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ABEMAトーナメント2023 本戦1回戦第一試合

7月29日に、ABEMAトーナメント2023の本戦1回戦第一試合が行われました。Aリーグ2位のチーム永瀬「川崎家」とCリーグ2位のチーム広瀬「はやぶさ」の顔合わせとなっています。ドラフト終了時点で私が優勝候補に挙げた両チームですが、予選はともに2位通過となり本戦1回戦で早くも激突します。


一局目:永瀬拓矢王座 vs 近藤誠也七段

チーム永瀬はリーダーがいきなり出陣します。先手の永瀬王座が角換わりに誘導し、9筋の位を取って相腰掛け銀の将棋となります。近藤七段が6筋の歩を突き捨て、9筋の歩も突き捨てて香を吊り上げ△9八歩と垂らすと、永瀬王座は飛車取りに▲7三角と打って馬を作ります。近藤七段が△9九歩成から△8九角と攻め込むと、永瀬王座は▲6五桂と跳ね、銀を取らせて▲7三桂成と後手の飛車を攻めます。近藤七段は△6六歩と攻撃の拠点を作りますが、永瀬王座は▲5八桂と打って上部への脱出路を確保します。近藤七段が△6五歩と馬頭を叩くと、永瀬王座は▲2三飛成と金を食いちぎって後手玉に迫ります。永瀬王座が王手飛車取りに▲2二金と打ち、▲1二銀と寄せに行くと、作戦会議室では増田七段が「えっ、うっかりしてない?」とつぶやきます。近藤七段が丁寧に応じると、永瀬王座は詰めろが続かず、投了を告げました。
チーム永瀬:0勝 - チーム広瀬:1勝

二局目:増田康宏七段 vs 石井健太郎六段

チーム広瀬は予定通り石井六段が出陣します。先手の石井六段が三間飛車に振り美濃囲いに構えると、増田七段は左美濃から銀冠に組み替え、△1二玉と米長玉に構えます。石井六段が4筋の位を取ると、増田七段は4筋の歩を交換して角で取り、8筋の歩を突き捨てて6筋の歩をぶつけます。石井六段が飛車を6筋に回して受け、5筋の歩を角で取らせて▲5六銀とぶつけると、増田七段は角をぶつけて交換し、△4六歩と金頭を叩いて拠点を作ります。増田七段が△6五歩と飛頭を叩くと、時間に追われた石井六段は飛車取りに▲6四角と打ちます。増田七段は△4七銀と攻め込むと、石井六段は1筋の端攻めを絡めて攻め合います。増田七段が△5六角と飛車取りに打つと、石井六段は▲5三歩成と"と金"を作って飛車を取り合います。増田七段が△4八銀成~△8八飛と先手玉を追い込むと、石井六段は▲3一銀から反撃しますが届かず投了を告げました。
チーム永瀬:1勝 - チーム広瀬:1勝

三局目:本田奎六段 vs 広瀬章人八段

チーム永瀬は緊張して寝不足気味と言う本田六段が出陣します。後手の広瀬八段が4手目に9筋の歩を突く趣向を見せ、力戦調の相居飛車の将棋となります。本田六段が角を交換すると、広瀬八段は△3三同金と応じます。広瀬八段が7筋の歩を突き捨て△6五桂と仕掛けると、本田六段は銀を引いてかわします。広瀬八段は9筋の香を犠牲に入手した歩を桂取りに△3六歩と打ちますが、本田六段は▲9二香成と飛車に当て、金取りに▲7一角と打ちます。広瀬八段は構わず飛車を9筋に寄せ、本田六段が飛車取りに香を打つと、飛車を取らせる代わりに角を取ります。本田六段は▲9一飛~▲2一飛成と桂を取って竜を作りますが、広瀬八段も△3七歩成と桂を取り、王手銀取りに△7六桂と打って攻め合います。広瀬八段は△5八角から銀を食いちぎって飛金両取りに△3八角と打ちますが、本田六段は▲3四桂と打って後手玉に迫ります。広瀬八段が△3四同金と取ると、本田六段は▲3二角と打ち急転直下の即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム広瀬:1勝

