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フラワードラムソング あとがき

フラワードラムソングに心を寄せていただいた全ての皆様に感謝を申し上げます。
初日の2ステージが中止になってしまい観劇が叶わなかった人にはその分のさらなる幸せが訪れますように…
例えば、落ちてたランプをこすったら3つ願いを叶えてくれる青いマッチョな妖精に出会うとか!

今回初めて、関わった作品について自分なりの見解や感じたことを文章にしてみようと思います。
(ここから書かれている事は、あくまでも僕が個人的に感じたり考えて作ったものですので、どうか悪しからず)

本番をやってみての感想は、「こんな名作に携わる事が出来て良かったなぁ」です。
あと「いやー、久しぶりに踊ったなぁ」です(笑)

今回携わるまで、恥ずかしながら今作の事は全然知りませんでした。
でもきっと他の共演者の人もあまり知ってる人はいなかったんじゃないかなぁ。
お客様も知ってる人はとても少なかったと思います。
隠れた名作とはまさにこの事で、そういうものに携われるってなんか特別感があっていいですよね〜✨

リチャードロジャース&オスカーハマースタイン二世のミュージカル黄金コンビの第8作目。
中国系アメリカ人C.Y.リーによる1957年の小説、フラワードラムソングに基づいています。
リバイバル版は日本初演で、ブロードウェイ作家のデビット・ヘンリー・ファンが手掛けています。

Youtubeにブロードウェイ版の映像が上がっていて見たのですが、セリフが当然英語だったのであまりニュアンスなどは理解できず…。
またその映像ではずっとお客様が爆笑し続けていて、なんでこんなにウケてるんだろう?と不思議でした。舞台が異様に広く感じ、スカスカしてるのになぁ、と…
そうです。今だから白状しますが、今作は日本人にとって果たして受けるのか?それがとても不安でした。
台本を読んでも、ダンスシーンと石井一孝さん演ずるワン・チー・ヤンがショーを乗っ取るところ以外はあまり『面白み』を感じませんでした。
音楽は、どのナンバーも最高と感じていたのは言うまでもないのですが…
シンプルであまり波のない物語だなぁ、と。
でも、稽古を重ねていくうちにその心配は少しずつほぐれていき、初日を迎えた時には、その心配は自信へと変わっていました。(自分の見る目の無さに愕然としております😅)
その要因は、全く予想もしなかったところにありました。
それは、作中のところどころに感じる【染みるセリフ】にありました。
稽古場で聞こえてくるセリフにじんわり感動するのです。1回通すとだいたい5回くらい!
しかも面白いのは、その【染みるセリフ】のポイントが毎回変わるというところです。
本当に不思議な体験でした!!
感動の質が上質な感じがするのです。
押し付けがましくなく染み込んで来ます。

例えば…
ワンター『これでようやく親父が中国人の面目を失う事なく俺を解放してくれる。』

メイリー『あなたは100パーセント両方。』 ワンター『そんなのあり?』

メイリー『ワン先生!父が初めてチャイニーズオペラに女性を起用した時、先生が父をかばってくれたと聞いています。伝統主義の人達に時は変わりゆくとおっしゃったと。』

メイリー『父はお二人(ターの両親)が演じるのを何回も見たんだよ。』
ワンター『そうなの?二人、息はあってたのかな?』
メイリー『父はねそれ(ターの両親が演じていた作品)を見た時にその作品を初めて見た気がしたんだって。その作品が作られた時に戻った気がしたって。』

メイリー『彼を愛していたから。それで十分なんだよ。彼女の目を見つめていればいつか気づく、自分はいつだって自分が思ってる以上の何かなんだって。』
♪『Your beautiful small and shy』

これらはほんの一部ですが、
書き始めたら台本を丸々写すことになりそうだったで辞めときます(笑)
演じるキャストがこう言ったセリフの持つエネルギーを素直に届けています。
役者の技量が光っていました!

