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鍋のふた「する」「しない」から考える料理本 VS. 料理教室

前回「料理本」を買わなくなったという、出版社に勤める者としてあるまじき話を書いた編集部のくらはしです。

そんなわたしが、先日人生初の「料理教室」に行きました。目からウロコな世界だったので、引き続き料理ネタにお付き合いいただければと思います。

余談ですが、最近また料理本を買うようになりました。その理由については、コラムの最後のほうに書きました。

 プロの料理を見てみたい

今まで料理教室というと「○○先生のお料理教室」みたいなセレブ感の強いところや、中学校の家庭科の調理実習のような、やらされている感満載のイメージしか持っておらず、絶対に自分とは縁遠い世界だと思っていました。ですが、突然プロの料理をゼロから見てみたくなり、 1Dayの面白い教室を見つけて行ってみました。

わたしが行った教室は「10年かかるプロの料理技術を4ヶ月で習得する」がコンセプト。料理の味で一番左右するのは「知識の差」とし、美味しさの原理や調理法を理論から教えてくれるところでした。

 長年の「鍋のふた問題」が解決

その料理教室で一番驚いたのが、多くの料理本にはすべての手順は書かれていないと聞いたときです。本のとおりに作ればプロの味になる、そうならないのは「本のとおりに作れていない自分が悪いからだ……」と思い込んでいたので強い衝撃を受けました。

確かに、わたしがすごく謎だったものに、「鍋のふた問題」があります。大体の料理本では、鍋のふたを「する」「しない」は書かれていません。

まれに、「菜箸1本分ぐらい鍋ぶたを開けて、○○分煮込みます」という記載がありますが、反対にこのような記載があると、同じ本の中で記載がないレシピはすべてふたを「しないのか?」という、さらなる疑問がわいてきて面倒なことになります。

カレーやシチューの煮込み料理だったら「する」、焼き物だったら「しない」ぐらいは書いていなくてもわかるのですが、例えば、

  • 炒め煮のひじきの煮物や、キンピラごぼうの場合どうしたらいいの?

  • タレの濃さにも影響する魚の煮つけは?

  • 落しぶたをする場合でも鍋ぶたは必要?

たかが「ふた」、されど「ふた」で、考えだしたら眠れないほど疑問が浮かび上がります。

「どっちでも好きにしたら~」と言われてしまうこと間違いなしでしょうが、鍋のふたを「する」「しない」は、料理をする上では大きな問題なのです!

例えば、レシピどおりに作っても出来上がったスープや汁の量が掲載されている料理本の写真と大違いという経験がある人は多いと思います。これは、鍋のふたを「する」「しない」で水分の蒸発量が変わってしまったのが原因として思い当たります。

そうなると水分量と調味料の割合がレシピとは異なっているということで、当然出来上がりの味も変わってくるわけです。

個人的には今まで、ガスや電気代の省エネ、時短を考えて、多くの料理で鍋のふたを「して」いましたがこれは間違いでした。ご興味ある方が少しはいらっしゃることを願って、料理教室で教えてもらい、わたしが勝手にまとめた「鍋ぶた三箇条」を挙げておきます。

 鍋ぶた三箇条

1. アクが出る料理は、鍋ぶたはするべからず
→カレーやシチューでもアクが出ているうちは、ふたはしないほうがいいということです。

2. 臭みがある食材は、鍋ぶたはするべからず
→昆布や鰹などで出汁を取るときは、ふたは要らないということです。

3. 温度を上げすぎたくないときは、鍋ぶたはするべからず
→ふろふき大根などは、ふたをせずに茹でるということです。

 「料理本」VS.「料理教室」、結果はどっち?

こうやって書いていると、「料理本」VS.「料理教室」の結果は「料理教室」の圧勝か!?と思われますが、実は料理本の良さを料理教室で発見しました。

教室で驚いたことのもう一つに、軽量スプーンを使うということがありました。

今までわたしは、大さじをカレースプーンで、小さじをティースプーンで適当に計っていましたが、つねに一定の美味しさにするには、プロであっても軽量スプーンが必要らしいのです。

ということは、その分量が書かれているレシピはとても大切です。それでちゃんとしたレシピが見たくなり、料理本を買うようになったというわけです。

『永久保存レシピ 一流料理長の 和食宝典 ―私たちへ300レシピの贈り物(別冊家庭画報) 』
(世界文化社刊)

わたしが購入した料理本。7人の日本料理人のレシピと作り方が掲載されています。しかし、ここでも鍋ぶた問題は解決できないのですが。

『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』
(有本葉子著/SBクリエイティブ刊)

書名がズバリ『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』。当然レシピの記載は一切なく、文章中心で知識を教えてくれる。実家の母が料理好きだったらこんな風に教えてもらいたかったと、贅沢な願望が芽生えてしまう本。

わたしもそうですが、料理本や料理サイト、動画に頼っていると、レシピがないと料理が作れないという人が多いようです。しかし、同じ料理でもレシピや手順はさまざまにあり、そうなると料理の迷宮に入り込んでしまいます。

今のわたしは、潮汁の作り方で、魚のアラを水から入れるか、出汁を取ってから入れるかで迷宮をさまよっています。

料理に正解はない!

今回初めて料理教室に行ってみて、勝手な思い込みから自己流でやっていたことがとても多いことに気が付きました。また、レシピの重要さなどにも気づき、料理本を改めて見直すきっかけになりました。

ではどうしたら料理を自分のものに出来るか。わたしのレベルで考えられるのは、基本を踏まえて、食材とうまく向き合うことなのかなと思っています。

今の季節、何がおいしいか考えるだけでもおなかが空いてしまいます。


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