△6九飛と王手で打ち込み、瞬く間に先手玉を即詰みに討ち取りました。
チーム康光:1勝 - チーム天彦:0勝

二局目:郷田真隆九段 vs 佐々木大地五段

チーム康光は郷田九段が「行きます」と言って連投します。先手の郷田九段が矢倉に誘導し、佐々木五段は急戦調の駒組みを進めます。郷田九段が3筋から仕掛けると、佐々木五段は1分程考えて8筋から反発します。郷田九段も1分程考えて▲8六同銀と応じます。佐々木五段は角を交換してから△3三銀と上がり、お互いに陣形の整備に戻ります。郷田九段が▲3六角と打って後手の飛車を睨むと、佐々木五段は1分半程考えて7筋の歩を突き捨て△6五桂と跳ねます。佐々木五段は9筋で歩を補給して8筋に歩を合わせて飛車を9筋に回しますが、郷田九段は▲9七香~▲7七銀で飛車を追い返します。郷田九段は1筋の歩をぶつけますが、佐々木五段は△9八歩と垂らし、郷田九段が玉で"と金"作りを阻止すると△7七桂成と銀と交換します。佐々木五段が△5九角と打ち込むと、郷田九段は▲1四歩と伸ばします。佐々木五段は構わず角取りに△3五銀と打ちますが、郷田九段は1筋の歩を成り捨ててから▲5四角と銀を食いちぎり、角取りに▲2一飛と引きます。佐々木五段が角で金を食いちぎり△9九歩成と成り捨てると、郷田九段は飛車で"と金"を取ります。佐々木五段は△4六銀と銀を取って攻め駒を補充しますが、郷田九段は構わず飛車取りに▲8四角と打ちます。作戦会議室では天彦九段が「これは手強い気がする」、康光九段が「これは良い手だ」とつぶやきます。佐々木五段が△7六飛と走ると、郷田九段は▲6二角成と金を取りますが、佐々木五段は▲9六歩~▲8五銀と先手玉に攻め掛かります。技の応酬で大熱戦となりましたが、郷田九段は▲7一飛と打ち込んで後手玉に攻め掛かり、佐々木五段の反撃をかわして逃げ切りました。
チーム康光:2勝 - チーム天彦:0勝

三局目:先崎学九段 vs 佐藤天彦九段

連敗スタートとなったチーム天彦はリーダーが出陣し、チーム康光は初出場ながら練習は十分という先崎九段が登場します。後手の先崎九段は2手目に△3二金と上がり力戦調の将棋になります。天彦九段が雁木に組むと、先崎九段は銀冠を目指します。天彦九段が突然席を外しましたが、手番の先崎九段は驚いた表情を見せながらも天彦九段が戻るまで指さずに待ちます。先崎九段が△7七角と転回し5筋の歩を交換すると、天彦九段は2筋から仕掛けます。先崎九段は桂で取って桂交換となり、天彦九段は角銀両取りに▲6五桂と打って銀と交換します。先崎九段が8筋の継ぎ歩攻めから△7三桂と跳ねると、天彦九段は▲6六角~▲8四角と飛び出します。先崎九段が自陣に桂を打って桂を守ると、天彦九段は▲5七角と引いて左右を睨みます。先崎九段は3枚の桂で先手陣を攻めますが、天彦九段は後手陣に歩を打って飛車を追い自玉を上部に脱出させます。先崎九段は先手玉を捕まえにいきますが、天彦九段が入玉を果たすと投了を告げました。
チーム康光:2勝 - チーム天彦:1勝

四局目:佐藤康光九段 vs 佐々木大地五段

チーム康光は満を持してリーダーが登場します。先手の康光九段が矢倉を選択し、佐々木五段は急戦調の駒組みを進め6筋から仕掛けます。佐々木五段が6筋の位を取ると、康光九段は3筋から反発し飛車を3筋に回します。佐々木五段が△3三歩と打って受けると、康光九段は角をぶつけて交換します。佐々木五段が△6四角と打ち直すと、康光九段も▲3七角と打って守ります。佐々木五段が7筋の歩を交換すると、康光九段は▲4五歩と反発します。佐々木五段が桂で取り、8筋の歩を交換して角で取ると、康光九段は▲8二歩~▲8三歩と飛頭を叩いてから▲6四歩と攻撃の拠点を作ります。佐々木五段は△6六歩と突いて金を吊り上げ△8五桂と跳ねて攻め掛かりますが、康光九段は銀で桂を取って角取りに▲8七歩と打ちます。佐々木五段が角で桂を食いちぎり、角金両取りに△5七銀と打つと、康光九段も角を銀と刺し違えて飛車取りに▲7五桂と打って攻め合います。佐々木五段は構わず金取りに△7四桂と打ち、康光九段がかわすと△7七歩成と"と金"を作りますが、康光九段も▲6三歩成と後手陣に攻め込みます。佐々木五段は△7八歩成から飛車を成り捨てて先手玉に迫り、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム康光:2勝 - チーム天彦:2勝

