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新四字熟語のストーリー    辣韮継続

衝動男児レディオでは、毎回「新四字熟語のコーナー」と題して、日々感じたことをこれまでにない四字熟語として創作し発表しています。
 
その中から「第16回 辣韭継続とClubhouseはどこまでも」より、四字熟語のきっかけになったエピソードに少し味付けして投稿します。


あなたの経験した辣韭継続はなんですか?


【新四字熟語】
 
辣韭継続
 
【意味】
背伸びをして演じたキャラクターをその後も演じ続けなくてはならなくなり、苦しんでしまうこと。見栄を張りすぎないほうがいいね。
 
【ストーリー】
 
その日の夕食はカレーライスだと換気扇が教えてくれた。
土埃も払わずに風呂場にいき、シャワーヘッドを傾ける。
足の指の土が落とせず煩わしい。


 早いね、ちゃんと乾かしなね、スパードライ!
はぁい
今日カレーだよ
ふうん
 
―しってるが、けっして、はしゃいではならない
 
スポーツ刈りはすぐ乾いたが、父は上裸でソファに沈んでいる。
 
―すわるな、すわるならしょくたくのほうにしてくれ、そしてふくをきろ
 
食べるよー
 
幸い兄がもう席についている。
―ぼくがいちばんのりではない、よしよし
 
はぁい
 
湯気と立ち込める匂い。
スプーンの銀色は、ヨーグルトを食べる時よりも心なしか厳つい。
鍋蓋の音さえAメロ。
 
よそうのは自分でと決めている。
―半ライス半カレーのスタイルは、このいえではぼくだけだ
 
境界面の土手には福神漬が鎮座している。
―しっくりくる、そうそうこれだ
 
いただきまあす
兄がライスを掘り起こし既に上に乗っているルーとともに口に運ぶ。
 
―いい、きょうの兄は、めずらしくいいスピードかんだ
 
いただきまあす
 
境界面のライスを崩す。この瞬間のために今日はボールを投げ続けたのかもしれない。
言葉で表せたわけではないが園児なりの感覚で、
崩れるライスの氷山が中辛の海に溶け込んでいくのを見届ける。
 
キャポッ
どうやら、父は白い球が幾つも浮かぶビンの蓋を開けたようだった。
 
―うまい、うまい、つぎはどこをくずそうか、ふくじんづけをここらで、、
旨い、旨い、カリッ!カリッ!
 
―なんなんだ、すっぱいにおい、びんのやつ
―おとなのたべもの?


ん?食べるか?
うん
 
―おとなのたべもの
―からっ、すっ、いや、なんだこれ。なんなん―――い、いやおとなの、、、
 
うん、うまい!
そうか!食べ過ぎんなよぅ
 
言葉も辣韭も嚥下する。
カレーの世界に、優しい世界に戻りお替りを半ライス半カレーでよそった。
 
 
その日も換気扇がカレーを告げた。
 
これこれ、キャポッ、カリッ!カリッ!食うか?
うん!
 
からっ、すっ、なんなん
 
あんたも渋いもんすきねぇ
まあね、ま、そうかな
 
 
今日は換気扇がビーフシチューを告げる
 
キャポッ
 
なんなん

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