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「観る将」が観た第71期王将戦二次予選 藤井二冠戦

7月30日にALSOK杯王将戦の二次予選、藤井聡太王位・棋聖と石田直裕五段の対局がありました。藤井二冠は前期王将リーグを3勝3敗の成績で残留できず、今期は二次予選からの出場となり本局が初戦になります。ほとんどの棋戦でシードされている藤井二冠にとって、今年度初めて六段以下の棋士との対局となりました。石田五段は一次予選を勝ち抜き、二次予選の1回戦では井出五段を破っています。石田五段は井出五段との対局後、本局に向けて「策を練って臨みたい」と意欲を語っています。

両者は過去1回の対局があり、2018年の竜王戦ランキング戦5組決勝という大舞台で、藤井七段(当時)が升田幸三賞を受賞した△7七同飛成を魅せて勝っています。私はこの対局をリアルタイムでは観ていないのですが、私が観る将になる大きな要因となったのが、当時のこの将棋の動画を観たことでした。肉を切らせて骨を断つような流れでしたが、相手が気付いた時にはもう手遅れという鮮やかな手順は強く印象に残っています。

本局は振り駒の結果先手となった藤井二冠の誘導で、相掛かりの将棋となりました。石田五段が先に飛先の歩を交換すると、藤井二冠も飛先の歩を交換し7筋の歩も取ります。石田五段は2枚の銀を四段目まで進め、居玉のまま4筋から仕掛けます。お互いに角を端に覗いた後、藤井二冠が▲4四歩と垂らした手が好手だったようで、形勢が少し傾いてきたようです。

石田五段は△8六歩~△7四桂と先手の角を追いますが、藤井二冠は角を切って銀を入手し▲4三歩成と攻め掛かります。石田五段も△6六桂から攻め合いを選択しますが、こうなると藤井二冠の速度計算は正確です。石田五段が詰めろを掛けた瞬間、藤井二冠は▲4二角の王手から即詰みに討ち取りました。

本局は後手の石田五段が序盤の手得を活かして積極的に仕掛け、お互いに激しく攻め合い素人目には難しい中終盤になったように見えましたが、AIの評価値的には藤井二冠が徐々にリードを拡げて危なげない展開だったようです。藤井二冠は対局後「非常に難しかったですけど、攻め合いに行って自玉の遠さを活かすことができたと思います」と話していますが、適切な形勢判断に基づく思い切りの良さが光ったように思います。

藤井二冠は8月16日の二次予選決勝で、6月の順位戦で苦杯を喫した稲葉八段と対局することとなりました。順位戦での借りを返して王将リーグへの復帰が成るか、期待して応援したいと思います。

ALSOK杯王将戦は、毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟の主催、今期からALSOKが特別協賛しています。
本稿は「王将戦における棋譜利用ガイドライン」に従い、利用許諾を得ています。(https://www.shogi.or.jp/kifuguideline/terms.html)

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