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ABEMAトーナメント2023 本戦2回戦第三試合

8月26日に、ABEMAトーナメント2023の本戦2回戦第三試合が放映されました。Aリーグ1位のチーム稲葉「NIN NIN」と、Eリーグ2位のチーム千田「シーソーゲーム」の顔合わせとなっています。


一局目:服部慎一郎六段 vs 西田拓也五段

チーム稲葉は波に乗れば止まらない服部六段が先陣を切ります。振り駒で先手となった西田五段が三間飛車に振り、▲3七桂と跳ねてから飛車を4筋に転回します。服部六段は△4三金と上がって備えますが、西田五段は4筋の歩をぶつけて仕掛け、左金を▲4七金~▲4六金と繰り出します。服部六段が△5五歩と伸ばして銀に当てると、西田五段は銀をぶつけて交換します。服部六段は△1三角と覗き、西田五段が金取りに▲4五桂と跳ねると、構わず△5七角成と馬を作ります。西田五段が金桂交換し、▲4三銀と打ち込み金銀交換すると、服部六段は△4二歩と打って守ります。西田五段は角道を通し、服部六段が馬を飛車と刺し違えて△6九飛と王手すると、4筋に底歩を打って守ります。西田五段が金を犠牲に▲3三角成と馬を作ると、服部六段は桂2枚を銀と交換し、取った銀で馬を捕獲します。西田五段は2枚の桂で後手陣を崩し、服部六段が王手金取りに△3六桂と打って反撃すると、1筋から上部脱出して逃げ切りました。
チーム稲葉:0勝 - チーム千田:1勝

二局目:出口若武六段 vs 藤本渚四段

チーム千田は注目の新鋭藤本四段が出陣し、同門対決となります。後手の藤本四段が角道を止めて雁木に構えると、出口六段も追随し相雁木の将棋となります。藤本四段が△3三桂と跳ねると、出口六段は飛先の歩を交換し、2分半程の長考で3筋の歩を突き捨て、4筋の歩をぶつけます。藤本四段も少考を重ねて△3四銀と出ると、出口六段は4筋の歩を取り込んでから、6筋の歩を突いて角道を通します。藤本四段が桂で取ると、出口六段は角をかわし、早くも時間に追われて2筋の歩を合わせて攻め掛かります。出口六段が桂交換してから銀桂交換すると、藤本四段は△7七歩と叩いて桂交換し、金取りに△6五桂と打ち直します。出口六段が金をかわすと、藤本四段は飛先の歩を交換して角と刺し違え、金取りに△7六桂と打って金桂交換します。出口六段は▲8一飛と打ち込み、藤本四段が△9二角と打って王手飛車を狙うと、▲3九飛と寄って金に当てます。藤本四段は角で飛車を取り、出口六段が飛車で金を取ると、△4三金と上がって詰めろを逃れてから△4九飛と打ち込みます。出口六段は▲2二飛成から反撃しますが届かず、藤本四段が即詰みに討ち取りました。
チーム稲葉:0勝 - チーム千田:2勝

三局目:稲葉陽八段 vs 千田翔太七段

両チームとも予定の順番を変えず、リーダー対決となります。先手の千田七段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換します。千田七段が腰掛け銀に構えると、稲葉八段は棒銀を見せ、8筋に歩を合わせて銀交換します。千田七段は1筋を端攻めし、▲2一銀成と拠点を作ると、▲6五桂と跳ねて桂交換しつつ角道を通します。稲葉八段は飛車を下段に引いて成銀を取りにいきますが、千田七段は銀取りに▲3六桂と打ち、成銀を香と交換してから銀桂交換し、▲1五香と走ります。千田七段が▲9七角と覗いて後手の玉頭に攻め掛かると、辛抱の受けを続けていた稲葉八段は△6六歩から反撃します。千田七段は▲8一角成と飛車を取りますが、稲葉八段は△7七角~△6六角成と金を取って馬を作ります。千田七段が▲5四馬と引いて後手陣を睨むと、稲葉八段は馬をぶつけて交換し、△1六角から即詰みに討ち取りました。
チーム稲葉:1勝 - チーム千田:2勝

