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VOICE

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新型コロナウィルスからの再始動。 地域や劇場は次の時代に向けて、どのように歩むのか。 演劇人や地域社会を考える人たちの眼差し、【声】を綴ります。
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記事一覧

【VOICE】鈴木励滋(生活介護事業所カプカプ所長)さんより

「地域と共に歩む文化拠点」とは 障害福祉とアートの親和性についてはこれまでも書いてきた。 それはパラリンピックと連動するような「障害×アート」のことではなくて、わたしが目指している障害福祉とわたしが好んで観ているアートが通底しているという話。 わたしが「障害」という言葉を用いる際には、「社会的不利益」のことを意識している。機能や構造やもっといえば姿かたちに違いがあることとか、何かができなかったり苦手だったりすることそのものを「障害」と見なして治療したり訓練で克服させたり

三坂恵美(合同会社Booster)さんより

チケットの入っていない財布 2020年、今まで働いていた会社を退職し、「がんばるひとを後押しする」を理念として、合同会社Boosterを設立しました。 主な業務としては、インディペンデントシアターの制作業務受託とライトアイ折込代行の運営受託。2020年4月から業務開始、というところで、新型コロナウイルス感染症による影響を受けました。 インディペンデントシアターの制作業務については年間契約で、劇場が休館していてもやることはあるので予定通りの収入でしたが、ライトアイ折込代行に

小川絵梨子(演出家・翻訳家)さんより

想いをともに 学生時代から部活動として演劇を始めてはいたものの、本格的に演出を学んだのはアメリカであり、帰国後の日本での創作活動もまだ10年ほどという私は、日本の演劇シーンに関してまだまだ学ぶべきことが多い状態です。殊に国内各地域にどのような劇場があり、どんなアーティストや地域の方々と協働して舞台芸術を盛り立てているかを知る機会は足りておらず、全国小劇場ネットワークさんの活動、そこから教えていただくことが非常に多いと感じています。  スタッフ・キャストが創作に邁進する姿勢は

中村陽一(立教大学)さんより

なぜ引き寄せられるように小劇場に足を運ぶのだろう? 私の場合、社会デザインなどという、何か言っているようでその実内容は曖昧なままにも見えかねないことを追究し続 けているせいか、「現場性」とか「歴史性」とか「場所性」に出会いたいからかもしれない。 もっとも、それならまさに直接現場に行けということだし、それはそれでやっているので、 むしろ抽象的な惨状に対抗するには一旦抽象寄りに思考するしかないということかもしれ ない。それを生身の身体を通じて表現するというと

戸舘正史(松山ブンカ・ラボ)さんより

客席があり舞台がある。プロセニアムアーチ/額縁の向こうで俳優は嘘を演じる。日常に身を置く観客は舞台の非日常的な虚構の世界を眺める。そんな古典的劇場観があります。当然ながら今わたしたちが支えようとしている小劇場なる空間/場所にも客席があるし舞台があります。小劇場がプロセニアムアーチであることは構造的にあまりないと思うけど、外側と内側を分け隔てる何かがあります。もちろん外側とは地域社会のことです。 たぶん「地域と共に歩む文化拠点」としての小劇場は、舞台で演劇をする人や客席で演劇

大池容子(うさぎストライプ)さんより

“情報”からこぼれ落ちてしまうものを模索する 私たちの劇団うさぎストライプは4月3日から、こまばアゴラ劇場で『いないかもしれない』という作品を上演する予定でした。 公演中止を発表した4月2日の時点で、美術や照明、音響の機材なども全て仕込み終わっていましたが「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 」の状況分析、提言を受けて全公演中止の判断に至りました。 上演は叶いませんでしたが、劇場を使って無観客のゲネプロを映像収録させていただくことができました。換気やマスクの着用など

松浦茂之(三重県文化会館)さんより

今小劇場を含む劇場を取り巻く社会環境は、未曾有の危機にあります。未曾有というのは、今目の前の危機と同時に将来展望が描けないという不安があまりにも大きいからです。3密、座席数の削減、そしてそもそもそんな場所に行くべきではないというネガディブな顧客心理・・・数え上げたらキリがありません。同時に新生活様式と言われる他人との接触を極力避ける生き方、なんでもオンラインやバーチャルに寄せていく傾向はどんどん加速しています。 と、ここまで悲観的なことばかりを挙げましたが、それでもなお私は

平田修二(シアター8・1サッポロ開設準備室事務局長)さんより

街から演劇公演がなくなり、もう3ヶ月が経とうとしていますね。 ボクが今関与している二つのこと。一つは、地元江別市(札幌の隣の12万都市)での演劇公演。今年は札幌座『フレップの花、咲く頃に』が8月にあるのですが、そのプレイベントであるトークショーも4月から5月、そして6月へと延期しました。6月にのびのびと開催できるか心配です。もう一つは、200席の新劇場シアター8・1サッポロ(2024年完成予定)の準備。設計も終わり、間もなく工事に入ります。運営には多くに方々のご支援が必要な

永山智行(劇団こふく劇場)さんより

小さきものからはじまる物語 どこでもいい。あなたのその場所で、こうつぶやいてみてもらいたい。 「わたしは、いま、ここに生きている」と。  その言葉に偽りのある者は誰もいないだろう。けれど、わたしが「わたしは、いま、ここに生きている」と口にできる時間には必ず限りがある。 人はなぜ生きるのか、という古くて新しい命題にあえて答えるならば、「わたしは、いま、ここに生きている」を実感するためだ、と言おう。けれど、人はただ生きていさえすれば「わたしは、いま、ここに生きている」を

VOICE | まえがき

「再開は、劇場の新たな出発・・」 新型コロナウイルスの影響により、一旦活動停止を余儀なくされた地域の民間小劇場と、その共働者である、演劇人、舞台芸術に関わるアーティストやスタッフ、観客、地域のみなさん、地域社会について考える人たちが、ともに、それぞれの場所から、この次の社会を見出していく。 その「眼差し」を共有する場を設けたいと思いました。 どのくらいの期間になるのか、しばらくの間、ウイルスの全世界的な状況も関係して、内から外から駆り立てられるように、元に戻るのでもなく