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「観る将」が観た第4回ABEMAトーナメント予選Aリーグ第一試合

いよいよ楽しみにしていたABEMAトーナメントの予選が開幕しました。予選は3チームずつ5つのリーグに分かれて総当たりとなるので、15週間掛けて本戦に進出する10チームを決めていくことになります。4月10日に放映された第一試合は、チーム藤井「最年少+1」対チーム稲葉「加古川観光大使」の顔合わせとなりました。

■高見七段vs稲葉八段
チーム稲葉は初戦からリーダー投入です。先手の稲葉八段が相掛かりに誘導しますが、高見七段は角を切って攻め込み主導権を握ります。稲葉八段は落ち着いて自陣を整備し、3筋から仕掛けます。時間が切迫してきた高見七段は、桂で相手の金を剥がし敵陣に角を打って攻め合いに出ますが、時間を3分以上残していた稲葉八段はここで腰を落として考え、角を打って挟撃体制を作り、相手の飛車を取って寄せ切りました。

■伊藤(匠)四段vs久保九段
注目の伊藤四段のデビュー戦です。先手の伊藤四段が居飛車に、久保九段がごきげん中飛車という戦型になりました。伊藤四段は少し緊張感のある面持ちですが、若手らしく積極的に駒を前に進める指し手を続けます。久保九段も振り飛車らしい指し回しで決め手を与えません。難解な中盤戦となりましたが、最後は伊藤四段が残り1秒まで考えて飛車角を清算して踏み込み、長手数の即詰みに討ち取りました。

■藤井二冠vs船江六段
初参加の船江六段は初戦から難敵との対局となりました。先手の船江六段が雁木模様の駒組みを進め、藤井二冠も同型に組みましたが玉を中住まいに構えます。先に藤井二冠が7筋から仕掛けると、船江六段は徹底的に受ける将棋となりました。船江六段が受け切ったかと思われた局面で、藤井二冠はいったん玉を早逃げして余裕を作ると、再び怒涛の攻めを見せ寄せ切りました。

■高見七段vs久保九段
後手の久保九段が三間飛車から角交換すると、高見七段はミレニアムの堅陣に囲います。久保九段は相手が囲いに手数を掛ける間に、3筋から攻撃態勢を整え仕掛けます。久保九段の攻めが好調に見えましたが、高見七段は端から反撃し王手飛車を炸裂させます。更に二度目の王手飛車を掛けると、飛車を取らずに即詰みに討ち取る快勝となりました。

■藤井二冠vs船江六段
チーム藤井は1勝3敗となった相手がエース稲葉八段を投入すると読んで藤井二冠を投入しましたが、チーム稲葉も相手が伊藤四段で来ると読んで船江六段を投入しました。お互いに読みが外れて第三局と同じ顔合わせになりました。先手の船江六段は、矢倉から急戦を仕掛けます。藤井二冠が相手の角頭を狙った瞬間、船江六段が桂の利きに▲6五銀と打つ強手を放つと、藤井二冠は角を引き金を逃げて追い込まれます。船江六段は緩みなく藤井玉を受けなしに追い込み、藤井二冠の王手をかわして勝ち切りました。

■伊藤(匠)四段vs船江六段
チーム稲葉は、藤井二冠に勝って勢いのある船江六段を連投です。後手の船江六段が横歩取りに誘導し、伊藤四段は解説の井出五段を驚かせる▲8三歩という珍しい手を放っていきなりの乱戦になりました。激しく駒を取り合った後、なんと伊藤陣の金銀はほぼ初形に戻り、船江六段は大駒を打つ隙がありません。伊藤四段は左右からの挟撃体制を作って寄せ切り、時間を3分以上残しての完勝となりました。対局後に伊藤四段は「研究していた形」と話し、かなり緊張も解けてきたように思います。

■高見七段vs稲葉八段
後がなくなったチーム稲葉は満を持してリーダーの稲葉八段を投入し、本日の1局目と同じ高見七段との顔合わせになりました。先手の稲葉八段が角換わりに誘導し、早繰り銀で3筋から仕掛けます。いったん収めると今度は高見七段が6筋から仕掛けます。中盤の難所に差し掛かり、稲葉八段が2筋から仕掛けると、高見七段も8筋から反発し敵陣に△3九角と打ちこんで勝負に出ます。稲葉八段が自陣に打たれた銀と角を取る間に、高見七段は9筋の歩を伸ばし突破し、更に9筋の香を取って3筋に打ち挟撃体制を作ります。最後は△6五銀打が決め手となり、高見七段が緩みなく即詰みに討ち取り、1局目のリベンジを果たしました。

【チーム藤井 5勝 vs チーム稲葉 2勝】
チーム藤井が5勝2敗でチーム稲葉を破り、予選突破に向け幸先良い出だしを切りました。強豪が集まるAリーグにおいて、チーム藤井の鍵を握ると思われた伊藤四段が想像を超える大活躍を見せました。二局目に初登場すると久保九段を破る金星でチーム成績をタイに戻し、六局目は藤井二冠のまさかの敗戦で嫌なムードが漂う中、驚愕の研究手順を披露して圧勝しチームの勢いを取り戻しました。来週は前回伊藤三段(当時)が練習相手を務め、前回と同じメンバーで再結成したチーム三浦との対戦が放映されます。チームの予選突破に向け、伊藤四段が再び輝けるのか注目したいと思います。
チーム稲葉は、船江六段が藤井二冠を破る金星を飾りましたが、全体として2勝に終わりました。しかし予選突破の可能性はまだ充分残されています。稲葉八段は、前回の予選の初戦でチームが0勝6敗に終わりましたが、二戦目で5連勝してあと1勝で予選突破という状況を経験しています。チーム三浦戦でも「加古川観光大使」の結束力を発揮してくれることを期待しています。

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