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会社の近くに住む

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部屋の窓から会社のビルが見えているところに住んでいた頃の話。
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記事一覧

【小説】会社の近くに住む 2-3

 人通りがなくて、タバコを吸おうかなと思ったけれど、とりあえず来た道を会社の方に戻って、…

正田幸大
1日前
3

【小説】会社の近くに住む 2-2

 杉大門通りに抜けていく小路は、二メートルも幅がないくらいの石畳で、両側にお店が続いてい…

正田幸大
2日前
2

【小説】会社の近くに住む 2-1

2 十月七日木曜日 昼休みになって、フロアを出てエレベーターホールに行くと、ちょうど扉が…

正田幸大
3日前
4

【小説】会社の近くに住む 1-12

 また六時間後には会社にいる。眠ってしまったら、目覚ましの音に起こされて、そこからはだる…

正田幸大
8日前
5

【小説】会社の近くに住む 1-11

 同居人だった奴も今はひとりで住んでいるけれど、あいつはひとりで眠りながらどんな気分でい…

正田幸大
9日前
4

【小説】会社の近くに住む 1-10

 けれど、どうなんだろうと思う。それで気分よくなれそうな気がしているのは、よく知らない人…

正田幸大
10日前
2

【小説】会社の近くに住む 1-9

 それはどんな感じだったのだろうなと思う。横になって、息を静かにさせながら、ただじっとして、ただ自分の感覚だけがあるような時間を過ごしているような意識に、誰かのセックスしている気配がずっと伝わってくるのだ。盛り上がり方や落ち着き方とか、盛り上がってきたときのリズムや緊張感とか、セックスしているうえでの俺の気持ちの流れを感じているような時間だったのかもしれない。  俺だったら、楽しくなってきそうだなと思う。この部屋で今そんなふうにセックスの音や気配が伝わってくればいいのにと思っ

【小説】会社の近くに住む 1-8

 他人の気配に対してとか、自分の気配を他人が感じることに対しての感じ方というのは、ひとに…

正田幸大
2週間前
9

【小説】会社の近くに住む 1-7

 けれど、どうして今さらという気もする。彼女と別れてから、もう半年近く同じ状況だったはず…

正田幸大
2週間前
6

【小説】会社の近くに住む 1-6

 昔からそうだった気がするけれど、俺は窓を閉め切るのが好きではなかった。よほど雨が強かっ…

正田幸大
2週間前
4

【小説】会社の近くに住む 1-5

 もちろん、眠ろうとするときに、いつもじっと耳を澄ませていたわけではなかったのだろう。ほ…

正田幸大
2週間前
6

【小説】会社の近くに住む 1-4

 今思えば、真夜中に窓を開ければバーの客が路上に座り込んで盛り上がったふうに喋っていたり…

正田幸大
3週間前
4

【小説】会社の近くに住む 1-3

 そのバーのマスターは、ウェーブした白髪まじりの髪と髭を伸ばして、あまりに着古しすぎたト…

正田幸大
3週間前
7

【小説】会社の近くに住む 1-2

 なんとなく布団が少し冷たいように感じて、このままじっとしていてもすぐには温かくなってこなさそうな気がした。かといって布団を温めるほどでもなさそうで、起き上がって脱ぎっぱなしになっていたパーカーに腕を通してまた横になった。  服もひんやりしていて、着たからといってすぐに温かくなるわけでもない。じっとしながら、自分の身体の温かさで布団が温まっていくというより、布団や服の冷たさで自分の身体が冷えていっているんじゃないかと思いながら自分の体温を感じていた。  そんなふうにして、暗い