四局目:稲葉陽八段 vs 西田拓也五段

チーム稲葉は勝ったリーダーがチーム恒例の連投です。後手の西田五段が四間飛車に振り穴熊を目指すと、稲葉八段も穴熊に囲います。稲葉八段が▲8六角と覗いて7筋の歩を交換すると、西田五段は飛車を6筋に転回します。稲葉八段は2筋の歩をぶつけますが、西田五段は△7四金~△8五金と角を追ってから△6六歩と垂らします。稲葉八段が▲5六歩から銀を取ると、西田五段は△6七歩成から金を剥がして△6六金打と攻め掛かります。西田五段は金銀交換して△7八歩と金頭を叩き、稲葉八段が金交換に応じて飛車で取ると、飛車取りに△6七銀と打って畳み掛けます。稲葉八段は飛車をかわして▲7七金と埋めますが、西田五段は角で金を食いちぎり、△7八金と打ち込みます。稲葉八段が▲1一角成と馬を作り、自陣に金を埋めて粘ると、西田五段は守りの桂を△7三桂と跳ねて攻撃に加えます。稲葉八段は▲5五馬と引いて後手陣に生じた隙を突き、▲6三角と打って寄せ切りました。
チーム稲葉:2勝 - チーム千田:2勝

五局目:出口若武六段 vs 藤本渚四段

チーム稲葉はリーダーの3連投も検討しましたが、出口六段が出陣して二局目と同じ顔合わせになります。先手の藤本四段が相掛かりに誘導し、先に飛先の歩を交換すると、出口六段は△6五銀と繰り出して先手の角頭を狙います。藤本四段が▲6八角~▲7七銀と組み替えると、出口六段は2分程の長考で△5四銀と引きます。藤本四段が2筋を継ぎ歩で攻めると、出口六段は△2三金と上がって凌ぎます。藤本四段が再度2筋を継ぎ歩攻めし、▲2三飛成と金を食いちぎって▲7四金と飛銀両取りに打つと、出口六段も△7四同飛と金を食いちぎり、△7五歩と銀取りに打ちます。藤本四段は▲7三歩成と桂を取り、銀を取らせる代わりに、"と金"で後手陣を乱して▲6一飛と金取りに打ち込みます。出口六段は銀を打って金に紐を付けますが、藤本四段は▲2一飛成と王手し、歩頭に▲1五桂と打って打ち歩詰めを回避して即詰みに討ち取りました。
チーム稲葉:2勝 - チーム千田:3勝

六局目:服部慎一郎六段 vs 藤本渚四段

チーム千田は勝った藤本四段が連投します。先手の服部六段が得意の矢倉を選択すると、藤本四段も得意とする雁木を組んで右玉に構えます。服部六段が3筋から仕掛けて飛車を3筋に寄せると、藤本四段は飛車を4筋に転回して反撃を狙います。服部六段は銀をぶつけて交換してから飛車を2筋に戻し、藤本四段が飛車を8筋に戻すと、1筋の歩を伸ばします。藤本四段が3筋の歩を伸ばして先手の角の利きを止めると、服部六段は一転して9筋を端攻めします。藤本四段は△8四銀と打って受けますが、服部四段は香の利きに銀を捨てて"と金"を作ります。藤本四段がもらった銀を△9四銀と打って辛抱すると、服部六段は▲6五歩と伸ばして角の利きを銀に当てます。藤本四段が7筋の歩をぶつけて銀を守り、△4四角と飛び出して先手玉を間接的に睨むと、服部六段も▲2八角と上がって後手陣を睨みます。藤本四段は△2四香から角を取って反撃しますが、服部六段は▲4三香と玉飛を田楽刺しにして飛車を取り寄せ切りました。
チーム稲葉:3勝 - チーム千田:3勝

