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ABEMAトーナメント2024 予選Aリーグ第二試合

6月8日、ABEMAトーナメント2024の予選Aリーグ第二試合が放映されました。第一試合に勝ったチーム渡辺「ジグザグ打線」と、初めてリーダーを務めるチーム中村「長考派」の顔合わせとなっています。
※本稿は収録当時の段位で記述させていただきます。


一局目:岡部怜生四段 vs 中村太地八段

チーム中村はリーダーが先陣を切ります。振り駒で先手となった岡部四段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換して浮き飛車に構えます。中村八段が角を交換して△2八角と打ち込むと、岡部四段は▲5五角と合わせて交換し、飛車取りに▲4六角と打ち直します。中村八段は飛車をかわし、岡部四段が飛車をぶつけて交換すると、9筋の歩をぶつけます。岡部四段は手抜いて▲5五角と出て、中村八段が銀を上がって角成を防ぐと、1筋を端攻めして香を吊り上げ▲1一飛と打ち込みます。中村八段は△2二金と寄り、更に△3二角と自陣に投じて辛抱しますが、岡部四段は▲3三角成と銀を食いちぎり、竜を作って攻め込みます。中村八段は飛車を犠牲に凌ぎ、9筋から反撃しますが届かず、岡部四段が即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:1勝 - チーム中村:0勝

二局目:岡部怜生四段 vs 渡辺和史六段

チーム渡辺は勝った岡部四段の連投です。先手の渡辺六段は角道を止め、岡部四段が雁木に組むと、左美濃に構えて3筋から仕掛けます。岡部四段が8筋の歩を交換して角も交換すると、両者隙を作らず慎重に駒組みを進めます。時間が切迫してきた岡部四段が△4三角と据えて7筋の桂頭を攻めると、渡辺六段は銀冠に組んで凌ぎ、▲4四歩~▲4三角と打ち込んで角交換し、▲3二角と打ち込んで馬を作ります。岡部四段が飛車取りに△4六角と打って馬を作り、△4六歩と打って金を吊り上げ△5七桂成と飛び込んで飛車に当てると、渡辺六段は飛車を見捨てて玉頭戦を挑みます。岡部四段は歩の裏から△8六香と王手し、△8九飛と打ち込んで竜を作り、反撃をかわしてから即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:2勝 - チーム中村:0勝

三局目:渡辺明九段 vs 佐々木大地七段

連敗スタートとなったチーム中村は佐々木七段に託します。後手の佐々木七段が4手目に9筋の端歩を突き、8筋の歩を交換して角も交換すると、渡辺九段は左高美濃に構えます。佐々木七段が金矢倉に組むと、渡辺九段は3筋から仕掛け、2筋を継ぎ歩で攻めます。佐々木七段が銀取りに△1二角と打つと、渡辺九段は銀を取らせる代わりに銀の両取りから銀桂交換して攻め込みます。苦しくなった佐々木七段は9筋の端攻めに勝負を賭けますが、渡辺九段は▲7一角~▲3四角成と馬を作り、▲2三歩と玉頭を叩いて勝勢となります。佐々木七段は飛金両取りに△4七角と打ち、渡辺九段が▲3五金と詰めろを掛けつつ飛車に紐を付けると、△8七飛成と王手で飛び込み、そのまま即詰みに討ち取る大逆転となりました。
チーム渡辺:2勝 - チーム中村:1勝

四局目:山崎隆之八段 vs 中村太地八段

リーダーがショックを隠し切れないチーム渡辺は山崎八段を送り出します。後手の山崎八段は佐々木七段を真似て4手目に9筋の端歩を突き、中村八段が角を交換すると△3三金型の力戦調の将棋となります。中村八段は▲4五桂とぶつけて交換しますが、お互いに自陣の傷を消して相手の出方を窺います。中村八段が▲4六角と据えると、山崎八段は△8五桂打で銀を8筋に上がらせてから△3三角と据えます。中村八段は飛車を6筋に回して受け、山崎八段が飛車を4筋に回してから△6五歩とぶつけると、▲3五角と出てから▲4四歩とぶつけます。時計のたたき合いとなり、中村八段が金を取って▲5四桂と後手玉に迫ると、山崎八段も△7七銀から先手玉を追い詰めます。中村八段は▲5三金のタダ捨てから王手を続け、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:2勝 - チーム中村:2勝

五局目:渡辺明九段 vs 渡辺和史六段

チーム渡辺は悪夢を払拭すべくリーダーが出陣し、同姓対決となります。先手の明九段が矢倉に組み、飛先の歩を交換して中住まいに構えると、和史六段は雁木模様に組みます。明九段は4筋で桂交換の後▲6四角と銀を食いちぎり、▲4五歩ともう1枚の銀を捕獲します。和史六段が王手金取りに△6六桂と打って金桂交換し、△6六金と打って攻め掛かると、明九段は歩で銀を取ってから▲6六金と金交換します。明九段が角取りに▲3四桂と跳ねると、和史六段は構わず銀取りに△6五桂と打って攻め合います。明九段が角桂交換すると、和史六段は王手成銀取りに△8四角と打って成銀を取ります。互いに桂を打ち合っての激しい将棋となりましたが、最後は明九段が▲8三角と打ち込んで馬を作り、▲5三金と打って即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:3勝 - チーム中村:2勝

