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「観る将」が観た小山怜央アマの棋士編入試験第一局

11月28日、小山怜央アマが挑む棋士編入試験の第一局が行われました。棋士編入試験は先日里見香奈女流五冠が受験して話題となりましたが、小山さんは現在の制度ができてからは初めて奨励会在籍経験のない受験者として注目されています。

文春オンラインの記事によれば、小山さんは中学3年生の時に奨励会を受験したものの不合格、大学4年生の時にアマ名人戦で優勝して三段リーグ編入試験の受験資格を得て受験したものの不合格と、今回が3回目の挑戦になるそうです。

第一局の試験官となる徳田拳士四段は2022年4月にプロ入りした24歳で、今年度の勝率0.871(27勝4敗)は全棋士中1位です。小山さんにとっては、最大の難敵かもしれません。

戦型は角換わり相腰掛け銀

振り駒で先手となった徳田四段が角換わりに誘導し、小山さんは堂々と受けて立ちました。序盤は淡々と定跡の駒組みが進み、徳田四段が銀矢倉を完成させると、小山さんは△5五銀と前進して中央制圧を目指します。

徳田四段の仕掛け

これを見た徳田四段が3筋の歩をぶつけると、小山さんはもう1枚の銀を△4四銀と上がります。徳田四段が飛車取りに▲1八角と打つと、小山さんは△5四角と合わせます。徳田四段は角を交換してから飛先の歩を交換しますが、小山さんは飛車を追わずに△4六銀と進めます。

小山さんの反発

徳田四段が飛車を下段に引くと、小山さんは飛頭を歩で叩きます。取ると角打ちの隙ができるので徳田四段は飛車を3筋にかわしますが、小山さんはじっと3筋の歩を銀で取ります。徳田四段は7筋の歩を突き捨て▲7四歩と打って桂を捕獲しますが、小山さんは桂を取らせる代わりに飛車を2筋に転回します。

金の進軍

歩切れの徳田四段は2筋を諦め、飛車を6筋に回して6筋の歩をぶつけ、金取りに▲8二角と打ち込みます。小山さんは金を上がってかわし、徳田四段が金取りに桂を打つと、△6五金とさらに前進します。徳田四段が続けて▲5四桂と王手で跳ねると、小山さんは玉を3筋に引いてかわします。

小山さんの竜

徳田四段は金取りに▲6六歩と打ちますが、小山さんは構わず銀取りに△7六歩と伸ばします。徳田四段が銀で歩を取り金銀交換に応じると、小山さんは飛桂両取りに△3六角と打ちます。徳田四段が飛車を7筋にかわすと、小山さんは△2八飛成と竜を作って金に当て、先手に持ち駒の金を使わせてから竜で香を拾います。形勢はわずかに小山さんに傾いてきたようです。

徳田四段の馬

徳田四段が▲6四角成と馬を作って桂に紐を付けつつ王手すると、小山さんは銀で馬を追い、香を取らせる代わりに角で桂を取り銀に当てます。徳田四段は手抜いて銀取りに香を打ち、お互いに銀を取り合います。小山さんが7筋に香を打って先手の馬の利きの遮断を狙うと、徳田四段は▲6四馬と戻して活用を図ります。小山さんが馬取りに△7五銀と打つと、徳田四段は馬を前進して香に当てます。形勢はほぼ互角に戻っています。

玉頭攻め

小山さんが8筋の歩を突き捨て△8七歩と玉頭を叩くと、徳田四段は▲9七玉とかわします。小山さんは歩で馬の位置を変え、銀を成香と交換し金を寄って馬に当てますが、徳田四段は歩で玉頭を叩きます。小山さんは△4一玉と寄ってかわし、△8六銀と再び先手の玉頭から攻め掛かります。

上部脱出

小山さんは△8五香~△8八歩成と攻め立てますが、徳田四段は馬で7筋の香を取り、上部への脱出路を作ります。小山さんは"と金"で飛車と金を取りますが、負けられない徳田四段は入玉を目指して逃走します。再度小山さんに傾いていた形勢は、徳田四段が少し押し戻しているようです。

徳田四段の寄せ

小山さんは自玉を縛る3筋の垂れ歩を取りますが、徳田四段は2筋に歩を垂らし、銀で取らせて▲2五歩と銀頭を叩きます。小山さんは手抜いて△7一歩と馬に当てて打ちますが、徳田四段は▲2三銀と打って玉で取らせ、▲2四歩~▲3六馬と後手玉を追い詰めます。

最終盤の妙手順

小山さんは△1六竜と引いて馬に当て、歩で合い駒させてから△7三飛と王手します。徳田四段は銀で合い駒しますが、小山さんは竜で歩を食いちぎって馬の位置を変え、△6三桂と王手します。前進すると詰みがあるため、徳田四段は玉を引くしかありませんが、小山さんは王手を続けながら△3五銀と王手馬取りを掛け、馬を取って自玉の安全を確保します。徳田四段は飛車と角で王手し形を作りましたが、小山さんが166手目に角で王手すると投了を告げました。

まとめ

本局は両者の研究が行き届いた序盤戦となり、中盤以降は小山さんが押し気味の展開となりました。負けられない徳田四段は上部脱出を図り、後手玉を追い詰めて意地を見せましたが、最終盤に小山さんが絶妙の手順で先手玉を押し返し、自玉を安全にしてから即詰みに討ち取りました。
小山さんは強敵の徳田四段を堂々とした内容で破って1勝0敗となり、合格に向け幸先良いスタートを切りました。岡部怜央四段を試験官とする第二局は12月に予定されていますので、全力を出し切れるよう期待したいと思います。

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