七局目:出口若武六段 vs 千田翔太七段

タイスコアとなり、チーム千田はリーダーが出陣します。先手の千田七段が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となります。千田七段が4-3筋の歩を突き捨てて飛先の歩を交換し、香取りに▲4四角と打つと、出口六段は2分以上の長考で△3三歩と受けます。千田七段が5筋の歩を伸ばして銀に当てると、出口六段は更に1分程考えて△4三銀左と引いて角に当てます。千田七段は角を1筋に引き、出口六段が力強く△3四金と出ると、▲3五歩~▲2五桂と金を攻めます。出口六段が歩で飛車を吊り上げ、飛桂両取りに△3六角と打つと、千田七段は3筋に桂を成り捨て、▲3七飛とかわします。出口六段は馬を作り、千田七段も4筋から反発しますが、△3七歩成と"と金"を作ります。千田七段が銀2枚を取って後手陣に攻め込むと、出口六段は上部脱出を図ります。千田七段は時間に追われながらも懸命に後手玉に迫りましたが届かず、出口六段が入玉を果たして逃げ切りました。
チーム稲葉:4勝 - チーム千田:3勝

八局目:服部慎一郎六段 vs 千田翔太七段

後がなくなったチーム千田は、敗れたリーダーが意表を突く連投です。先手の服部六段が矢倉を選択し、千田七段は急戦調の駒組みから△4四銀と繰り出します。服部六段が4筋の位を取ると、千田七段は6筋から仕掛けて桂を跳ねます。服部六段も▲4五桂と跳ねて銀に当てますが、千田七段は構わず5,8筋へと戦火を拡げます。千田七段が飛車を角と刺し違え、△9九角成と香を取って馬を作ると、服部六段は銀桂交換してから▲6一飛と王手で打ち込み竜を作ります。千田七段は金取りに△4九角と打ち込み、服部六段が桂で金を守ると、△2七香~△2六桂と飛車を捕獲します。服部六段は▲2一歩成と後手玉に詰めろを掛けますが、飛車を取った千田七段は△7八銀から長手数の即詰みに討ち取りました。
チーム稲葉:4勝 - チーム千田:4勝

九局目:稲葉陽八段 vs 西田拓也五段

フルセットにもつれ込み、チーム稲葉は満を持してリーダーの登場です。振り駒で先手となった西田五段が三間飛車に振り美濃囲いに構えると、稲葉八段は左美濃に囲います。西田五段が▲7六飛と浮くと、稲葉八段は飛車を7筋に寄せます。西田五段は銀取りに▲5五歩と打って銀交換し、角もぶつけて交換し、▲7九角~▲1七角成と馬を作ります。稲葉八段は飛車取りに△5五銀と打ち、西田五段が7筋にかわすと、△5四角と追撃します。西田五段が9筋にかわすと、稲葉八段は△8七角成と馬を作り、飛車と刺し違えて△8八飛成と竜を作ります。西田五段は▲6八歩と打って竜の横利きを止めますが、稲葉八段は△7九飛と打ち込み、△3五桂と攻め掛かります。西田五段は馬で桂を食いちぎり、▲5二銀と反撃しますが、稲葉八段は構わず△5六角と打って攻め合います。西田五段が金銀交換してから"と金"を寄せて銀に当てると、稲葉八段は△4七歩成から馬を作ります。西田五段が"と金"で銀を剥がすと、稲葉八段は△5九飛成と金を食いちぎって踏み込みます。西田五段は自陣に金を投じて粘りますが、2分以上残していた稲葉八段は水を一口飲んでから△6八竜と王手し、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム稲葉:5勝 - チーム千田:4勝

第三試合の結果

チーム稲葉は、リーダーの稲葉八段が3戦3勝の活躍でチームをベスト4に導きました。チームが連敗スタートなった三局目から登場し、終盤の逆転勝ちで連投連勝して流れを引き戻すと、決着局では盤石の内容で快勝しました。服部六段と出口六段に前回大会のような勢いが見られませんが、2人が調子を取り戻せば連覇が近づいてきそうです。
チーム千田は、リーダーの千田七段が八局目に勝ってフルセットに持ち込む意地を見せましたが、頼みの西田五段が相手チームのリーダーに惜しくも連敗して力尽きました。新鋭の藤本四段はこの日も2勝する活躍を見せ、今後の公式戦での飛躍が期待されます。初出場ながらリーダーを務めた千田七段は、チームメイトや視聴者への気配りを絶やさず、最後まで楽しませてくれたと思います。

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