音楽はどれもマジでサイコー!マジって言っちゃうくらいサイコー!!満たされたなー(笑)

特に大好きなのが、メイリーが戻って来てワンターが歌い上げる♪『Like A God』
その前のシーンでチャプスイダンサーとして調子に乗ってる元劇団員を演じてるんですが(あとでその辺の劇団員の裏設定なんかもお話しします)
ワンターとチーヤンの壊れた親子関係の中にも愛のあるやりとりが繰り広げられて感動してる中、去ってしまったはずのメイリーが戻ってくるんです!(玲香ちゃんはいつも少し目に涙を浮かべて入ってくるもんですから、いつももらい泣きしそうになってました)

メイリーと劇団員の関係はどんな感じだったんでしょうかね?メイリーがデビューするまで一緒に切磋琢磨したんでしょうね。
だからデビュー出来るって決まった時はメイリー以上に、はしゃいで喜んじゃってました(笑)
誰もがメイリーを好きだったと思います。もちろんター以外はLikeでね。
そんなメイリーが帰って来てくれたんです!
嬉しくないはずがないでしょう!
ターに目配せで『おかえり!』って言え!ってやるんですけど、はぐらかして休憩にしようとか言い出すから、オーマイガーなんですけど、、
チーヤンさんが『いや、今日は休みにしよう!』ってイキなこと言ってくれて、だから劇団員はチーヤンさんと共に二人だけにしてあげるためにそそくさと退散退散。
本当はメイリーにおかえり!って言ってあげたいのをぐっとこらえて🫢

メイリー『花売り船の娘の愛が学生を神様に変えたんじゃない。彼は元から神様だったの…』
ワンター『でも彼女の目を見つめるまでは自分の本当の顔を知らなかった…』

♪俺はどれほどの 男なのだろう? 君に愛される 何者かでなくちゃ!

たまりません!!!!
わーーー、書いてても泣けてくる!!!
多分ターの両親が演じていた『フラワーボートメイデン』の1シーンの歌なんだろう。きっと、たぶん、想像ですが、、

♪神のように木々を跨ぎ 大らかに歩く
 7つの海も超える 君がそばにいれば
 神のように世界を この腕の中に
 君の声が聞こえたならどこまでも行こう

↑この歌詞で自分の気持ちと名作の1シーンがリンクするんです!
(あくまで僕個人の見解が元の想像です)

♪君のため息が何よりの歌さ この胸は満たされ どこまでも行くよ
 神のように霧をはらうよ 君のため そして女神は口づけされる 恋する神に

このナンバーだけでも大好きなんですが、芝居からのこの流れをいつも体感することが出来、役者得してるなぁと感じてました。


さて、さっきぽろっと言ってた劇団員としての僕が勝手に作り上げたお話をここでご紹介します。

このストーリーの登場人物は
劇団員・モー君 森内翔大
劇団員の先輩 岡崎大樹(ヒロキ)さん
ダンサー新人・メガネ(仮名) 砂川脩弥(シュウヤ)くん
ガールズダンサー・スーザン(本人名付け) 横山祥子(サチコ)ちゃん
ガールズダンサー・バル(仮名) 堂雪絵(ユキエ)ちゃん
でお送りいたします👏🏻✨

