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医療情報のウソ、見抜けますか? ネットで正しい情報を集める方法

誰もがネットで自由に医療情報を探せるようになった一方で、過剰な効果を謳い、不安を煽るような情報も増えています。

生命はもちろん、生活の質にも直結する医療情報の真偽を見抜き、信頼・安心できる正しい情報を見つけるにはどうすればいいのでしょうか。

触れられる情報が増えた今こそ、自分自身や家族を守る医療リテラシーが必要な時代になっています。

放射線科医で医療ジャーナリストの松村むつみさんは、医療リテラシーを「医療について理解し、適切な行動ができる力」と説明。大量の医療情報があふれる中で、科学的に正しい情報を見つけるには不可欠の力です。

松村さんは医療リテラシーについて積極的に情報発信されており、日本医学ジャーナリスト協会の会員でもあります。翔泳社では、そんな松村さんが医療リテラシーを高めるために必要な知識を幅広く解説した本『自身を守り家族を守る医療リテラシー読本』を発売中です。

◆著者について
松村 むつみ(まつむら むつみ)
2003年、国立国際医療センター(現、国立国際医療研究センター)臨床研修医。専門は乳房画像診断。横浜市立大学にて博士(医学)取得。放射線診断専門医、核医学専門医、日本乳癌学会認定医。
2017年に大学を辞しフリーランスとなり、神奈川県や東京都の複数の病院に勤務の傍ら、自宅でも遠隔画像診断を行う。一般の方々の医療リテラシー向上に貢献するべく活動中。日本医学ジャーナリスト協会会員、アメリカヘルスケアジャーナリスト協会会員。

本書では医療・健康に関する基礎知識や不安を煽るデマの特徴、実際にどうやって情報の集めればいいのかを解説。怪しい情報を目にする機会も少なくない「感染症・放射線・がん」の領域については、専門である松村さんがより詳しく説明しています。

この記事では医療情報を探すときに気をつけるポイントをまとめた「第3章 自身を守り家族を守る 医療情報リテラシー~その上手な分析法、活用~」の一部を抜粋して掲載します。

特にネットで情報を探すとき、まずどんなサイトを見ればいいのかを紹介しています。安心で健康な生活を送るための医療リテラシーを身につける第一歩となれば幸いです。

以下、『自身を守り家族を守る医療リテラシー読本』から「第3章 自身を守り家族を守る 医療情報リテラシー~その上手な分析法、活用~」の一部を抜粋します。掲載にあたって編集しています。

どこから医療情報を得る? 〜かかりつけ医・検診・テレビ・ネット〜

医療情報の入手方法は、日本では依然としてテレビの影響が大きく、テレビ情報の真偽を判断できるリテラシーを持ちたいものです。かかりつけ医や薬剤師など、専門家とのコミュニケーションを心がけるのも大切です。

日本人はどこから医療情報を得るのか

日本人の医療情報の入手の仕方には特徴があります。いくつかの研究やアンケートなどで、日本人は医療・健康情報をテレビから得ることが多いことがわかっています。2017年に国内の雑誌に発表された、高齢者が医療健康情報をどこから得ているかの調査を図に示しました。

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これは、東京都と長野県で合計518人の60歳以上の高齢者に対して行われた調査の結果で、テレビから得る情報は、「医者や専門家」から直接得る情報よりも割合が多くなっています。

調査によっては、「かかりつけ医」「健康診断」などがテレビよりも上位にきているものもありますが、どの項目も、総じてテレビが上位にきており、特に高齢者においては、インターネットの影響はそれほど高くはありません。情報を得る先として「テレビ」、「医者や専門家」に次いで多いのは、「新聞」、「友人や家族」となっています。

また、株式会社インテージヘルスケアが全国11万人に対して行った調査(*)によると、年齢が高くなるほど「かかりつけ医」「健康診断」などの信頼できる情報源から情報を入手する割合が高くなると報告されています。

*インテージヘルスケア「患者の医療情報入手源に関する調査」 2020

この調査では、若い人ほど、テレビCMや家族や友人などの口コミから情報を得る割合が高い、という結果でした。高齢になるほど病院にかかり、専門家から直接情報を得る機会が多いことを反映していると思われます。

