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「観る将」が観た第3回AbemaTVトーナメント準決勝②

8月8日の準決勝は、チーム康光vsチーム永瀬の顔合わせとなりました。この日は名人戦も行われており、一部は泣く泣くビデオ視聴です。永世名人の有資格者2名と永世棋聖の有資格者1名で構成され、懸念された超早指しのルールにも適応して勝ち進んできたチームレジェンドと、永瀬二冠+藤井棋聖の三冠を擁し本命視されてきたチームバナナの対戦です。藤井猛九段による、味のある解説も楽しみです。

一局目 佐藤九段● vs 藤井棋聖〇 (チーム康光 0勝:チーム永瀬 1勝)
佐藤九段が向かい飛車からバラバラの金銀を終結させて穴熊に囲うという老獪な手順を見せ、盤面中央を制圧して優位な局面を築きます。藤井棋聖は端から反撃し、佐藤九段も頑強に抵抗しましたが、最後は藤井棋聖が即詰みに討ち取りました。途中、藤井九段が「藤井棋聖が指したんだから詰めろなんでしょう」と解説していましたが、プロでもそんな感覚なんですね。

二局目 谷川九段● vs 永瀬二冠〇 (チーム康光 0勝:チーム永瀬 2勝)
後手の永瀬二冠が横歩取りに誘導しましたが、谷川九段が横歩を取らず相掛かりの将棋となりました。谷川九段が1筋を突破しましたが、永瀬二冠が中央から二段香を放ち逆転勝利を収めました。「ボーとしていると、たまに王手逃げ忘れますからね」と、藤井九段の解説も名調子です。

三局目 森内九段● vs 増田六段〇 (チーム康光 0勝:チーム永瀬 3勝)
戦型は再び相掛かりとなりました。増田六段は角交換後に▲5六角と打ち、2筋から攻めかかります。▲3四銀が、解説の藤井九段も思わず「やー、参った」と唸る好手だったようで、その後も着実に寄せ切りました。チーム永瀬としては、チーム康光のポイントゲッター森内九段から大きな1勝を上げました。

四局目 佐藤九段〇 vs 永瀬二冠● (チーム康光 1勝:チーム永瀬 3勝)
戦型はまたまた相掛かりとなりました。チーム康光の方針でしょうか。永瀬二冠は、ひねり飛車模様から中央に穴熊のような要塞を築きます。佐藤九段も2枚の桂を使って敵玉周りの金銀を1枚ずつはがしていき、最後は両者時間に追われる中、攻め切りました。チーム康光はチームリーダがチーム初勝利を挙げ、ここから巻き返しです。

五局目 森内九段〇 vs 藤井棋聖● (チーム康光 2勝:チーム永瀬 3勝)
藤井棋聖が得意の角換わりに誘導し、森内九段も受けて立ちました。藤井棋聖が早繰り銀を見せると、森内九段は藤井九段によれば古い形の△3三金で対抗します。森内九段は馬を作ってから飛車の捕獲に成功し、藤井棋聖の反撃には中段への脱出を図り、最後は龍を作って攻め切りました。両チームのエース同士の対決は森内九段に軍配が上がり、チーム康光にとっては大きな2勝目となりました。

六局目 谷川九段● vs 増田六段〇 (チーム康光 2勝:チーム永瀬 4勝)
戦型は角換わり腰掛け銀となり、増田六段は右玉に構えました。藤井九段は「右玉しぶいでしょ」と解説しています。互いに間合いを取り合った後、谷川九段が中央から突破したかに見えましたが、増田六段が△5八歩から反撃し即詰みに討ち取りました。増田六段が嫌な流れを断つ大きな勝利を挙げ、チーム永瀬は勝利まであと1勝となりました。

七局目 森内九段〇 vs 永瀬二冠● (チーム康光 3勝:チーム永瀬 4勝)
戦型はまたも相掛かりになりました。長い中盤戦の後、永瀬二冠が銀捨てから馬を作り、続いて龍を作って攻め込みます。森内九段も猛攻を凌いだ後、敵陣に飛車を打ち込み反撃し、最後は即詰みに討ち取りました。藤井九段の解説も「何故って言わないでくださいね」など、名調子が続きます。

八局目 佐藤九段● vs 藤井棋聖〇 (チーム康光 3勝:チーム永瀬 5勝)
戦型は本日初めての矢倉になりました。佐藤九段が▲3四桂の王手角取りから攻めかかり優勢の局面を築きます。しかし藤井九段が「ポイントありそうでなさそうな局面ですね」と解説していましたが、佐藤九段が攻めの糸口を見つけられず、藤井棋聖も△5七角から反撃に転じると、最後は両者詰むか詰まないかの攻防となり、佐藤九段の連続王手から逃げ切った藤井棋聖が勝利を掴みました。

チーム永瀬は八局目までで5勝をあげ、決勝進出を決めました。この日は永瀬二冠が2敗し、藤井棋聖も1敗を喫するなど苦しみましたが、増田六段が2勝して盤石の強さを見せました。増田六段はこれまで「自分が足を引っ張らなければ優勝できる」と語っていましたが、本日の活躍は大きな自信になったと思います。チーム康光もタイトルホルダーから3勝し、これまでの実績は伊達ではないところを見せてくれました。決勝は8月22日、タイトル戦とは重なっていないようなので、是非とも生中継で楽しみたいと思います。


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