「観る将」が観た第31期倉敷藤花戦挑戦者決定戦
9月27日に大山名人杯第31期倉敷藤花戦の挑戦者決定戦が行われました。前期は挑戦権を獲得し里見香奈倉敷藤花に敗れた西山朋佳女流三冠と、第27期以来2度目の挑戦者決定戦に進出した加藤結季愛女流初段の顔合わせとなっています。
西山女流三冠は今期、和田(は)女流1級、船戸女流三段、水町女流初段、内山女流初段、上田女流四段を降して勝ち上がっています。加藤(結)女流初段は2018年プロ入りの20歳で、今期は石高女流二段、伊藤女流四段、野原女流初段、磯谷(真)女流初段、今井女流初段を降して堂々の勝ち上がりです。
西山女流三冠が中飛車
振り駒で後手となった西山女流三冠が中飛車に振り、角を交換してから5筋の歩を交換すると、加藤女流初段は6-7筋の位を取って厚みのある陣形を目指します。西山女流三冠が美濃囲いに構えて向かい飛車に振り直すと、加藤女流初段は▲5五銀とぶつけて交換します。西山女流三冠は△3四角と打って間接的に先手玉を睨み、加藤女流初段が▲5六銀と打って緩和すると、△2五角と1歩得を果たします。早くも残り1時間を切った加藤女流初段は▲4六角と打ち、西山女流三冠が飛車を5筋に戻すと、▲3五角と出て歩損を解消します。
西山女流三冠の浮き飛車
西山女流三冠が5筋に歩を合わせて飛車を浮き、角取りに△3四飛と寄ると、加藤女流初段は角を4筋に引いてかわします。次の58手目を西山女流三冠が考慮中に昼休となりました。形勢はほぼ互角、各2時間の持ち時間の内、残り時間は西山女流三冠が1時間22分、加藤女流初段が40分と約2倍の差が付いています。
西山女流三冠の大技
昼休明け、西山女流三冠が角取りに△3五銀と打つと、加藤女流初段は角で銀を食いちぎり、飛角両取りに▲2六銀と打ちます。西山女流三冠が△4五飛と先手の銀の利きに差し出すと、この飛車を取ると馬を作られて自陣の飛車を攻められる筋があるので、加藤女流初段は銀で角を取ります。駒割りは先手の銀得ですが、形勢はまだまだ互角のようです。
"と金"攻め
お互いに竜を作り、手番を握った西山女流三冠は5筋に歩を垂らして"と金"を作り、△4五桂と援軍を送ります。加藤女流初段は金取りに▲2二竜と入りますが、西山女流三冠は構わず△5七歩と垂らし、加藤女流初段が竜取りに▲1六角と打つと、歩で角の利きを止めます。加藤女流初段が竜で金を取ると、西山女流三冠は2枚目の"と金"を作って先手陣に攻め込みます。形勢は西山女流三冠に傾いてきたようです。
豪快な寄せ
加藤女流初段は▲2七角と竜に当て、西山女流三冠が△4八竜とかわすと、▲4九歩と竜を攻めます。西山女流三冠は"と金"で金を剥がし、更に竜で金を食いちぎり、王手竜取りに△2四角と打ちます。1分将棋に突入した加藤女流初段は7筋に玉をかわしますが、竜を取った西山女流三冠は△7九飛と打って寄せに入ります。加藤女流初段は上部脱出を図って粘りましたが、西山女流三冠は逃さず寄せ切りました。
まとめ
本局は厚みのある陣形を築いた加藤女流初段が積極的に仕掛けましたが、西山女流三冠は飛車のタダ捨てという大技で主導権を握りました。加藤女流初段は時間に追われながらも必死に食らいつきましたが、西山女流三冠は次々に豪快な攻めを繰り出し一気に決着を付けました。
2期連続で里見倉敷藤花への挑戦権を獲得した西山女流三冠は、「変わらずに自分らしい将棋を指せたらと思います」と抱負を語っており、女流棋界の看板カードとなった2人のタイトル戦が熱戦となるよう期待したいと思います。
惜しくも自身初のタイトル挑戦を逃した加藤女流初段は、今期のトーナメントを振り返って「伊藤さんに勝てたのは自信になりました。序盤の組み立てなど、足りないところがいっぱいあると思いました」と話しています。若い加藤女流初段が近い内にタイトル戦に登場し、女流棋界の二強を苦しめる存在になることを楽しみにしたいと思います。
大山名人杯倉敷藤花戦は、倉敷市・倉敷市文化振興財団・山陽新聞社が主催しています。棋譜等は下記サイトをご確認ください。
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