見出し画像

第4回ABEMAトーナメント本戦2回戦第四試合

8月28日に第4回ABEMAトーナメント本戦2回戦の第四試合が行われました。予選Aリーグ1位のチーム藤井「最年少+1」と予選Dリーグ2位のチーム広瀬「早稲田」との対戦です。両チームとも本戦1回戦をシードされ、2回戦からの登場です。チーム藤井はメンバー3人が安定して勝ち星を挙げ、チーム成績2勝0敗で予選1位通過を果たしています。チーム広瀬は予選でチーム永瀬に敗れたものの、チーム成績1勝1敗で予選2位通過となりました。両チームともドラフト終了時に私が優勝候補に挙げた8チームの一角であり、好勝負が期待されます。

■一局目 伊藤匠四段 〇 vs ● 丸山忠久九段
チーム藤井は、注目の伊藤四段を初戦から起用します。先手の丸山九段が角換わりに誘導し、早速伊藤四段が6筋から仕掛けます。伊藤四段は持ち時間が6分を超えました。丸山九段も少し考えてから▲4五桂と跳ね、飛先の歩を交換します。丸山九段が1筋から端攻めすると、伊藤四段は手抜いて桂交換し、△5四桂~△6六角と攻め合いを選択します。伊藤四段は角を切って攻撃を継続しますが、丸山九段は▲7一角~▲1七角と2枚の角を後手の玉頭に利かせ数の攻めで突破します。しかし伊藤四段は一瞬の隙を突き△8八成香から竜を作って反撃し、即詰みに討ち取りました。

■二局目 高見泰地七段 〇 vs ● 北浜健介八段
チーム藤井は伊藤四段の連投も検討していましたが、少し休ませるために高見七段が出陣します。北浜八段はフィッシャー用に準備したという角道を止めた三間飛車に構えます。高見七段は慎重に時間を使いながら穴熊に囲い、北浜八段はあまり時間を使わずにミレニアムに囲います。北浜八段が5筋から仕掛け、銀交換後に△1九角成と馬を作ります。高見七段も▲5一飛成と竜を作りますが、北浜八段も自陣に金を打って固めます。高見七段は竜と馬を切って大きく駒損となりましたが細い攻めをつなぎ、そのまま即詰みに討ち取りました。

■三局目 藤井聡太二冠 〇 vs ● 広瀬章人八段
チーム藤井は自然に、チーム広瀬は消去法でオーダーを決め、注目のリーダー対決が実現しました。先手の広瀬八段が角道を止め、相雁木の将棋となりました。広瀬八段が3筋に飛車を寄せ飛先の歩を交換すると、藤井二冠も飛先の歩を突き捨て6筋から仕掛けます。広瀬八段が飛車を6筋に回して受けると、藤井二冠も飛車を6筋に回してお互いの戦力が集中します。藤井二冠は△8五桂から巧みに攻め駒を補充しながら攻め続け、広瀬八段は懸命に受け続けます。広瀬八段は4筋から逆襲しますが、藤井二冠は△7七歩成から寄せに入り長手数の即詰みに討ち取りました。

■四局目 伊藤匠四段 〇 vs ● 北浜健介八段
予選では無敗だったリーダーも敗れ、苦しくなったチーム広瀬は北浜八段に託します。後手の北浜八段は、二局目と同様に三間飛車でミレニアムに囲い、伊藤四段も穴熊に囲います。伊藤四段は7筋から仕掛けて銀交換し、角も交換します。伊藤四段が5分残しているのに対して、北浜八段は1分を切りました。伊藤四段は▲4四角~▲4一飛と打って後手玉に攻め掛かり、鮮やかに長手数の即詰みに討ち取りました。

■五局目 高見泰地七段 ● vs 〇 広瀬章人八段
4連勝のチーム藤井はジャンケンで勝った高見七段を送り出し、後がなくなったチーム広瀬はリーダーの出陣です。先手の広瀬八段が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となりました。高見七段は4筋に飛車を回すと、広瀬八段も4筋に飛車を寄せます。これを見た高見七段は駒音高く8筋に飛車を戻し、先手からの仕掛けを誘います。広瀬八段は誘いに乗って4筋から仕掛け、▲1七角と端角を打って後手玉を睨みます。高見七段は△5五角と打ち、角を取らせる間に先手の玉頭から攻め掛かります。広瀬八段が▲4三銀から反撃し、双方の玉が中段に逃げ出す難しい終盤戦となりました。最後は時計の叩き合いとなりましたが、広瀬八段が寄せ切りました。

■六局目 高見泰地七段 〇 vs ● 丸山忠久九段
チーム藤井は敗れた高見七段が気合で連投し、チーム広瀬はリーダーを温存し丸山九段の投入です。丸山九段は後手番で得意の一手損角換わりを採用します。高見七段は早繰り銀で対抗しますが、丸山九段は△3九角~△7五角成と馬を作ります。高見七段は3筋から反撃し▲5五角と急所に打ちますが、丸山九段は飛車の横利きを通して守ります。丸山九段は8筋から攻め掛かり、高見七段は▲8六金と打って手厚く守ります。丸山九段は相手の歩頭に銀が出る奇手を魅せますが、高見七段はその銀を取らずに玉を早逃げし、後手の玉頭から反撃します。最後はお互いに飛車を見捨てて寄せ合いとなりましたが、高見七段がわずかに速く即詰みに討ち取りました。

【チーム藤井 5勝 vs チーム広瀬 1勝】
チーム藤井は、メンバーが3人とも公式戦でも好調で、その勢いをフィッシャールールでも失うことなく一気に勝負を決めました。特に一局目と二局目に、伊藤四段と高見七段が苦しい将棋を制して流れを呼び込みました。藤井二冠は三局目に登場し、昨年2連敗していた広瀬八段とのリーダー対決になりましたが、昨年のことは一切口にせずに雪辱を果たしました。公式戦が忙しくフィッシャールールは予選以来だったようですが、予選全勝の広瀬八段に土を付けたのはさすがでした。
チーム広瀬は、相手のリーダーが登場する前に2局続けて接戦を落とし、三局目のリーダー対決も敗れて戦意喪失してしまいました。ここまで圧倒的な強さを魅せてきた広瀬八段の敗退は残念ですが、丸山九段と北浜八段もこの日は白星を挙げられず、相手の強さを称えるしかないのかもしれません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?