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第5回ABEMAトーナメント 予選Aリーグ第一試合

待ちに待ったABEMAトーナメントが今年も開幕しました。4月16日に放映された開幕カードは、優勝候補の一角チーム永瀬「川崎家」と、唯一昨年と全く同じメンバーで戦うチーム羽生「トワイライトゾーン」の顔合わせとなりました。

一局目:増田康宏六段 vs 佐藤紳哉七段

チーム永瀬はリーダーの信任が厚い増田六段が、チーム羽生は覚醒が期待される佐藤七段が先陣を切ります。先手の増田六段が序盤から工夫を見せ、力戦調の将棋となりました。佐藤七段が角頭に歩を叩き角交換しますが、増田六段は▲7七歩と傷を消し激しい戦いを回避します。増田六段は飛先の歩を交換して銀取りに五段目に引き、佐藤七段が銀を引くと▲7二歩と垂らします。増田六段は▲7一歩成と"と金"を作り、更に▲7四歩と桂頭を叩きます。佐藤七段は△6五桂と跳ね、△7七桂成から飛車を見捨てて先手陣の金銀を剥がします。早くも時間に追われた佐藤七段は残り3秒で△6九角と打ち込みますが、増田六段はいったん早逃げしてから▲7一飛と後手玉に迫ります。佐藤七段も△2七銀と打って挟撃態勢を作りますが、増田六段は▲4一角と詰めろを掛けます。佐藤七段は△2一金と自陣に投入して必死の抵抗を見せますが、増田六段は▲5九金から後手の角を取って自陣を安全にしてから寄せ切りました。
チーム永瀬:1勝 - チーム羽生:0勝

二局目:斎藤明日斗五段 vs 中村太地七段

両チームともリーダーを温存し、斎藤五段と中村七段の対決となりました。先手の中村七段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換します。斎藤五段はいったん引いた飛車を浮き、ひねり飛車の駒組みを進めます。斎藤五段が銀をぶつけて交換すると、中村七段は角を交換して飛車取りに▲5三角と打ちます。作戦会議室では羽生リーダーが「手の調子が良くなってきた」と話しています。中村七段が金取りに▲4一銀と打ち込むと、斎藤五段は歩で金を支えますが、更に▲6三歩の垂れ歩が厳しい一着となりました。斎藤五段は馬取りに▲6四銀と打ちますが、中村七段は銀を金と交換して▲6二金と打ち込みます。斎藤五段が先手の馬に働きかけると、中村七段は馬で金を食いちぎって▲7四金と後手玉に迫ります。斎藤五段は△9七角の王手から馬を作って粘りますが、中村七段は落ち着いて▲7三歩成から即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:1勝 - チーム羽生:1勝

三局目:永瀬拓矢王座 vs 羽生善治九段

両チームとも満を持してリーダーが登場します。先手の永瀬王座が相掛かりに誘導し、羽生九段が先に飛先の歩を交換します。永瀬王座は飛先の歩を交換し▲3四飛と横歩を取ります。羽生九段は先手の飛車が2筋に戻るのを防ぎますが、永瀬王座は▲2五桂と跳ねて桂交換し銀取りに▲5六桂と打ちます。羽生九段は先手の飛車を追い返して△6五銀とかわしますが、永瀬王座は2筋の継ぎ歩を見せて押さえ込みます。難しい中盤戦となりましたが、羽生九段が△7三桂と跳ねて王手飛車を消しつつ銀に紐を付けると、作戦会議室では中村七段が「将棋が格好いい」と感心しています。永瀬王座は▲2一角と打ち込みますが、羽生九段は飛車取りに△4三角と打って受けます。永瀬王座は角で銀を食いちぎって竜を作りますが、羽生九段は竜を追い返してから△5五歩と突き先手の桂も捕獲します。駒損となった永瀬王座は自陣に惜しげもなく持ち駒を投入して粘りに行きますが、羽生九段は竜を作って1枚ずつ後手陣の金銀を剥がして寄せ切りました。
チーム永瀬:1勝 - チーム羽生:2勝