五局目:郷田真隆九段 vs 梶浦宏孝七段

チーム康光は「行きたい」と宣言して郷田九段が出陣し、一局目と同じ顔合わせになりました。先手の梶浦七段が前局と同様相掛かりに誘導し、郷田九段は9筋の位を取ります。梶浦七段が先に飛先の歩を交換し、郷田九段も飛先の歩を交換すると、再度飛先の歩を合わせます。郷田九段が7筋の横歩も取ると、梶浦七段は角を交換して飛車を8筋に転回します。郷田九段は歩で飛成を防いで△5五角と打ち、△7七角成と飛び込んで金桂との2枚替えを果たします。竜飛交換となり、郷田九段が△6八飛と打ち込むと、梶浦七段は金を寄って守ります。郷田九段が銀桂交換してから竜を作ると、梶浦七段は飛車を自陣に打って粘ります。郷田九段が再度竜飛交換して△2八飛と打ち込むと、梶浦七段は▲1六角と銀に紐を付けてから自陣の角を飛車取りに▲5五角と飛び出します。郷田九段が冷静に△2六飛成とかわすと、梶浦七段は歩で後手陣を乱してから金取りに▲2四桂と打ちます。郷田九段が金を取らせる間に△4五桂と跳ねると、梶浦七段は▲4六銀と受けます。郷田九段は△2八竜~△3七歩と再び攻勢に転じ、△9九角成と補充して△5四香と先手の玉頭を攻めます。梶浦七段は▲7二"と"と銀を取って下駄を預けますが、郷田九段は慎重に確認してから△5七香成と王手を掛け、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム康光:3勝 - チーム天彦:2勝

六局目:先崎学九段 vs 佐藤天彦九段

チーム天彦は迷いながらもリーダーが出陣し、三局目と同じ顔合わせになりました。先手の先崎九段が相掛かりに誘導して飛先の歩を交換すると、天彦九段も飛先の歩を交換します。角交換となってお互いに銀冠の形を作り、先崎九段は入城しますが、天彦九段は現代角換わり風の陣形を敷きます。先崎九段が▲5五歩と伸ばすと、天彦九段は8筋の歩を合わせて桂交換します。天彦九段が7筋の歩を突き捨てて△8三桂と打つと、先崎九段は▲7六銀と受けます。天彦九段は構わず△7五桂と跳ね、銀で取らせて△7四歩と捕獲します。先崎九段が3筋から反撃すると、天彦九段は△2五桂とかわしてから9筋から端攻めします。先崎九段が手抜いて銀取りに▲3五桂と打つと、作戦会議室ではいつも冷静な郷田九段が「マジかー」と叫びます。天彦九段が9筋を詰めてから△8五歩と合わせて△8六歩と垂らすと、先崎九段は▲7九玉と早逃げし▲3三角と打ち込みます。天彦九段は角金交換に応じて△5二玉とかわし、金取りに△8七歩成と反撃しますが、先崎九段は手抜いて▲5三歩成から後手玉に攻め掛かります。天彦九段が△7八"と"と金を剥がすと、作戦会議室では康光九段が「それで勝ったら強すぎるよ」とつぶやいています。先崎九段は飛車で"と金"を取りますが、天彦九段は△8五飛と先手陣に攻め掛かります。先崎九段は再度の▲5三歩成から後手玉に迫りますが詰まず、天彦九段は△7八銀成から即詰みに討ち取りました。
チーム康光:3勝 - チーム天彦:3勝

七局目:先崎学九段 vs 梶浦宏孝七段

タイスコアとなり、チーム康光はリーダーの指名により先崎九段が連投します。先手の梶浦七段が矢倉に組み3筋の歩を交換したところで、先崎九段が飛車を5筋に回します。両チームの作戦会議室から「うゎー」と声が上がります。梶浦七段が銀冠への組み換えを目指すと、先崎九段は6筋の歩を突き捨て△7五歩と仕掛けます。梶浦七段は銀冠を完成し、先崎九段が7筋の歩を取り込むと金で取り返します。先崎九段は2枚の銀を前進し、お互いに玉頭に戦力を集めます。梶浦七段は▲7五歩と打って後手の銀を下がらせると、8筋からも仕掛けて銀交換します。梶浦七段は後手玉を8四の地点まで吊り上げ、5筋で銀桂交換して攻め駒を補充します。梶浦七段は▲6五金と開き王手で後手玉に迫ると、駒得を拡大しながら寄せ切りました。
チーム康光:3勝 - チーム天彦:4勝

