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ABEMAトーナメント2023 本戦2回戦第一試合

8月12日に、ABEMAトーナメント2023の本戦2回戦第一試合が放映されました。Bリーグ1位のチーム羽生「不動心」とCリーグ1位のチーム天彦「天辺堂」の顔合わせとなっています。


一局目:伊藤匠六段 vs 戸辺誠七段

チーム羽生は若手期待の伊藤六段が先陣を切ります。振り駒で後手となった戸辺七段が中飛車に振り美濃囲いに構えると、伊藤六段は2枚の銀を繰り出し、いきなり2筋の歩を突き捨てます。戸辺七段が6筋の歩を伸ばして銀を吊り上げ、角を引いて銀を狙うと、伊藤六段は▲4五銀とぶつけて交換します。戸辺七段は手堅く△4四銀と打ち直し、伊藤六段が▲5四銀打と桂に紐を付けると、△6四歩と銀取りに打ちます。伊藤六段は構わず▲4三銀成と飛角両取りに飛び込み、戸辺七段が桂を取ると、角銀交換して▲6四銀と前進します。戸辺七段は5筋の歩を伸ばし、伊藤六段が▲2一飛成と竜を作ると、△5七桂から金銀交換し、△4五桂と追撃します。時間に追われた伊藤六段は金を見捨てて玉を逃げ、▲5五角打と粘りますが、戸辺七段は飛車を角と刺し違え、桂交換して△5七金と攻め込みます。伊藤六段は▲6六香と打って後手玉に迫りますが、時間に余裕のある戸辺七段は落ち着いて即詰みに討ち取りました。
チーム羽生:0勝 - チーム天彦:1勝

二局目:梶浦宏孝七段 vs 三枚堂達也七段

チーム天彦は予定通り三枚堂七段が出陣します。先手の三枚堂七段が相掛かりに誘導し、梶浦七段は飛先の歩を交換します。三枚堂七段も飛先の歩を交換し7筋の歩も取ってから飛車をぶつけると、梶浦七段は飛車を引いて飛交換を避け、角を交換して局面を落ち着かせます。三枚堂七段が端攻めして▲1二歩と垂らすと、梶浦七段は△2二角と打って辛抱し、△1七歩成と飛び込みます。三枚堂七段は▲4五銀とぶつけて交換し、▲1三香成と香を入手してから▲4四歩と金交換し、角と玉の田楽刺しに▲4九香と打ちます。梶浦七段は先手の飛車を攻めますが、三枚堂七段は冷静に対処し▲6一角から挟撃態勢を作ると、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム羽生:0勝 - チーム天彦:2勝

三局目:羽生善治九段 vs 佐藤天彦九段

両チームとも順番通り、早くもリーダー対決となります。後手の佐藤九段が横歩取りに誘導し、羽生九段は横歩を取ると、角を交換して局面を落ち着かせます。佐藤九段は9筋と1筋の位を取り、羽生九段が2筋の歩をぶつけると、1筋の歩を突き捨ててから△5四角と打って左右を睨みます。羽生九段が▲6五角と合わせると、佐藤九段は角を交換して2筋の歩を取り込みます。羽生九段が7筋に桂を跳ねて後手からの角打ちに備えると、佐藤九段は歩で1筋の香を吊り上げてから飛車を2筋に回します。羽生九段は歩で飛頭を叩き、佐藤九段が桂で取ると、▲4五桂と跳ね違えます。羽生九段は左桂も▲6五桂と跳ね、銀取りに▲7四桂と打ち、▲6六角と打って飛角交換し、▲5三桂右成と飛び込んで寄せ切りました。
チーム羽生:1勝 - チーム天彦:2勝

四局目:伊藤匠六段 vs 戸辺誠七段

両チームとも順番を変えず、一局目と同じ顔合わせとなります。先手の戸辺七段が中飛車に振り穴熊を目指すと、伊藤六段は2枚銀を繰り出し△2四角と覗きます。戸辺七段が飛車を7筋に寄せて角成を防ぐと、伊藤六段は△6五桂と跳ねて角に当てます。戸辺七段が角を5筋に引いて▲7七桂と跳ねると、伊藤六段は桂を取らせる代わりに8筋に"と金"を作ります。戸辺七段が銀の両取りに▲5六桂と打つと、伊藤六段は△4五銀とかわします。戸辺七段は銀桂交換して▲5三銀と打ち込みますが、伊藤六段は取れる銀を取らずに△6七"と"と飛車に当てます。戸辺七段は飛車を引き、伊藤六段が△6六"と"と銀を取ると、金銀交換して▲5三金と打ち込みます。伊藤六段は自陣に銀を打って凌ぎ、戸辺七段が▲6二角成と馬を作ると、金を打って馬に当てます。戸辺七段は取られそうな桂を▲7三桂不成と飛金両取りに飛び込み、馬を取られる代わりに飛車を取ります。伊藤六段が1筋を端攻めすると、戸辺七段は飛車を8筋に回して竜を作ります。伊藤六段は時間に追われて△5六角と攻め掛かりますが、戸辺七段は▲2三桂と攻め合い、玉で取らせて▲3一飛と放り込みます。激しい攻め合いとなり、千日手を伊藤六段が打開したものの攻め切れず、戸辺七段が即詰みに討ち取りました。
チーム羽生:1勝 - チーム天彦:3勝