六局目:岡部怜生四段 vs 佐々木大地七段

チーム中村は順番通り佐々木七段を送り出します。後手の岡部四段が一手損角換わりを採用すると、佐々木七段は早繰り銀から▲5五銀~▲6四銀と1歩得します。岡部四段が△7三角と据え、9筋を端攻めして圧力を掛けると、佐々木七段は▲4八角と打ち、銀で角を追います。岡部四段が△1九角成と馬を作って飛車を追うと、佐々木七段は飛車を取らせる代わりに▲7三歩成と"と金"を作って飛車を追い、▲3五角と銀を取ります。岡部四段が△4四金と寄って角を追うと、佐々木七段は▲5三"と"と飛車を追い、▲4四香と打って成香で金を剥がします。時計の叩き合いの中、激しい攻防が続きましたが、大駒3枚を持った岡部四段が入玉を果たすと、佐々木七段は投了を告げました。
チーム渡辺:4勝 - チーム中村:2勝

七局目:山崎隆之八段 vs 佐々木大地七段

追い込まれたチーム中村は敗れた佐々木七段の連投で勝負を賭けます。先手の山崎八段が角道を止めて雁木に組むと、佐々木七段は矢倉に組み、△8四角と転回します。山崎八段は▲2五桂と跳ねて桂交換し、佐々木七段が7筋の歩を取り込んで角に当てると、▲9五角とぶつけて角交換します。佐々木七段は飛車取りに△2八角と打って馬を作り、△2八歩成と"と金"を作って飛車を追い、金銀両取りから△5八馬と金を取って攻め掛かります。山崎八段は▲3三銀~▲4二歩と攻め合いますが、佐々木七段は△3三金と銀を取り、△8七銀とタダ捨てして即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:4勝 - チーム中村:3勝

八局目:山崎隆之八段 vs 中村太地八段

チーム渡辺も負けた山崎八段を連投します。四局目と同じ出だしとなり、中村八段は角交換後に▲7七角と打ち直し、▲4五桂と跳ねて金を上ずらせ、飛先の歩を交換します。お互いに陣形を整備し、中村八段が1筋を端攻めして▲1五角と出ると、山崎八段は△6二角と5三の地点を受けます。中村八段が6筋を攻めて銀を上ずらせ、▲5二角成と金を食いちぎり、飛角両取りに▲7二金と打つと、山崎八段は△4五金と桂を食いちぎり、金取りに△6六桂と打ちます。この桂を取ると王手金取りがあるので、中村八段は4筋の歩をぶつけ、山崎八段が金桂交換すると、詰めろ飛車取りに▲6三角と打って飛車を取りつつ馬を作り、着実に▲6三馬から詰めろを続けて寄せ切りました。
チーム渡辺:4勝 - チーム中村:4勝

九局目:渡辺明九段 vs 渡辺和史六段

フルセットとなり、この日2回目の同姓対決となります。振り駒で先手となった和史六段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換して浮き飛車に構えます。明九段は7筋の縦歩取りを狙い、和史六段が角を交換すると、3筋の銀を吊り上げてから△7六飛と走って銀に当てます。和史六段は飛車を浮いて銀を支え、明九段が△5四角と数を足すと、▲4五歩~▲6五歩と後手の飛車角の動きを封じ、▲6七銀と上がって飛車を捕獲します。明九段が△3六飛と銀と刺し違え、△6七角成と銀を食いちぎり、△7四銀と打って飛車を取り返すと、和史六段は▲5五角~▲3四飛と攻め合います。明九段は△6九飛とタダ捨てして△6七銀成と詰めろを掛けますが、和史六段は▲9八飛と打って凌ぐと、▲4四角と金を食いちぎり、▲3四角の王手から即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:4勝 - チーム中村:5勝

Aリーグ第二試合の結果

チーム中村は、佐々木七段が三局目に大逆転を演じ、カド番となった七局目も制してチームに流れを引き戻しました。リーダーの中村八段は初戦を落としたものの2勝を挙げてチームを支え、渡辺六段も決着局で殊勲の星を挙げて大きく貢献しました。3人がそれぞれ持ち味を出して活躍し、予選突破に向けて好スタートを切ったと思います。
チーム渡辺は、岡部四段が3戦3勝の大活躍を見せましたが、山崎八段がこの日は白星に恵まれず、リーダーの渡辺九段も1勝に終わりました。この試合は敗れたものの、2試合通算9勝7敗となり、予選突破が決まっています。過去の大会でも調子の波が大きかった渡辺九段と山崎八段ですが、本戦での復活を期待したいと思います。

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