四局目:増田康宏六段 vs 佐藤紳哉七段

先後を入れ替えて、一局目と同じ顔合わせになりました。先手となった佐藤七段は宣言通り矢倉に誘導し、増田六段は急戦調の駒組みから雁木に組み右玉に構えます。お互いに陣形を整備し、佐藤七段が▲9八香と穴熊を目指した瞬間、増田六段は△6五歩と仕掛けます。佐藤七段が銀挟みで銀を捕獲すると、増田六段は歩の連打で△4七歩成と"と金"を作ります。増田六段は"と金"で銀を取り飛角両取りに△2七銀と打ちますが、佐藤七段は▲3三飛成と角と交換して▲1三角とかわします。増田六段は△4九飛と打ち込みますが、時間に追われた佐藤七段も▲4三角と打って攻め合います。増田六段は1分30秒以上残していましたが、あまり時間を使わず△8六歩~△8四香と先手の玉頭から攻め掛かり、鮮やかに即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム羽生:2勝

五局目:斎藤明日斗五段 vs 中村太地七段

お互いに順番を変えず、先後を入れ替えて二局目と同じ顔合わせになりました。先手の斎藤五段が相掛かりに誘導すると、中村七段は先に飛先の歩を交換します。斎藤五段が飛車取りに▲6六角と出ると、中村七段は△7四飛とかわして縦歩を取ります。中村七段は積極的に△9三桂と跳ね、少考して△9五歩と仕掛けます。斎藤五段が▲8六歩と突いて後手の桂跳ねを防ぐと、中村七段は△9四飛と回って9筋突破を狙います。斎藤五段も▲8五飛と回って飛成を狙いますが、中村七段は構わず△9七歩成と攻め込みます。斎藤五段は▲8四桂と金取りに打ち、▲9二桂成と成り捨てて▲8一飛成と竜を作ります。中村七段は自陣を受けずに△9八"と"と香を取りますが、斎藤五段は▲3三角成と桂を食いちぎって▲3一竜と銀を取ります。後手陣はかなり危険な状態に見えますが、中村七段は△6六桂~△7八桂成と銀を取り△9九竜と攻め込みます。斎藤五段は詰ませに行きますが、中村七段はギリギリでかわして上部に脱出します。斎藤五段は竜を自陣に引き付けて入玉を阻止しますが後手玉は捕まらず、無念の投了となりました。
チーム永瀬:2勝 - チーム羽生:3勝

六局目:永瀬拓矢王座 vs 羽生善治九段

両チームとも順番通り、先後を変えてリーダー同士の再戦となりました。先手の羽生九段が相掛かりに誘導し、先に飛先の歩を交換します。永瀬王座も飛先の歩を交換しますが、羽生九段は▲8六飛といったんぶつけてから▲7六飛とひねり飛車に構えます。永瀬王座は△8七歩成と成り捨ててから△6六歩と伸ばしますが、羽生九段は1分以上考えて▲8八金と引いて自陣を整備します。永瀬王座が飛車をぶつけると、羽生九段は更に1分程考えて▲8四飛とかわします。永瀬王座は△7一金と寄って桂に紐を付け、1分以上考えて桂取りに△7六歩と打ちますが、羽生九段は▲6五桂とかわしてから▲6三竜と銀を取ります。永瀬王座も2枚の"と金"を作って先手陣に攻め込みますが、羽生九段は竜を飛車と交換し金銀両取りに▲5二飛と打ち込みます。永瀬王座は構わず"と金"で銀を剥がして△6九飛と詰めろで打ち込むと、羽生九段は▲5九銀と打って詰めろを逃れてから▲7二飛成と竜を作ります。永瀬王座は△2六桂~△3八桂成と銀を剥がしてから△2五竜と回って先手の玉頭から攻め掛かりますが、羽生九段は▲4一銀と打って攻め合います。最後は永瀬王座が△6七角成と挟撃態勢を作って寄せ切りました。
チーム永瀬:3勝 - チーム羽生:3勝

