建設業で新卒社員が潰れる理由
現在、建設業界は深刻な人手不足で、新卒採用では大手ゼネコン・サブコンが大卒だけでなく高卒まで手を広げています(むしろ高卒がメイン?)特に工業高校は競争が激しく有効求人倍率が17-20倍。1人の生徒を20社が奪い合ってる状況です。私も昨日、高卒採用で福岡県内を4校ほど回りましたが、進路指導部の先生の話を聞くとまぁ名だたる大手が何千社と押し寄せています。
これだけならまぁ「そりゃ待遇のいい大手にいくよね」って話ですが、問題はそこではありません。高卒採用において、生徒は職種に対する理解が不十分なまま入社し、不幸なミスマッチ起こり、結果として離職につながっている気がしてなりません。具体的に言えば「技能者(職人)」と「施工管理職」の混同です。
技能者(職人)≠施工管理職
工業高校の電気科や機械科の生徒の多くに適性があるのは、自ら手を動かし工事する「技能者」だと思うのです。普段から実習もあるでしょうからね。一方で、大手ゼネコンやサブコンに入社して任される仕事の多くは「施工管理職」です。つまりは現場監督であり、仕事の実態は「プロジェクト・マネジメント」です。
ちょっと考えればわかると思うのですが、社会人経験もなくコミュニケーション能力・交渉力も未熟な若者がいきなりプロマネなんて上手くやれるはずもありません。ましてや社外の利害関係者とカネの話をしながらです。実際、右も左もわからないまま現場に放り込まれたら…
上からは施主(顧客)や元請けに詰められ、
下からはベテランの職人達に突き上げられ、
横からは異業種との折衝・取り合いに負けて、
四方八方からの板挟みで心を病み潰れてしまう
こんな状況では未来ある若者が業界に絶望して辞めるのは当然の帰結です。ところが、就活時に「年間休日」「給与&福利厚生」「知名度」しか判断基準を持たなかったら、仕事内容もよくわからないまま大手を選んでしまう。進路指導部の先生だって現場の実情まで深く理解するのは難しいでしょうから、大手から内定が出た生徒を止める理由もありません。
ゼネコンやサブコンが担う新築現場の施工管理は、ベテランでも心理的ストレスがかかる大変な仕事です。その重責を担う現場監督の方々には本当に頭が下がりますが、そこに入社したばかりの若手をアサインして「◯割残ればいい」みたいな採用を続けるのはどうかと思うのです。多くの会社から自社を選んでくれた若者に対して、普通の感覚ならこのミスマッチは看過できないんじゃないですかね。
新人にマネジメントを任せるの?
繰り返すようですが、たとえば「第2種電気工事士」を持っていることと、施工管理が上手くできることは別問題です。前者は自ら手を動かす仕事、後者は人に動いてもらう仕事。プレーヤーとマネージャー、と言えば違いは明白です。必要な能力が違います。これを混同したまま現場に出たら、本人は詰みますよ。中には最初から施工管理をやれるタフな若者もいるかもしれませんが、工業高校卒の新入社員はまず「自ら手を動かす技能者」として力をつけるのが王道ではないでしょうか。
ちなみに、街で建設中の建物を見ていると建設業って「新築現場」のイメージが強くなりますが…仕事って新築だけではありません。たとえば、弊社は防災設備のメンテナンス&工事を手掛ける会社ですが、現場の多くは既に完成している建物(既設物件)です。建設業許可(消防施設工事業&電気工事業)を受けて仕事をしていますが、建設業界よりも「ビルメンテナンス業界」を主戦場にしています。
建設業=新築、だけではない…
既設物件の仕事は、新築と比べ対象となる箇所が限定されているので工事関係者が少なく、異業種との折衝も少ないです。そのため自社で工程をコントロールしやすい。結果として、技術系の社員は自ら手を動かして価値を発揮する仕事に集中できます。もちろん規模によっては施工管理が重要な案件もありますが、それは技能者として経験を積んだ後、本人が望むなら次のキャリアとして「施工管理」の道を選択すればいい。
こうした業界の事情を知っていれば…技能者と施工管理職の違いを知っていれば、新社会人が2〜3ヶ月で「こんなはずじゃなかった」と絶望する悲劇を避けられると思うのです。
「年間休日」「給与」「知名度」だけで選ばない
年間休日、給与&福利厚生、知名度…このご時世、確かにそれも大切でしょう。みんなそこで比較しますから、それだけ見てたら大手がよく見えるのも分かります。でも、実は仕事内容や立ち位置(業界構造)を理解してから会社を選ぶ方が賢明だと思うのです。会社が手掛ける事業領域によって、仕事は全然違いますから。
そして、これは高校生に限らず大学生も同じですし、現場仕事では結構同じような構造の問題が起こります。私は新卒は自動車メーカーに入社しましたが、任された仕事はやはりプロマネで、現場の職長さん達と一緒に仕事してたから板挟みで本当に大変でした。
実のところ、弊社もまだまだ課題は山積みですが…建設業にも健全な仕事環境はあります。だからこそ、不運なミスマッチで業界から退場してほしくない。業界のリアルを知らない若手の相談に乗れるものなら乗りたい(※よければメッセージください)建設業・ビルメンテナンス業は、私たちが暮らす社会を維持するための大切な仕事なんですから。
なお、弊社(寿防災工業株式会社)では新卒・中途ともに一緒に働く仲間を募集しております。防災設備のプロとして福岡の街に介在し、建物から危険な場所を消していくことをミッションとしております。興味をもっていただける方はこちらのページから詳細をご確認ください。
追伸:
余談ですが「勤務地&住む場所」って、就活の時は私はあまり気にしませんでしたが…自分に合った立地を選ぶのはQOLの観点からすごく重要だと思います(失敗者の談)
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