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「観る将」が観た第4回ABEMAトーナメント予選Cリーグ第三試合

6月5日にABEMAトーナメント予選Cリーグ第三試合が放映されました。チーム羽生「in the ZONE」対チーム木村「エンジェル」の顔合わせとなっています。第一試合で大勝したチーム木村は、3勝すれば予選トップ通過が決まります。チーム羽生は厳しい条件ですが、Bリーグでは似たような状況だったチーム菅井がトップ通過を果たしており、一局目から流れを掴みたいところです。

■一局目 中村(太)七段vs木村九段
チーム木村は第一試合と同様、リーダーが一局目から登場です。振り駒で先手となった木村九段は相掛かりで▲6八玉型を選択し、飛先の歩を交換してから7筋の歩も取って歩得を主張します。中村七段も△5五銀と出て相手の動きを牽制し△6五桂と跳ねます。難しい中盤戦となり、木村九段は▲9七角で相手の玉頭を睨んで反撃します。中村七段は角取りを放置して相手玉に迫り、入玉も視野に中段まで逃げ出した相手玉を即詰みに討ち取りました。

■二局目 中村(太)七段vs池永四段
チーム羽生は、相手のリーダーを破った勢いで中村七段の連投です。先手の中村七段は一局目の木村九段と同様、相掛かりで▲6八玉型を選択します。池永四段は△7六銀~△5四角と8筋突破を狙いますが、中村七段は▲6九角と自陣角を打ち辛抱します。池永四段は銀を犠牲に飛車交換し、相手陣に飛車を打ち込み攻め込みます。中村七段は冷静に受け止め、相手陣を受けなしに追い込みます。最後は池永四段が連続王手で攻め込みましたが中村七段が逃げ切り勝利を掴みました。

■三局目 中村(太)七段vs佐々木(勇)七段
チーム羽生は、連勝の中村七段が大会初の3連投です。後手の中村七段は2手目△3二金~6手目△7二飛と力戦に持ち込みます。見慣れない陣形に、佐々木七段は序盤から時間を使わされます。中村七段は角を犠牲に1筋を突破し、竜と成香と"と金"の攻撃が「in the ZONE」に入ってきました。佐々木七段はやむを得ず攻め合いを選択しますが敵玉は遠く、中村七段の完勝譜となりました。

■四局目 佐藤(紳)七段vs木村九段
中村七段の史上初の3局連続勝利で苦しくなったチーム木村は、流れを変えるべくリーダー登場です。佐藤七段が矢倉に誘導し、木村九段はバランス重視の土居矢倉に組みました。ジリジリした駒組みが続きましたが、木村九段が先に△6五歩と仕掛けます。佐藤七段も4筋から反発しますが、木村九段は先に馬を作って歩と桂で相手陣を崩します。佐藤七段は馬を作って攻め合いを目指しましたが、時間に余裕のあった木村九段は手厚い攻めで寄せ切りました。

■五局目 羽生九段vs佐々木(勇)七段
チーム羽生は、満を持してリーダーが登場です。先手の佐々木七段は角換わりに誘導し、腰掛け銀を目指します。羽生九段は早繰り銀に構え、じっくりした駒組みが続きます。佐々木七段が▲4五桂と仕掛け、作った馬で銀を食いちぎって殺到します。羽生九段も敵陣に角を打って攻め合いを選択しますが、佐々木七段は相手の6五の銀を奪ってから竜を作ります。羽生九段は飛車を切って必死に粘りますが、佐々木七段が寄せ切りました。

■六局目 羽生九段vs池永四段
予選突破に向けて後がなくなったチーム羽生は、リーダーが連投です。先手の羽生九段が矢倉に誘導し、池永四段も受けて立ち本格的に組み合います。羽生九段が棒銀を見せると、池永四段は一度上がった玉を引き、△4五歩~△4四銀と守りを固めます。羽生九段は▲9八香と上がって池永四段の△5二飛を誘い、▲4六歩から飛車の横利きを活かして左辺にも嫌味を付けます。1筋に"と金"を作った羽生九段はじわじわと相手玉を追い詰めます。池永四段は相手の玉頭から歩と香で崩しに掛かりますが、丁寧に受け止めた羽生九段が反撃に転じ即詰みに討ち取りました。

■七局目 羽生九段vs佐々木(勇)七段
チーム羽生が勝てば3チームによるプレーオフ、チーム木村が勝てばチーム羽生が予選敗退となる大一番となり、チーム羽生はリーダーの3連投で五局目と同じ顔合わせになりました。先手の佐々木七段は前局と同様角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋になりました。羽生九段は9筋の端歩を手抜いて駒組みを急ぎ、△6五桂と跳ねてから8筋の歩を交換します。佐々木七段は4筋から反発し2筋の継ぎ歩攻めを見せ、1筋からの端攻めを決行し優勢の局面を築きます。羽生九段はいくつも駒がぶつかる複雑な局面を作り、どちらが勝つのかわからない終盤戦になりました。佐々木七段は歩の王手で時間を稼ぐフィッシャールールならではの作戦を見せ、相手玉に詰めろを掛けましたが、羽生九段は竜の王手で相手に合い駒請求して詰めろを逃れ、相手を受けなしに追い込み劇的な勝利を掴みました。

【チーム羽生 5勝 vs チーム木村 2勝】
チーム羽生は勝者を連投する作戦で流れを掴み、まさかの3チームによるプレーオフに持ち込みました。特に一局目に相手リーダーを破った勢いで3連勝した中村(太)七段が、チームの勝利に大きく貢献しました。羽生九段も六局目~七局目と難しい中終盤に底力を発揮し、貫録を示しました。
チーム木村は、一局目からリーダーを投入して勝ちにいきましたが、中村(太)七段の気迫の前に不発に終わりました。佐々木(勇)七段を先手番に投入する作戦でしたが、1勝2敗に終わったのも誤算だったかもしれません。

戦出場チーム決定一番勝

抽選の結果、チーム羽生がシードとなり予選突破を決めました。1回戦でチーム豊島とチーム木村のリーダー同士の対局の勝者が予選突破となり、チーム羽生のリーダーと1位通過を懸けて対局します。

■1回戦 豊島竜王vs木村九段
先手の木村九段は一局目と同様相掛かりで▲6八玉型を選択し、豊島竜王は先に飛先の歩を交換して横歩を取ります。豊島竜王が8筋に歩を垂らすと、木村九段は飛車で払って飛車を交換します。木村九段が先に攻防の▲5五角と打ち、歩の連打で相手陣を乱してから飛車を打ち込み竜を作ります。豊島竜王は王手馬取りを掛けさせて相手玉に迫りますが届かず、木村九段が即詰みに討ち取りました。

■1位決定戦 羽生九段vs木村九段
先手の木村九段がまたしても相掛かりで▲6八玉型を選択し、飛先の歩を交換してから7筋の歩も取り、歩得を主張する展開にします。木村九段が積極的に4筋から仕掛けると、羽生九段は3筋から反発します。木村九段は飛車を切って角を取り返し馬を作ります。4分以上残していた木村九段は少し考えてから、角と馬で寄せに入ります。羽生九段も絶妙の受けを見せ、"と金"攻めで相手玉に迫ります。際どい終盤戦となりましたが、最後は木村九段がしっかり読み切り即詰みに討ち取りました。

予選Cリーグは、チーム木村「エンジェル」が1位通過、チーム羽生「in the ZONE」が2位通過となりました。リーダーが底力を発揮した両チームが、本戦で結束力を更に高めることで上位進出することを期待したいと思います。

※池永五段は4月に昇段していますが、収録時の段位(四段)で記述しています。

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