五局目:梶浦宏孝七段 vs 佐藤天彦九段

チーム天彦はリーダーが出陣し、前回大会のチームメイトの対決となります。後手の佐藤九段が横歩取りに誘導し、梶浦七段が横歩を取ると△3三角と上がります。佐藤九段も横歩を取り△2七歩と垂らすと、梶浦七段は飛車を8筋に回します。佐藤九段が2筋の歩を成り捨て、角を交換して△5五角と打ち直すと、梶浦七段は水を飲んでから▲6六角と合わせて飛車に当てます。佐藤九段は△2八角成と銀を取って馬を作り、梶浦七段が飛車を取ると、馬で香を取ります。梶浦七段は角を戻して1筋の香を狙いますが、佐藤九段は△3七桂不成と飛び込みます。梶浦七段が金を5筋にかわすと、佐藤九段は△4四香と打って角成を防ぎつつ先手の玉頭を狙います。梶浦七段は玉を7筋まで早逃げし、佐藤九段が馬で桂を取ると、▲8四角と王手し、▲2一飛と打ち込みます。佐藤九段が歩で角を追うと、梶浦七段は構わず▲8二歩と桂頭を叩き、角を取らせる代わりに桂を取って▲3四桂と銀取りに打ちます。佐藤九段は銀をかわすと金を前進して飛車を追い、銀を打って飛車と交換すると△8六桂から9筋を突破して寄せ切りました。
チーム羽生:1勝 - チーム天彦:4勝

六局目:羽生善治九段 vs 三枚堂達也七段

後がなくなったチーム羽生はリーダーが出陣します。先手の三枚堂七段が相掛かりに誘導し、羽生九段は飛車先の歩を交換すると、3筋の歩を伸ばして飛車を四段目に引きます。三枚堂七段は角道を開け、羽生九段が飛車を3筋に回すと、飛車を浮いて受けます。羽生九段は2分近い長考の末に角を交換して△4四角と打ち直し、三枚堂七段が4筋の歩を伸ばして角に当てると、構わず3筋の歩を伸ばします。三枚堂七段が角を取ると、羽生九段は桂を取って"と金"を作り、飛車をぶつけて交換してから銀取りに△4六飛と打ちます。三枚堂七段は4筋の歩を成り捨て、▲4四歩と金頭を叩き、羽生九段が金を3筋にかわすと、王手桂取りに▲4三角と打ち込みます。羽生九段は玉を6筋にかわし、三枚堂七段が▲2一角成と桂を取って馬を作ると、△4九飛成と金を取って竜を作ります。この竜はタダで取れますが、"と金"に迫られると受けが難しいと見た三枚堂七段が6筋に玉をかわすと、作戦会議室では伊藤六段が「ひぇー」と驚き、佐藤九段は「痛ーい」と叫びます。羽生九段は△8五桂と打って先手玉の退路を塞ぎ、一気に寄せ切りました。
チーム羽生:2勝 - チーム天彦:4勝

七局目:梶浦宏孝七段 vs 戸辺誠七段

チーム天彦はこの日好調の戸辺七段が出陣します。後手の戸辺七段が四間飛車に振って角を交換し、向かい飛車に振り直すと、梶浦七段は▲7七角と打ち直して、△3三角と受けさせます。梶浦七段は9筋の位を取り、戸辺七段が穴熊を目指すと、角を交換して▲5六角と打ち直し、▲3四角と飛び出し、4筋への角成と2筋への攻めを見せます。戸辺七段は△3二金と上がって受けますが、梶浦七段は2筋の歩を突き捨て▲2三歩と叩き、飛車を走ります。戸辺七段は△5二金と4筋の守りを補強しますが、穴熊は銀1枚となり、△2五歩と飛車の利きを遮ってから△2八角と打ち込みます。梶浦七段が1筋の歩を成り捨て香取りに▲1四歩と打つと、戸辺七段は△1九角成と香を取って馬を作り、△4五銀と上がって角に当てます。梶浦七段は2筋の歩を成り捨てて飛車を交換し、▲1三歩成と香を取って"と金"を作り、角を取らせる代わりに"と金"で金を取ります。戸辺七段は△1八飛と打ち込みますが、梶浦七段は▲3二飛と打ち込み、▲7二金と急所に放り込みます。戸辺七段は馬で銀を食いちぎり、自陣に金銀を投入して穴熊の堅陣を作ります。梶浦七段は香取りに▲4二金と打ちますが、戸辺七段は△5三角と間接的に先手の竜を睨んで金の動きを止めます。戸辺七段は5筋の歩を伸ばして先手陣の金を剥がし、送りの手筋で△8八金と打つと、守りに打った角までも攻撃に参加して即詰みに討ち取りました。
チーム羽生:2勝 - チーム天彦:5勝

第一試合の結果

チーム天彦は、戸辺七段が3戦3勝の活躍で勝利に大きく貢献しました。一局目に圧勝して流れを呼び込み、リーダー対決を落としてチームに嫌な空気が漂った四局目は大熱戦を制し、決着局では敗色濃厚の局面から粘っての大逆転でした。リーダーの佐藤九段と三枚堂七段も着実に白星を稼ぎ、強豪を圧倒したチーム力は次の準決勝にも期待を抱かせる内容だったと思います。
チーム羽生は、リーダーの羽生九段が2戦2勝と意地を見せました。チームとしては残念ながらここで敗退となりましたが、予選から通算6勝0敗の成績で、今回から設けられた個人賞(最高勝率賞)に大きく前進です。予選では好調だった伊藤六段がまさかの2戦2敗、梶浦七段も3戦3敗と、この日は白星に恵まれませんでしたが、次回大会での活躍を楽しみにしたいと思います。

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