ゴールデンパールシアターの劇団員のモー君のご両親はチャイニーズオペラのプレイヤーでした。温和な両親に厳しくも優しく育てられたモー君はダンスが得意でいつもそれを褒められていました。
当時中国国内では争いが絶えず、その刃は文化芸術にも多大なる被害を与えておりました。
両親も例外ではなく、仲間に裏切られ政府に捕まってしまった両親。一人残されたモー君は両親にサンフランシスコに渡るように言われます。このままではモー君も命を狙われてしまうからです。
当時サンフランシスコの劇場で大成功を収めているというワンチーヤンという人を尋ねれば必ず助けてくれるからと。
そうして無事サンフランシスコのチャイナタウンにあるゴールデンパールシアターにたどり着いたモー君は面倒を見てもらえることに。
しかし驚きました!稽古は厳しいのに本番に来るお客様はほとんどいない。
でも踊りが上手くなれば褒めてもらえるし、チーヤンさんの姿はカッコ良かったので不満はあまりありませんでした。
お客様が0人で上演するときだけは流石にキツかったですがまぁまぁ楽しい日々でした。
そこには先輩がいました。その先輩はいつも明るく優しい先輩でした。
でも時々一緒の方向に向かって歩いてるだけなのに『なんだ俺の事がそんなに好きなのか?可愛い後輩だな!』とか、『飯屋行こうぜ!奢ってやるから』って言ってくれたのでついて行ったら、僕は注文させてもらえず、先輩が頼んだチャーハンを小皿に分けてくれたりとか。
優しい先輩です。僕はラッキーボーイです。
でも今思えば、先輩風吹かせたかったんだろうなぁって思います😅
(大樹さん自身の役作りを見て僕が勝手に想像しております)
そんな時チー・ヤンさんの息子のワン・ターが新しいショーを始めました。ナイトクラブナイトっていうイケイケのショーです。
ターは良いやつです!優しいし頭も良い!
僕のダンスを凄いと言ってくれる!ターの友達に見たことないイカしたダンス(ジャズダンス)を踊れる奴がいて、そいつがそのダンスを教えてくれた。
ターはみるみる上達する僕をたくさん褒めてくれた。そして新しいショーにも出してくれた。しかもバイト代まで貰っちゃった。1ヶ月貯めたお金で、憧れだった自転車を買った。
ちょっと、チャイニーズオペラよりもジャズダンスの方が楽しくなり始めた頃、メイリーという難民の子が来た。
とっても良い子で演じるのもとてもうまい。棒術だけは苦手らしく一緒に居残り練習をした。
そしてメイリーはデビュー出来た!観客はいつもより数人増えた気がした。気がしただけかもしれないけど、とにかくデビュー出来て良かった。
そんな時、なんか派手な女の人が来て劇場を派手にしてと言われたから壁を塗り替えた。
ゴールデンパールシアターって名前はダメらしく、クラブチャプスイが良いっていうので大きな看板と提灯を飾った。
そしたらみるみる初日が完売しちゃったらしく、3回公演になった。
しかも毎日やるってことになったから立て看板も作った。僕って美術の才能もあるんだなー。
そしたらパレードが始まって、チーヤンさんに怒られちゃったけど参加して来た!途中、チャイナタウンでお世話になってるおかみさんを見かけたから手を振ったら手を振り返してくれて嬉しかった。
リハーサルには見たこともない綺麗な女の子たちがいっぱいいて緊張した。バルって子は一見怖いんだけど、境遇が似てて相談なんかを聞いてあげた。笑った顔がキュートで、なんか一緒にいて安心する子だった。
スーザンって子はいつも明るくてハツラツとしてて、僕と超仲が良かった。
3回公演になった初日の三回目の公演で事件が起きた。
セーラーのナンバーでいつものタイミングでハーバードが出てこない。あれ?どうしたんだろう?ってこの日がデビューだったメガネ君と冷や汗をかいていた(ちなみにこのメガネ君はナイトクラブナイトから入った新人君で、踊りも歌もダメダメだったからセットの転換しかさせてもらえてなかったんだけど、努力の甲斐あってこの日から、重要なセーラートリオを任せられるに至る👏🏻✨)
やっと出てきたから良かったーと思ったんだけど、いつもとちょっと声が違ってた。
まぁいっか、と思いながら舞台に出て行ったら、なんとそこにはチーヤンさんがいるじゃないですか!?
舞台上で起こってることにパニックになりながらも先輩がやるしかないみたいな顔してたからShow Must Go Onしました!
よくよく思い出してみると、チーヤンさんめっちゃアドリブ入れてたし、急に後ろに下がっちゃったと思ったら指差したいときにどっか行っちゃうし💦