八局目:佐藤康光九段 vs 佐々木大地五段

チーム康光は残り2局をリーダーに託し、四局目と同じ顔合わせになりました。先手の康光九段が前局と同様矢倉に誘導し、佐々木五段は急戦調の駒組みを進めます。康光九段が▲4七銀型に構えると、佐々木五段は中住まいに構えて△5三角と上がります。康光九段が4筋から仕掛けると、佐々木五段は銀取りに5筋の歩を伸ばします。康光九段が▲5六金と援軍を送ると、佐々木五段は8筋の歩を突き捨ててから△5四歩と打って銀交換を催促します。康光九段が銀交換してから▲4五桂と跳ねて桂も交換すると、佐々木五段は△4二歩と打って辛抱します。康光九段は▲2六角と出て後手陣を睨みますが、佐々木五段は△5三桂と打って耐えます。康光九段が▲3五歩と畳み掛けると、佐々木五段は△6六角と王手で飛び出し△5七角成と馬を作ります。康光九段は王手金取りに▲4四桂と打ち金を取りますが、佐々木五段は△6六歩と伸ばして攻め合います。康光九段は構わず銀取りに▲6四歩と打ちますが、佐々木五段は構わず△6七歩成と飛び込みます。康光九段も▲6三歩成と飛び込むと、佐々木五段は金で"と金"を取ります。作戦会議室では天彦九段が「これってよく見たら▲5二銀があるじゃん。痛てっ」とつぶやきます。佐藤九段は40秒ほど考えて▲5二銀と打ち、即詰みに討ち取りました。
チーム康光:4勝 - チーム天彦:4勝

九局目:佐藤康光九段 vs 佐藤天彦九段

フルセットにもつれ込み、リーダー対決で雌雄を決することになりました。あらためて振り駒が行われ、後手の天彦九段が横歩取りに誘導しますが、康光九段は誘いに乗らずに矢倉模様の将棋となります。じっくりした駒組みとなり、天彦九段が土居矢倉に組むと、康光九段は▲2六銀と上がって攻撃態勢を取ります。その瞬間天彦九段が4筋の歩をぶつけると、康光九段は銀を戻して飛車を4筋に回します。天彦九段も飛車を4筋に回すと、康光九段は▲1七香と上がってから飛車を1筋に回します。天彦九段は△2二銀と引いて備えますが、康光九段は▲1五歩と端攻めを決行します。1筋で銀交換の後、天彦九段が押し戻して飛車取りに△1七歩成"と金"を作りますが、康光九段は構わず金取りに▲4五歩と取り込みます。天彦九段は△2五金とかわし、康光九段が飛車を逃げると△2四玉と上がって入玉を目指します。作戦会議室では郷田九段が「逆転しちゃったかな」とつぶやいています。康光九段は飛車で金を食いちぎり飛角両取りに▲3二金と打って角を取り返しますが、天彦九段は着々と玉を前進させます。康光九段も上部脱出を試みますが、天彦九段は自陣の飛車を8筋に回して追い返し、先手陣に作った竜を使って即詰みに討ち取りました。
チーム康光:4勝 - チーム天彦:5勝

第一試合の結果

チーム天彦は、リーダーの天彦九段が勝負所で登場した3局にいずれも勝ち、チームを勝利に導く大車輪の活躍を見せました。梶浦七段と佐々木(大)五段も、大先輩を相手に貴重な白星を挙げてチームの勝利に貢献しました。次戦では若手同士の対局も想定されますので、伸び伸びとした思い切りの良い将棋を期待したいと思います。
チーム康光は、一局目と二局目に郷田九段が連勝スタートを切り、自身3連勝の大活躍を見せました。しかし初出場の先崎九段が、内容的には押し気味の将棋もあったものの白星に恵まれず、チームとして波に乗ることはできませんでした。リーダーの康光九段はカド番の八局目に勝って意地を見せましたが、連投となった決着局で力尽きました。次戦では羽生世代の3人が大会のルールにも慣れ、本来の力を発揮することを楽しみにしたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?