七局目:増田康宏六段 vs 中村太地七段

タイスコアとなりチーム羽生が順番を変え、この日2連勝と好調同士の対決が実現しました。先手の増田六段が角換わりに誘導しましたが、中村七段は角道を開けず力戦調の将棋になりました。中村六段が6筋の歩を突くと、増田六段は飛先の歩を交換し6筋の歩も取ります。中村七段は4筋の歩も突きますが、増田六段は誘いに乗らず陣形を整えます。中村七段は8-7筋の歩を突き捨ててから△6五銀と出ますが、増田六段は飛車取りに▲5五角と出て反発します。中村七段も△7五角と飛び出し、難解な局面を迎えて両者小刻みに時間を使います。増田六段は▲2二歩と手裏剣を飛ばして後手陣を壁金の悪形にしてから▲7七桂と跳ねて銀桂交換しますが、中村七段も角を引いて角交換し△1五角と間接王手飛車を掛けます。増田六段が歩で飛車を支え、両者が激しく駒を取り合ってから先に▲6二銀と詰めろを掛けます。後手陣は壁金のため受けが難しく、中村七段は先手玉に迫りましたが届かず無念の投了となりました。
チーム永瀬:4勝 - チーム羽生:3勝

八局目:斎藤明日斗五段 vs 佐藤紳哉七段

後がなくなったチーム羽生ですが、リーダーの一存で佐藤七段に託します。後手の斎藤五段が横歩取りに誘導し、佐藤七段は受けて立ち飛車を引いて2筋に戻します。斎藤五段は用意してきた作戦なのか時間を6分以上に増やし、飛車を角と交換して△5五角打と2枚替えと香取りを狙います。佐藤七段は早くも時間を使って▲7七桂と2枚替えを受けますが、斎藤五段はノータイムで△8七歩と追撃します。佐藤七段が残り2分を切って▲8七同金と取ると、斎藤五段は△1九角成と香を取って馬を作ります。佐藤七段が残り30秒まで考えて桂取りに▲8六飛と打つと、斎藤五段は初めて2分程時間を使って△7一金と受けます。佐藤七段は▲8二歩と打って"と金"を作りますが、斎藤五段は△7三桂~△8五歩と飛車の利きを遮断します。佐藤七段が▲8五同桂と取ると斎藤五段は更に△8三香と追撃します。お互いに金を取り合ってから、斎藤五段が△7七角成ともう1枚の角も成り込むと、佐藤七段も桂取りに▲7四歩と伸ばし"と金"を作ります。難しい局面となって斎藤五段の残り時間が佐藤七段より少なくなり、チーム羽生の作戦会議室が盛り上がってきました。斎藤五段は△1七馬と引いて詰めろを掛けますが、佐藤七段は玉を早逃げしてから▲5三"と"と寄って詰めろを掛けます。斎藤五段が△6五歩と飛車の利きを止めると、佐藤七段は▲2二飛成から詰ませに行き、かなり王手が続きましたが届かず無念の投了となりました。
チーム永瀬:5勝 - チーム羽生:3勝

第一試合の結果

チーム永瀬は、増田(康)六段が3戦3勝の大活躍でチームの勝利に貢献しました。リーダーの永瀬王座も、リーダー同士の対決を1勝1敗で責任を果たしました。斎藤(明)五段も決着局となった八局目には、序盤から作戦勝ちして逃げ切りチームを勝利に導きました。チームとして唯一の懸念材料だった新メンバー斎藤(明)五段が1勝を挙げたことで、次戦以降伸び伸びと指せれば優勝候補として盤石の体制になりそうです。
チーム羽生は、中村(太)七段が連勝の好スタートを切りましたが、七局目に連勝同士の対決に敗れてチームとしても力尽きました。リーダーの羽生九段は相手のリーダーと互角に渡り合いましたが、悲願の1勝を目指す佐藤(紳)七段がこの日も白星に恵まれず苦しい状況になっています。しかし決着局では序盤の失敗で苦しい状況からあわや逆転かという粘りを見せ、次戦以降に期待を抱かせる内容だったと思います。

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