見出し画像

第5回ABEMAトーナメント 予選Aリーグ第二試合

4月23日に、ABEMAトーナメントの予選Aリーグ第二試合が放映されました。第一試合で勝利を収めたチーム永瀬「川崎家」と前回とはメンバーを一新したチーム三浦「シンジンオウ」の顔合わせとなりました。
※本稿では、収録当時の段位で記します。

一局目:斎藤明日斗五段 vs 三浦弘行九段

チーム三浦は、リーダーが自ら先陣を切ります。後手の三浦九段が横歩取りに誘導し、斎藤五段は金で角頭を守る前に▲5八玉と上がる工夫を見せます。三浦九段は思わず1分程時間を使い、1筋の歩を突いて激しい順を回避します。三浦九段が△6二玉と右玉に構えると、斎藤五段は横歩を取ってから▲7七角と上がり、後手からの飛先の歩交換を防ぎます。三浦九段は4筋の歩も取らせて、代償に金を前進させ先手の飛車と角に圧力を掛けます。斎藤五段は角で金を食いちぎり、三浦九段が銀冠から穴熊への組み換えを目指すと、▲8四金と打って銀と交換し余裕を与えません。斎藤五段が4筋に飛車を回して▲4一飛成と王手で竜を作ると、三浦九段は金を打って竜を追い、△3九角と打ち込んで攻め合います。斎藤五段が8筋に香を打って金と交換すると、三浦九段は角で銀を食いちぎり△6九銀と王手で先手玉に迫ります。時間に追われた三浦九段は、更に角を金と刺し違えて攻め込みますが届きません。斎藤五段が落ち着いて8筋に"と金"を作ると、三浦九段の投了となりました。
チーム永瀬:1勝 - チーム三浦:0勝

二局目:斎藤明日斗五段 vs 池永天志五段

チーム永瀬は、勢いに乗る斎藤五段が連投です。後手の斎藤五段が角道を開け、一局目に続いて横歩取りの将棋となりました。池永五段が1筋に続いて4筋の位を取ると、斎藤五段は角を交換して△3三桂と跳ね4筋の歩を狙います。池永五段は7筋に歩を打って後手の飛車を7筋に呼んでから、飛車取りに▲5六角と打ちます。斎藤五段は1分程考えて飛車を5筋に回し、更に2分程考えて△8八歩と打って先手陣を乱そうとしますが、池永五段は手抜いて▲7三歩成と先に"と金"を作って攻め込みます。斎藤五段はやむなく銀で"と金"を取り、池永五段が8筋の金を払うと銀を戻します。斎藤五段は飛車を2筋に回して飛車を取り合い、先手陣に飛車を打ち込み△7九飛成と竜を作ります。池永五段は▲4四歩~▲3四角と後手陣に迫りますが、作戦会議室で永瀬王座が「あれ、これ詰んでる?」という声とともに斎藤五段は△4六桂と王手します。取れば頓死でしたが、池永五段は玉を寄って逃げると、斎藤五段は角で王手してから開き王手で馬を作り自陣に引き付けます。池永五段は角を見捨てて飛車を後手陣に打ち込んで反撃し、▲6二飛成と金を取って王手で竜を作ります。双方とも時間に追われながら、どちらが勝つのかわからない大熱戦となりました。最後は池永五段が▲3四桂と打って詰めろを掛けると、斎藤五段は△2八歩成から連続王手で先手玉に迫りましたが届かず無念の投了となりました。
チーム永瀬:1勝 - チーム三浦:1勝

三局目:増田康宏六段 vs 伊藤匠四段

チーム永瀬はエースとして増田六段が、チーム三浦は予定通り伊藤四段が出陣します。先手の増田六段が角換わりに誘導しますが、伊藤四段は角道を止めて雁木調に構えます。両者とも時間を6分以上に増やし、増田六段は少し考えて4筋から仕掛けます。増田六段は更に3筋と1筋の歩も突き捨ててから、角を交換して▲4五桂と跳ねます。伊藤四段が銀で桂を食いちぎり△4七歩と金頭を叩くと、増田六段は▲4九金と引いて敢えて飛金両取りに桂を打たせます。増田六段は両取りを手抜いて銀取りに▲3四歩と打ち、飛車を取らせて銀を取ります。増田六段が金取りに▲3四銀と打つと、伊藤四段は少し時間を使って△4二金と寄って自陣を固めます。増田六段は金桂両取りに▲5一角と打つと、伊藤四段は△6五桂と跳ねて桂を逃がします。増田六段がそれでも▲7三角成と飛車取りで馬を作ると、伊藤四段は飛車を見捨てて攻防に△5五角と勝負手を放ちます。作戦会議室の永瀬王座が「えーっ、何それ」と声を挙げますが、増田六段が手堅く▲6六銀と打つと、永瀬王座は更に大きな声で「えーっ」と叫びます。伊藤四段はやむなく△1九角成と香を取りますが、増田六段が馬を交換して▲6二飛と打ちこみます。伊藤四段は△5二香と打って粘りますが、増田六段が再度▲5一角と打つと残り3秒まで考えて投了を告げました。
チーム永瀬:2勝 - チーム三浦:1勝

