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ABEMAトーナメント2024 予選Dリーグ第一試合

6月1日、ABEMAトーナメント2024の予選Dリーグ第一試合が放映されました。チーム稲葉「井上一門」とチーム佐々木「リーダー頑張ります!」の顔合わせとなっています。


一局目:上野裕寿四段 vs 伊藤匠七段

チーム稲葉は初出場の上野四段を送り出します。振り駒で先手となった伊藤七段が角換わりに誘導すると、上野四段は受けて立ち、右玉に構えます。伊藤七段が4筋から仕掛け、飛先の歩を交換すると、上野四段は△4六歩と打って銀を吊り上げ、飛車取りに△3八角と打ち、△5六角成と馬を作ります。伊藤七段が歩や桂で馬を8筋まで追うと、上野四段は9筋を端攻めし、8筋の歩を伸ばして先手の玉頭から攻め掛かり、桂交換後に馬を金と刺し違えて竜を作ります。伊藤七段は▲5四桂と王手で反撃し、7筋の桂を取って▲4四桂と王手して銀桂交換し、▲5三銀とタダ捨てして▲7一角と王手で迫りますが届かず、上野四段は飛車取りに△2八角と打って挟撃態勢を作り、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム稲葉:1勝 - チーム佐々木:0勝

二局目:上野裕寿四段 vs 佐々木勇気八段

チーム稲葉は恒例となっている勝った上野四段の連投です。先手の上野四段は矢倉を目指しますが、佐々木八段は一手損角換わりから、意表を突く四間飛車に振ります。上野四段は雁木に組み、佐々木八段が飛車を8筋に戻して3筋の歩を交換すると、▲3三歩と金頭を叩いて2筋に追います。上野四段が銀取りに▲3九飛と寄ると、佐々木八段は王手で△4六角と打ち、馬を作って飛車を追います。上野四段は6筋から反発し、▲5三銀と打って金を剥がして後手玉に迫りますが、佐々木八段は玉を上部に脱出し、歩頭に△8六桂と打って先手玉に迫ります。上野四段は▲4四銀と王手しつつ馬の利きを通して馬取りの大技を掛けますが、佐々木八段は冷静に銀を取り、馬を取らせる代わりに△7八桂成と王手し、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム稲葉:1勝 - チーム佐々木:1勝

三局目:藤本渚五段 vs 久保利明九段

チーム佐々木はベテラン久保九段を送り出します。先手の久保九段が三間飛車に振ると、藤本五段は7筋から仕掛けて銀を繰り出します。久保九段は▲7七金と上がって受け、飛車取りに▲3七角と上がり、藤本五段が飛車を浮いてかわすと、▲9一角成と香を取って馬を作ります。藤本五段は金銀交換して竜を作り、久保九段が▲7二飛成と竜を作ると、1筋を端攻めしてから△2四角と馬にぶつけます。久保九段は馬角交換に応じ、▲2三角と捨てて▲3一竜と銀を取って後手玉に迫りますが、藤本五段は玉を上部に脱出し、時計の叩き合いの中で激しい玉頭戦となります。最後は大きく駒得した藤本五段が△3六桂と王手し、そのまま鮮やかな即詰みに討ち取りました。
チーム稲葉:2勝 - チーム佐々木:1勝

四局目:藤本渚五段 vs 佐々木勇気八段

チーム佐々木は相手の勢いを止めにリーダーが出陣します。後手の佐々木八段は角道を止め、藤本五段が矢倉に組むと、雁木に構えます。藤本五段が3筋から仕掛けて銀を繰り出すと、佐々木八段は△6五桂と跳ねてから、銀取りに△4四歩と打ちます。藤本五段は角取りに▲3四歩と打ち返し、後手陣を乱してから▲6五銀と桂を食いちぎり、飛車取りに▲4六角と攻め掛かります。佐々木八段は△7三銀打と辛抱し、藤本五段が▲7七桂~▲5三歩と両取りを狙うと、△6三金とかわして粘ります。藤本五段が▲3三桂~▲2一桂成と飛び込んで香を取り、▲1三角成と馬を作ると、佐々木八段は7筋の歩をぶつけて攻め合います。藤本五段は▲3五香と田楽刺しにして銀と交換し、▲3四馬から後手玉を追い詰め、佐々木八段の反撃をかわして逃げ切りました。
チーム稲葉:3勝 - チーム佐々木:1勝

