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「観る将」が観た第13期加古川青流戦決勝三番勝負第二局

11月5日、加古川青流戦決勝三番勝負の第二局が兵庫県加古川市の「鶴林寺」で行われました。先勝した藤本渚四段が一気に初優勝を遂げるのか、吉池隆真三段が第三局に決着を持ち越すのか、楽しみな一戦となりました。


戦型は相雁木

後手の吉池三段が雁木に組むと、藤本四段も雁木に構えます。吉池三段が△6二玉と右玉に構えると、藤本四段は▲8八玉と深く囲います。藤本四段は飛車を3筋に寄せ、吉池三段が△4三金左と上がって角頭を補強すると、9筋の香を上がって穴熊を目指します。吉池三段が玉を7筋に寄せて陣形を整備すると、藤本四段は飛車を4筋に寄せます。

5筋の位

吉池三段は△2二角と引き、藤本四段が飛車を2筋に戻すと、△1三角と覗いて4筋の歩を狙います。藤本四段は飛車を4筋に戻し、吉池三段が千日手も視野に△2二角と戻すと、▲4九飛と下段に引いて打開します。吉池三段は4筋の歩を突き捨てて角道を開け、5筋の歩を伸ばして位を取り、6筋の歩も交換します。

藤本四段の仕掛け

藤本四段は1筋と2筋の歩を突き捨ててから飛車を2筋に戻し、吉池三段が△3三角と上がって2筋の歩を支えると、▲2二歩と桂頭を叩きます。吉池三段が△1三桂とかわすと、藤本四段は▲2一歩成と"と金"を作って香に当てます。藤本四段が軽快に攻め込んでいますが、形勢はまだまだ互角のようです。

吉池三段の反撃

吉池三段は手抜いて6筋の歩をぶつけ、藤本四段が"と金"で香を取ると、△6六歩と取り込みます。藤本四段は銀で取り、吉池三段が△5六歩とぶつけて角の利きを銀に当てると、▲6七歩と打って銀を支えます。吉池三段は8筋の歩を突き捨てて角で取らせ、6筋の銀頭を歩で叩いて▲7七銀と引かせ、9筋の歩をぶつけます。

両者1分将棋へ

藤本四段が少考して5筋の歩を取ると、吉池三段は銀取りに△8五桂と跳ねます。1分将棋に突入した藤本四段が9筋の歩を取ると、吉池三段も1分将棋となり7筋の歩をぶつけて角で取らせます。吉池三段が△9七歩と香頭を叩き、桂香交換して角取りに△7四香と打つと、藤本四段は▲5三角成と金を食いちぎり、▲5五香と金銀を田楽刺しにします。

二段ロケット

吉池三段が銀で香を食いちぎり、△9二香と二段ロケットを設置すると、藤本四段は▲8八金打と持ち駒を投じて備えます。吉池三段は△5五角と飛び出して飛車に当て、藤本四段が▲2四飛と走ると、△9六歩と金頭を叩きます。藤本四段は同金と応じ、吉池三段が△9五香と二段ロケットを発射すると、金香交換に応じてから▲9八歩と受けます。先手陣はまだまだ固く、形勢は藤本四段に傾き始めたようです。

痛烈な角金の田楽刺し

吉池三段が△9七歩と叩いてから△7六香と走って先手玉のコビンを攻めると、藤本四段は▲7三歩と玉頭を叩いて引き付けてから▲7六銀と香を取ります。吉池三段は△7七歩と金頭を叩きますが、藤本四段は▲7五香と王手し、玉を6筋に引かせてから▲5七香と角金を田楽刺しにします。

鮮やかな即詰み

吉池三段はやむなく△7八歩成と金を取りますが、藤本四段は▲5五香と根元の角を取ります。吉池三段は△8九金と王手し、△7七角と王手香取りに打ち、△5五角成と香を取って馬を作りますが、藤本四段は▲7三角と王手で打ち込み、馬と交換してから▲8五桂打と王手します。後手玉には長手数の即詰みが生じており、吉池三段は「負けました」と投了を告げました。

まとめ

本局は雁木から穴熊に組み替えた藤本四段が仕掛け、吉池三段が端を絡めて反撃する展開になりました。前局と同様、勝負所で両者1分将棋となる熱戦になりましたが、吉池三段の攻めを手堅く凌いだ藤本四段が逆襲し、最後は鮮やかな即詰みに討ち取りました。
藤本四段は加古川青流戦史上最年少での優勝となり、新人王戦で惜しくも準優勝となった悔しさを晴らしました。他の棋戦でも勝ち星を重ねて今年度の勝率は8割を超えており、トップ棋士への階段を着実に昇って欲しいと思います。
吉池三段は新人王戦のベスト4に続き、準優勝に輝きました。まだ10代の新鋭であり、三段リーグの壁を突破してプロ棋士として羽ばたくのを楽しみにしたいと思います。

加古川青流戦は、加古川市・公益財団法人加古川市ウェルネス協会・公益社団法人日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご確認ください。


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