四局目:永瀬拓矢王座 vs 三浦弘行九段

チーム永瀬はリーダーが満を持して登場し、リーダー対決が実現しました。先手の三浦九段が相掛かりに誘導し、飛先の歩を交換します。永瀬王座も飛先の歩を交換した瞬間、三浦九段は1筋から仕掛けます。永瀬王座が桂を活用して先手の飛車を2筋に追い返すと、三浦九段は少し考えて再び2筋の歩を合わせます。永瀬王座が角を交換してから△3三桂と跳ねると、三浦九段はいったん飛車を引きます。永瀬王座が△2四歩と取ると、三浦九段は▲1四歩と打って香を吊り上げてから▲2四飛と走ります。永瀬王座が桂取りに△2八歩と打つと、三浦九段は取れる香を取らずに▲2一飛成と飛び込みます。永瀬王座は△2九歩成と桂を取りますが、三浦九段は▲2三歩と垂らして攻め合います。作戦会議室では池永五段と伊藤四段が「おーっ、大丈夫ですか」と声を上げています。永瀬王座は悠々と水を飲んでから△4五桂と跳ね、三浦九段が"と金"を作ると△1三角と打ちます。三浦九段が▲4六歩と5七への角成を防ぐと、永瀬王座は焦らず角で"と金"を取り除きます。三浦九段は▲8七銀と上がって2枚替えを防ぎますが、永瀬王座は△1九"と"と香を取り△4六香と打って銀と交換します。永瀬王座は取った銀を自陣に打って補強すると、△9五桂から先手陣の左辺を崩しに掛かります。三浦九段も▲5六香~▲7三歩成と攻め合い▲5三桂成で後手玉を吊り上げますが、永瀬王座は△5五桂の王手から寄せ切りました。
チーム永瀬:3勝 - チーム三浦:1勝

五局目:増田康宏六段 vs 池永天志五段

この試合で1勝を挙げている、好調の2人の顔合わせになりました。先手の増田六段が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となりました。増田六段が▲4五桂と仕掛けると、池永五段は銀を引いて受けます。増田六段が6筋の歩も突き捨て▲5五銀と前進すると、池永五段は△3三桂とぶつけます。増田六段が少し考えて▲1八角と遠見の角を打つと、池永五段は△8二飛と浮いて角のラインからずらします。増田六段が飛先の歩を交換すると、池永五段は力強く△2三金と上がります。増田六段は▲6四歩と打って銀を引かせてから▲3三桂成と桂を交換しますが、池永五段は△3三同玉と顔面受けで応じます。池永五段は金取りに△3六桂と打って角道を遮断すると、角頭を狙って1筋から端攻めを決行します。増田六段は▲3七桂~▲2五歩で後手の金を押さえ込みますが、6分以上時間を残していた池永五段は1分程考え、歩で先手玉のコビンを開け王手で△5五角と打ちます。増田六段は銀を引いて受けますが、池永五段は△8五桂と跳ねて追撃します。増田六段が金取りに▲4五銀と引くと、池永五段は更に1分半程考えて△4四歩と突きます。増田六段は銀を金と交換して▲2九角と引き、押さえ込まれていた角の活用を図ります。増田六段は▲6五角~▲5六角と王手し角取りに▲4七桂と打ちますが、池永五段は構わず△6九銀と攻め合います。増田六段は角を取ってから▲6五角と出て王手し、池永五段が銀を打って避けると▲2一角と打って追撃します。池永五段は△7八銀成から銀桂を金2枚と交換しますが攻めが続かず、増田六段は▲3四桂から寄せ切りました。
チーム永瀬:4勝 - チーム三浦:1勝

