第83期順位戦A級1回戦

いよいよ第83期順位戦A級が開幕し、7月21日までに全員が1回戦を終えていますので、状況を確認しておきたいと思います。

私が注目していたのは、今期のA級開幕局となった佐藤天彦九段と永瀬拓矢九段の対局です。後手の佐藤九段は四間飛車に振って角交換し、永瀬九段が飛先の歩を伸ばすと、向かい飛車に振り直します。永瀬九段が銀冠に組み▲6六銀と出ると、佐藤九段は木村美濃を崩して△8三金と金冠で玉頭を守ります。永瀬九段は5筋から仕掛けて後手陣の金銀を分断し、▲1八角と遠見の角を放って優勢となりますが、佐藤九段は攻防に△1五角と打ち、△3七飛成と竜を作って反撃します。永瀬九段が▲4二角成と馬を作ると、佐藤九段は△3八竜と飛車を追い、7筋の歩を取り込みます。永瀬九段は▲3九飛と竜にぶつけ、佐藤九段が△8五桂と先手の歩頭に放って金桂交換すると、飛車を竜と交換してから▲5二飛と王手して攻め合います。佐藤九段は△8九飛と詰めろを掛け、永瀬九段の連続王手を凌いで逃げ切りました。

他の対局結果は以下の通りです（左が勝者）。
　佐々木勇気八段 － 豊島将之九段
　中村太地八段 － 渡辺明九段
　増田康宏八段 － 菅井竜也八段
　千田翔太八段 － 稲葉陽八段

A級2期目の佐々木(勇)八段と中村(太)八段、A級初参戦の千田八段と増田(康)八段が好スタートを切りました。挑戦権を争うと思われた豊島九段、永瀬九段、渡辺(明)九段が揃って敗れる波乱含みの幕開けとなっています。次の2回戦では豊島九段vs渡辺(明)九段の対局が組まれており、両者にとって負ければ挑戦権争いから脱落しかねない重要な一局となりそうです。