四局目:永瀬拓矢王座 vs 石井健太郎六段

チーム広瀬は近藤七段との相談の結果、石井六段が出陣します。先手の石井六段が三間飛車に振り美濃囲いに構えると、永瀬王座は穴熊を目指します。石井六段が飛車を浮いて石田流に組むと、永瀬王座も飛車を浮いて備えます。石井六段が角を覗いて▲9一角成と香を取って馬を作ると、永瀬王座は△7七歩成と桂を取り返します。お互いに飛車を取り合って相手陣に打ち込み、石井六段が▲2六香と玉頭攻めを見せると、永瀬王座は△3三馬と引き付け金銀3枚+馬の堅陣を築きます。石井六段は馬を自陣に引き付けて粘りましたが、永瀬王座は焦らず馬を取って駒得を拡大し、最後は即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:3勝 - チーム広瀬:1勝

五局目:増田康宏七段 vs 近藤誠也七段

チーム永瀬は相手を近藤七段と読み、増田七段が出陣します。先手の増田七段が雁木に組むと、近藤七段は土居矢倉に構えます。増田七段は飛車を4筋に回し、▲2五桂と跳ねて銀を引かせると、▲4五歩と攻め掛かります。近藤七段が△5三角と受けると、増田七段は7筋の桂頭を攻めます。近藤七段は△2六角と飛車取りに飛び出しますが、増田七段は▲1三桂成と成り捨て、▲3八桂と打って角を捕獲します。近藤七段は8筋に歩を打って先手陣を乱しますが、増田七段は▲7一角~▲5三角成と金を食いちぎって後手玉に迫ります。近藤七段は△7六桂と打って攻め合いますが、増田七段は▲4三歩成から寄せ切りました。
チーム永瀬:4勝 - チーム広瀬:1勝

六局目:本田奎六段 vs 広瀬章人八段

後がなくなったチーム広瀬はリーダーが出陣し、三局目と同じ顔合わせになりました。先手の広瀬八段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換します。本田六段が8筋の歩を合わせると、広瀬八段は角を交換して▲6六角と打ち直します。本田六段が右銀を繰り出して角を狙うと、広瀬八段は2筋の歩を合わせて飛車を走り、3筋の横歩も取ります。本田六段が△3三銀と上がって飛車を引かせると、広瀬八段は▲2五桂と跳ねて援軍を送ります。本田六段は△4四銀とかわしますが、広瀬八段は角で銀を食いちぎり▲4三銀と打ち込みます。この銀はタダで取れますが、取ると竜を作られるので、本田六段は歩で金を支えますが、広瀬八段は▲2二歩と追撃します。本田六段は△2八角~△4六角成と馬を作って飛車に当てますが、広瀬八段は飛馬交換を催促して▲3四角から攻め掛かり、挟撃態勢を作って寄せ切りました。
チーム永瀬:4勝 - チーム広瀬:2勝

七局目:増田康宏七段 vs 広瀬章人八段

チーム広瀬は勝ったリーダーが連投します。後手の広瀬八段が横歩取りに誘導し、増田七段は堂々と3筋の横歩を取ります。広瀬八段は角を交換し、△3三桂~△2五歩と飛車を追ってからひねり飛車を採用します。広瀬八段が4筋の歩をぶつけると、増田七段は飛車取りに▲3五角と打ち、▲4六角と歩を取って美濃囲い攻略の好所に据えます。増田七段が2筋の歩を伸ばすと、広瀬八段は角取りに△4五銀と出て、△2七歩と飛頭を叩きます。増田七段が飛車を5筋に回すと、広瀬八段は飛車取りに△6九角と打ち込んで馬を作ります。増田七段が"と金"を作って攻め込むと、広瀬八段は9筋の歩を突き捨ててから△5六香と飛金を田楽刺しにします。増田七段は飛車取りに▲7六桂と打ち、広瀬八段が飛車を引くと、2枚目の"と金"を作って後手玉を追い詰めます。広瀬八段は△6四桂から先手玉に迫りましたが届かず、増田七段は▲6二馬から即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:5勝 - チーム広瀬:2勝

第一試合の結果

チーム永瀬は、増田七段が相手チームの3人から3勝を挙げる大活躍でチームを牽引しました。永瀬王座は1勝1敗に終わりましたが、本田六段も相手チームのリーダーを破り、チームの勝利に大きく貢献しました。増田七段が前回大会の調子を取り戻し、優勝候補の一角として次戦以降も勝ち上がっていく可能性は高いと思います。
チーム広瀬は、リーダーの広瀬八段がまさかの負け越しとなり、チームに勢いを付けることができませんでした。近藤七段は初戦に相手チームのリーダーを破る殊勲の星を挙げましたが、予選で活躍した石井六段がこの日は勝ち星に恵まれませんでした。残念ながらここで敗退となりましたが、リーダーの人柄からか温かみの感じられる良いチームだったと思います。

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