六局目:斎藤明日斗五段 vs 伊藤匠四段

後がなくなったチーム三浦はエース伊藤四段を投入し、兄弟弟子の対決が実現しました。お互いに角で飛先の歩交換を拒否し、相居飛車の力戦型の将棋となりました。先手の伊藤四段が矢倉の陣形にすると、斎藤五段は雁木調の駒組みから右玉に構えます。伊藤四段が▲3五歩と仕掛けますが、お互いに放置して間合いを測ります。斎藤五段の残り時間が早くも30秒を切り△6二金と引き締めると、伊藤四段は▲3四歩と取り込み銀交換に成功します。伊藤四段が▲3四銀と攻め掛かると、斎藤五段も△6五歩と突いて反撃します。伊藤四段が銀を犠牲に竜を作ると、斎藤五段は竜取りに△3三銀と打ちます。伊藤四段が構わず▲8四桂と王手すると、斎藤五段は残り1秒まで考えて飛車で取ります。伊藤四段は▲6二竜と金と刺し違えてから▲8四角と飛車を取ります。斎藤五段は自陣に飛車を打って角を追い返して粘りますが、伊藤四段は▲6四歩で銀を吊り上げてから角銀両取りに▲5二金と打ちます。斎藤五段は△5一銀と打って徹底抗戦しますが、伊藤四段は金で角を取ってから▲3二飛と打ち竜を作ります。斎藤五段が角取りに△4五歩と伸ばすと、伊藤四段は角で銀を食いちぎって▲6四歩と垂らします。斎藤五段は攻防に△5五角と打って△8六歩から攻め掛かりますが、伊藤四段が▲7九玉と引くと攻めが続かず△6四角と垂れ歩を取り払います。伊藤四段は▲5六桂と打って角を追い、▲7三歩~▲7二角と後手玉に迫ります。伊藤四段は駒得を拡大してから飛取りに▲5三角と打って寄せ切りました。
チーム永瀬:4勝 - チーム三浦:2勝

七局目:永瀬拓矢王座 vs 伊藤匠四段

チーム三浦は勝った伊藤四段が連投し、チーム永瀬はリーダーが迎え撃ちます。先手の永瀬王座が角換わりに誘導し早繰り銀を見せると、伊藤四段は腰掛け銀に構えます。永瀬王座が3筋から仕掛けますが、伊藤四段も8筋から反撃し飛車取りに△6四角と打ちます。永瀬王座が角を合わせると、伊藤四段は△5五銀~△3六歩と角を追います。お互いに研究充分という雰囲気で、時間を5分以上に増やしています。永瀬王座は角を銀と刺し違えて角取りに▲4六銀と引くと、伊藤四段も角を見捨てて△4四銀と出ます。永瀬王座が取れる角をすぐには取らずに▲5六銀と力を溜めると、伊藤四段は1分以上考え△4六角と銀を食いちぎります。伊藤四段は飛車取りに△3七銀と打ち銀桂交換して△6四桂と打ちますが、永瀬王座は銀を見捨てて▲6六銀と歩を払います。永瀬王座は▲6三歩と打って金を下がらせてから、2分以上考えて▲3四桂と王手します。伊藤四段が△3三玉と上がってかわすと、永瀬王座は▲5五角~▲7三角成と桂を取って馬を作り、伊藤四段は△4四角~△6六角と銀を取ります。永瀬王座が角取りに▲7七銀と打つと、伊藤四段は△6七歩と打って玉を吊り上げてから飛車取りに△3八銀と打ちます。お互いに角と飛車を取り合い、伊藤四段が王手で△6九飛と打ち込み馬を作りますが、永瀬王座も"と金"を作って▲6一"と"と金を取り馬を作って飛車を追います。永瀬王座は▲4五金と打って後手玉の上部脱出を防いでから攻め掛かり、王手飛車取りから飛車を奪って寄せ切りました。
チーム永瀬:5勝 - チーム三浦:2勝

第二試合の結果

チーム永瀬は、永瀬王座と増田(康)六段がともに2戦全勝の活躍で、斎藤(明)五段に3局の経験を積ませながらの圧勝となり予選の1位通過を決めました。特に増田(康)六段は第一試合から通算5戦5勝と絶好調で、永瀬王座との二枚看板となっています。若い斎藤(明)五段が本戦までに覚醒すれば、有力な優勝候補ということができると思います。
チーム三浦は、リーダーの三浦九段が2戦2敗とチームに勢いをもたらすことができませんでした。池永五段と伊藤(匠)四段が1勝ずつ挙げて意地を見せましたので、次の第三試合で予選突破を目指して欲しいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?