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「観る将」が観た第73回NHK杯トーナメント本戦3回戦 藤井NHK杯vs久保九段

1月21日、NHK杯本戦の藤井聡太NHK杯と久保利明九段の対局が放映されました。NHK杯の本戦は、持ち時間10分・切れたら1手30秒未満(他に各1分の考慮時間10回)の早指し棋戦で、総勢50人のトーナメントとなっています。

前回優勝の藤井NHK杯は本戦2回戦からの登場で、出口六段を降しています。久保九段は本戦1回戦からの登場で、田村七段と里見女流五冠(当時)を破っています。両者の対戦成績は藤井NHK杯の4勝3敗と拮抗しており、2019年のNHK杯では2回戦で顔を合わせ、千日手指し直しで久保九段が勝っています。


久保九段は三間飛車

振り駒で先手となった久保九段が三間飛車に振り、▲4六銀と出てから少し時間を使って3筋の歩をぶつけると、藤井NHK杯は△4三金と上がって角頭を守ります。久保九段が早くも持ち時間を使い切り、玉を2筋に寄ると、藤井NHK杯も少し考えてから3筋の歩を取ります。

3筋の攻防

久保九段は飛車を3筋に回し、藤井NHK杯が少し時間を使って角を4筋に引くと、6筋の歩を伸ばします。藤井NHK杯が3筋の歩を伸ばすと、久保九段は歩の裏に▲3五銀と出ます。藤井NHK杯も持ち時間を使い切り、更に考慮時間を1回使って8筋の歩を突き捨てて角をぶつけると、久保九段は考慮時間を1回使って角を6筋にかわします。AIの評価値は藤井NHK杯の62%とわずかに傾いています。

飛車と角の攻防

藤井NHK杯が考慮時間を3回使って6筋の歩をぶつけて先手の角頭を狙うと、久保九段も考慮時間を5回使って▲8八飛と回します。藤井NHK杯は6筋の歩を取り込んで角に当て、久保九段が▲7五角とぶつけると、△8五歩と打って角を支えます。久保九段が▲8三歩と飛頭を叩くと、取ると飛金両取りがあるので、藤井NHK杯は飛車を9筋にかわします。

久保九段の馬

久保九段は▲3八金と陣形を引き締め、藤井NHK杯が△5三銀と上がって飛車の横利きを通すと、飛車を角と刺し違え、金桂両取りに▲6三角と打ち込みます。藤井NHK杯が構わず△3二飛と回して銀に当てると、久保九段は考慮時間を2回使い、▲4四銀と取られそうな銀で歩を食いちぎって後手陣を乱し、▲4一角成と金を取って馬を作ります。

お互いに相手陣への飛車の打ち込み

藤井NHK杯が考慮時間を1回使って△8八飛と打ち込むと、久保九段は最後の考慮時間を使って▲3一馬と王手し、馬角を飛銀と交換してから、▲7八銀と打って後手の飛車を閉じ込めます。藤井NHK杯は考慮時間を2回使って攻防に△2四角と打ち、久保九段が▲8二飛と打ち込んで詰めろを掛けると、△3二銀と自陣に打って逃れます。

藤井NHK杯の馬

久保九段が▲9八金と打って飛車を捕獲すると、藤井NHK杯は考慮時間を1回使ってもう1枚の角で△6四角と王手します。久保九段が玉を1筋に寄ってかわすと、藤井NHK杯は3筋の歩を成り捨て、△3七同角成と金を食いちぎり、△5七角成と馬を作って銀に当てます。

藤井NHK杯の端攻め

久保九段が▲2八銀とかわすと、藤井NHK杯は取られそうな飛車で銀を食いちぎり、1筋の歩をぶつけて端玉を攻めます。久保九段は▲6二飛と打ち込んで2枚飛車で詰めろを掛け、藤井NHK杯が△4二銀と自陣に埋めて逃れると、▲8一飛成と桂を取って竜を作り王手します。

お互いの玉頭での攻防

藤井NHK杯が4筋に底歩を打って凌ぐと、久保九段は歩で銀頭を叩いて後手陣を乱してから▲6四角と打ちます。藤井NHK杯が1筋の歩を取り込んで先手玉に迫ると、久保九段は銀取りに▲4六桂と打って下駄を預けます。藤井NHK杯は△1七歩成から王手を続けながら△2四金と打って銀に紐を付け、△2八馬と香を取って詰めろを掛けます。久保九段は▲4二角成と銀を食いちぎって王手し、連続王手で迫りましたが届かず、藤井NHK杯が即詰みに討ち取りました。

まとめ

本局はお互いに玉を囲う前から久保九段が仕掛け、藤井NHK杯も力強く先手の角を攻めて、飛車角がぶつかり合う乱戦となりました。久保九段は飛車を角と刺し違え、馬を作って攻め込みましたが、藤井NHK杯は正確に応じて凌ぎ、角2枚を使って反撃し寄せ切りました。
藤井NHK杯は連覇に向け、順調にベスト8に進出となりました。準々決勝は、棋王戦五番勝負を戦う伊藤匠七段との対局が決まっています。棋王戦第一局が行われる2月4日に放映されるようなので、観戦者にとってはダブルヘッダーの形になりますが、熱戦を期待したいと思います。

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