五局目:稲葉陽八段 vs 伊藤匠七段

チーム稲葉はリーダーが満を持して登場します。後手の稲葉八段が中飛車に振り、美濃囲いに構えると、伊藤七段は穴熊を目指します。稲葉八段は3筋から仕掛け、伊藤七段が2筋に"と金"を作って香を取ると、△1九角成と香を取って馬を作ります。伊藤七段が▲4二角成と馬を作り、飛車と交換して銀取りに▲4一飛と打ち込むと、稲葉八段は銀に紐を付けつつ飛車取りに△3五角と打ち、飛角交換して△6四馬と引き付けます。伊藤七段が▲3五角と打って金銀交換し、▲7一銀の王手から▲6一飛成と金を食いちぎって後手玉に迫ると、稲葉八段は懸命に凌いでから銀取りに△4九角と打ち、△7六角成と歩を食いちぎって先手玉に迫ります。時計の叩き合いの中で200手超えの大熱戦となりましたが、最後は稲葉八段が△7七歩と先手玉の退路を塞ぎ、△6九飛と王手して寄せ切りました。
チーム稲葉:4勝 - チーム佐々木:1勝

六局目:稲葉陽八段 vs 久保利明九段

後がなくなったチーム佐々木は久保九段に託します。後手の久保九段が三間飛車に振り穴熊を目指すと、稲葉八段も穴熊に囲います。久保九段が飛車を6筋に回して仕掛けると、稲葉八段は▲7五角と覗き、▲3三飛成と角と刺し違えて▲6四角打と金頭に叩き込みます。久保九段が△7五飛と角と刺し違えると、稲葉八段は桂香両取りに▲3一飛と打ち込みます。久保九段が△5五角と打って馬を作り、△7三馬と引き付けると、稲葉八段は"と金"を2枚作って攻め掛かります。自陣に火が付いた久保九段は9筋の端攻めに勝負を賭けますが、稲葉八段は▲9三角成と香を食いちぎり、9筋から逆襲して後手玉を追い詰めます。AIは稲葉八段の勝勢を示していますが、久保九段は時間に追われながらも諦めずに攻防の△6四角を放ち、稲葉八段が▲9一飛成と金を食いちぎって▲6二飛の王手から詰めろを掛けると、△9七銀と王手します。稲葉八段が3分以上残していながら数秒で▲9五玉とかわすと、久保九段の△7三角で先手玉は頓死しており、衝撃の大逆転となりました。
チーム稲葉:4勝 - チーム佐々木:2勝

七局目:藤本渚五段 vs 伊藤匠七段

嫌な流れのチーム稲葉は藤本五段を送り出します。後手の藤本五段が角道を止め、相矢倉の将棋となります。伊藤七段は3筋から仕掛けて▲4六角と好所に引き、藤本五段が△9三香~△9二飛と端攻めを狙うと、▲8五桂~▲9三桂成と桂香交換し、▲2六香と後手の玉頭に戦力を集めます。藤本五段が7筋の歩を取り込んで攻め合いを目指すと、伊藤七段は銀香交換後に角も交換し、金取りに▲6一角と打ち込みます。藤本五段は△7七香と王手してから金をかわし、△8五桂と援軍を送りますが、伊藤七段は▲2五桂から金桂交換し、▲4三角成と馬を作って後手玉に迫ると、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム稲葉:4勝 - チーム佐々木:3勝

八局目:上野裕寿四段 vs 久保利明九段

チーム佐々木は六局目に大逆転劇を演じた久保九段を送り出します。後手の久保九段が三間飛車に振り、石田流の好形を築くと、上野四段は左美濃から銀冠に組み替え、8筋の位を取って▲8六角と覗きます。久保九段がダイヤモンド美濃から△9一玉と潜り、△7三桂~△8五桂と守りの桂を跳ねて桂交換すると、上野四段は9筋を端攻めして後手陣を崩します。久保九段が△2五香と打って飛車を追うと、上野四段は飛車を5筋に回して金取りに▲4四桂と打って金桂交換します。久保九段は9筋の香を吊り上げて桂と交換し先手陣を弱体化させますが、上野四段は銀取りに▲4四桂と打って▲5四飛と走り、"と金"を作って後手玉に迫ります。久保九段も△2八飛成と竜を作って攻め合いますが、上野四段は玉を上部に脱出して逃げ切りました。
チーム稲葉:5勝 - チーム佐々木:3勝

Dリーグ第一試合の結果

チーム稲葉は、若い藤本五段と上野四段が2勝ずつ挙げ、チームの勝利に大きく貢献しました。リーダーの稲葉八段は前々回大会で若手2人に自信を持たせて勢いづかせ優勝した経験があり、今回も似たような雰囲気のチームで勝ち上がっていくことを予感させるスタートとなりました。
チーム佐々木は、3人がそれぞれ1勝してチーム力の高さを感じさせましたが、前半に星が上がらず勢いに乗れませんでした。久保九段が持ち味の粘りで1勝をもぎ取っており、佐々木八段と伊藤七段が本来の力を発揮できれば、予選突破は十分に可能と思います。

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