テレビからの医療情報は真偽を見極めることが必要

依然として、テレビは大きな影響力を持っています。文字情報だけではなく、映像や音声などを駆使して総合的に情報を伝えるのがテレビといえますが、昔と比較して正確性が求められるようになったとはいえ、医療情報に関しては、番組や局によってはまだまだ玉石混淆の情報を発信しているようです。視聴者のリテラシーが試されます。

本章の第4節以降で、「情報の真偽の見分け方」を説明しますが、印象に残る情報に触れたときほど冷静になり、深呼吸して、自分で調べたり、さまざまな角度から検討してみたりすることが必要です。

「かかりつけ医」や「かかりつけ薬局」の活用を

高齢になるほど、かかりつけ医などから情報を得ることが多くなるという調査結果があるのは、喜ばしい傾向であるといえるでしょう。最近は、薬局で薬をもらう際に、薬のことや病気のことについて、薬剤師に気楽に尋ねられる環境ができつつあります。

以前は、病院でないと処方してもらえなかった薬が薬局で手に入ることも増えました。医療者と患者さん、一般の方々とのコミュニケーションを考えると、薬剤師が果たす役割は大きくなってきていると思います。何か疑問があれば、薬局で気軽に聞いてみるのも、一つの方法です。

どのサイトを見ればいい?〜信頼性が高いのは「公的機関」・「ガイドライン」などの 公的出版物〜

もっとも信頼性が高いのは、公的なサイトです。薬や治療について調べたいとき、メディアの記事や企業のホームページを見る前に、まずは、公的機関から出されている情報をチェックしてみましょう。

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インターネットであれば、まずは公的機関のページを参照しよう

薬や病気の治療について調べたいとき、インターネットであれば「どのサイトを見るか」は非常に重要です。一つ安心できるのは、以前ディー・エヌ・エーにより運営されていたメディア「WELQ」の誤情報が問題となった際、グーグル社はSEOを変更して公的な情報や信頼できる情報が上位に表示される仕組みに変更しました。このため、本書執筆時点では多くの医療情報に関して、公的ページが上位に表示される仕組みになっています。

例えば、「大腸がん」をキーワードに検索エンジンのGoogleで検索すると、国立がん研究センターの「がん情報サービス」が最上位に表示され、診断や治療についての正確な情報が手に入るようになっています。

どうしても、テレビやインターネットのメディアが扱う情報は断片的になりがちです。インターネットを使って何か情報を得ようとするのなら、まずはこのような公的なページで病気について一通り調べ、基本的なことがらを把握するのがよいでしょう。

また、病気になったときに使える制度は、厚生労働省や自治体のページに掲載されています。あわせてそちらも見てみましょう。

治療、診断の手引き「ガイドライン」とは?

がんをはじめとするさまざまな疾患について、現在は「ガイドライン」が出版されています。

日本で診療ガイドライン作成を支援している、Minds(厚生労働省委託事業EBM普及推進事業)によると、診療ガイドラインとは、「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその相対評価、益と害のバランスを考慮して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義されています。

簡単な言葉で言い換えると、さまざまなエビデンスを統合して、診断や治療に対して、どの方法がどの程度勧められるのか、あるいは勧められないのかが書いてある文書のことです。

ガイドラインでは、その診断や治療を勧めるのにどの程度確証があるかを、A─Dに分けています。一般的には、AやBであれば、その診断法や治療法は勧められるということを意味します。

A=行うよう強く勧められる。
B=行うよう勧められる。
C=行ってもよいが、十分な科学的根拠がない。
D=行わないよう勧められる。

ところで、「ガイドライン」は通常、あくまでも医師をはじめとする医療従事者が、診療の指針として使用するものであることに注意しなければなりません。

しかし、大腸がんや乳がん、子宮がん、膵がんなどでは、患者さんのためのガイドラインや、ガイドライン解説の本も出版されています。これらの本は、自分が受ける予定の治療の説明を聞くのにも参考になりますし、医師への質問や、医師との話し合いにも参考として使用できます。


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