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法律の専門家じゃなくても意外と面白い!? 私が法律の原文を読んで気づかされたこと

突然ですが、法律に興味はありますか?

現在放送中のNHKの朝ドラ「虎に翼」が日本初の女性弁護士をテーマにしていることもあり、以前より関心が出てきたという人もいらっしゃるのではないでしょうか。

私はというと、福祉系書籍の編集という現在の仕事をするまでは、法律にあまり興味がありませんでした。

学校で習う数学の公式のように、厳格で、無味乾燥なイメージをもっていたので、重要だということは理解しつつも、意欲をもって知ろうとすることはなかったのです。

でも、仕事を通じて社会福祉に関する法律の原文を読むうちに、「法律を知ることは意外と面白いかも!」という認識に変化していきました。

多くの法律には、その冒頭に目的や理念を定めている条文が存在しています。

その条文には、その法律が対象とする社会課題で重要な考え方が凝縮されているので、「国としては、こんな考え方をもっているんだ」「専門職の人は、こういうことを大切しながら仕事をしているんだな」といった新しい発見があります。

その発見が自分の知らなかった世界を広げてくれるようで、とても興味深く、新しい法律と出合うことが楽しくなりました。

今回は、私をそんな気持ちにさせてくれた法律の条文を2つ紹介したいと思います。

教育基本法

子どもに「何のために勉強するの?」と聞かれたら、どう答えますか?

きっとその答えは様々で、「生きていくために必要な知識を身につけるため」と答える人もいれば、「いい学校や会社に入るため」という人もいることでしょう。

なかなかの難問ですよね......(笑)。

じつは、その答えのヒントになりそうな内容が教育基本法という法律に記載されています。

教育基本法 第1条(教育の目的)
教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

自分の中では「将来の職業選択の幅を広げるため」という答えを用意していたのですが、この条文を読んでハッとしました。

将来の選択を自由にできるのは、「平和で民主的な国家や社会」という前提があるからです。それを維持・発展させていくには、まさに一人ひとりの教育が欠かせないんだということが、平穏な日本でぼんやりと生活している私の頭からすっぽりと抜けていたような気がします。

なお、紹介した教育基本法の第1条は抽象的でやや難解な内容になっていますが、教育基本法第2条では、第1条を踏まえた具体的な教育の目標が、学校教育法第21条では教育の中でも義務教育の具体的な目標が記載されていますので、気になった方はこちらも一読してみてください。

(参考)
教育基本法の法律原文

学校教育法の法律原文

児童福祉法

児童福祉法は保育、児童虐待防止対策、障害のある子どもの支援など、日本のすべての児童福祉の基盤となっている法律です。

第2条では児童福祉における国民、保護者、国・地方公共団体の責務がそれぞれ定められています。

児童福祉法 第2条 
第1項

全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。

第2項
児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う。

第3項
国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。

素人ながらにこの条文を読んで意外だったのは、保護者や国・地方公共団体だけでなく、すべての国民に対して「子どもの最善の利益を優先して考えるように努力しなければならない」と呼びかけれていることでした。

普段は忘れがちですが、子どもは将来の「平和で民主的な国家や社会」の担い手です。自分の子どもではなかったとしても、我々大人は、その子の将来に対して、いい意味でも悪い意味でも影響を与えうる存在なんだということを、この条文を読んで思い起こしました。

私に何かすぐにできることはないかもしれませんが、この条文を頭の片隅に入れつつ、生活していきたいなと思います。

なお、子どもの福祉や権利について、もっと知りたいという方がいらっしゃいましたら、昨年施行されたこども基本法や日本も批准している児童の権利に関する条約(児童権利条約)を一読することをおすすめします。

(参考)
こども基本法の法律原文

こども家庭庁によりこども基本法の解説

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/40f97dfb-ff13-4434-9ffc-3f4af6ab31d5/2bdb80fa/20230401policies-kodomokihon-01.pdf

日本ユニセフ協会による児童の権利に関する条約の解説

今回紹介した以外にも、介護保険法、障害者総合支援法など、私に気づきを与えてくれた法律はまだまだあります。

気になっている社会課題がありましたら、時間に余裕があるときに一度、その分野の法律文を読んでみると、あなたに何か新しい発見を与えてくれるかもしれません。

(編集部:熊谷)

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