でもお客さんはめっちゃ笑ってて、何が起きてるのかさっぱりわからなかった。
なんとか幕が降りたけど、もうすっごい緊張してたから終わった瞬間、頭が真っ白になっちゃった。
そんな僕の背中をスーザンがヨシヨシしてくれたからすっごい安心できたなぁ。
話を聞くにどうやらチーヤンさんがハーバードの衣装を盗んで出ちゃったらしい!
なんか盛り上がってそのままチーヤンさんの奢りで飲みに行くことに。
とっても刺激的なお店に連れて行ってもらったんだけど、僕はずっとスーザンと楽しく飲んでいて、そのお店のダンサーさんが、え、二人付き合ってるんじゃないの!?えー付き合っちゃいなよー!って言ってて、そんな感じでそのまま付き合うことになっちゃいましたー!
チーヤンさんはアンクルサミーとして超大人気になりクラブチャプスイもチャイナタウンですごい有名になっていきました。
かっこいいスーツで踊るジャズナンバーで女性をメロメロに。チャプスイのナンバーでは筋肉スーツの裸エプロンで、でっかいお箸を持つだけでお客さんは大爆笑!スーザンともラブラブだし、僕は自転車を売って車を買いました!
街を歩けば『あのクラブチャプスイのダンサーなんでしょ?すごい!』って言われるんですよー。あー、でも女性のお客さんがサインをねだってくるときスーザンが心なしか不機嫌だったような…
何ヶ月か経って、急にターが次のクールのショーに京劇のダンスを入れようと言い出した。
なんか新しいスタイルとコラボでもさせるのかと思いきや、そのままをやるらしい。
スーザンをヒロインにするから教えといてくれって言われて仕方なく、なんも知らないスーザンにイチから教えたけど、なんせ西洋ダンサーだから引き上がったダンスは出来ても腰を落したダンスは出来ない。っていうかもうスーザンとの関係も実は冷めきっちゃってて気まずい。
俺が友達と飲みに行くのが気に入らないらしいが、それが楽しいんだから自由にさせてよって思う。
そんな感じだからいくら言っても指導を聞かないし上手くもならない。ターと一緒に稽古した時は袖同士をぐちゃぐちゃに絡めるし、袖でターを殴ろうとするしでダメダメ。
今日もショーが三回あって疲れてるのになんでこんなリハーサルしなきゃいけないんだろうって思ってたその時、チーヤンさん(通称アンクルサミー)が来て、ターのために女役は俺がやると言い出した。
僕は思わず、態度悪い所を見られてたかなぁとビビってたんだけど、そんなことは全然触れもせず稽古が始まった。
チーヤンさんの女型は本当に美しかった。
だから、ターもめちゃ格好よかった。
二人の舞を見てなんか今の自分が恥ずかしくなって、穴があったら入りたくなった。
そこに、立ち去ってしまったはずのメイリーが戻って来た!
ターとメイリーを二人きりにしてあげて、劇場のロビーで僕はスーザンとまた昔のように仲良くやりたいって話をしたんだけど、スーザンはもう別の人と付き合ってるんだって!えー!まだちゃんと別れたわけじゃなくない!?え?もう別れた?そんな話した!?
スーザンと別れて消沈してる僕の悩みをバルが聞いてくれた。
そういえば昔バルの笑顔を見ると、なんだか自分が強くなれたような気がしたのを思い出した。
バルはそんな俺をターとメイリーの結婚式にパートナーとして一緒に行ってくれると言った。
メイリーとターの結婚式は本当に素敵だった。

人と人が出会うって、奇跡なんだなぁって思った。



ちゃんちゃん✨

長くなってしまいました(笑)
最初のアメリカに来るまでは、メイリーとほぼ同じ境遇ですね!
チーヤンは見栄のために色んなチャイニーズオペラの関係者に手紙を送っていたんだろうと考察しました。
またこういう同じ状況に追い込まれた人たちばかりだっただろうから。という点も含まれてます。
なんでこんな感じの人物像になってったのかと言いますと、途中で変わっちゃったんですが終盤に『おお、ブラザー!』ってセリフがあって、それをもともと僕が言うことになっていて、そこに向けて行くために最初は純朴な劇団員が世の中の流れの中で、そうやって変わっていったら面白いかなぁ。と思ったのがきっかけです。
アンサンブルの役作りは台本に情報が少ない分結構難しいんです。
だから自分の納得できるまで考え続けなければならないんですよね。

ちなみに、この本の原作者のC.Y.リーさん。
とても特殊な家族で、中国の動乱の真っ只中を生きた人だったので、最初の渡米を試みる難民のキャラクターを、若かりし頃のC.Y.リーさんを想像して作ってみたりしてるんですよ。

そして最後にダンスについてです!
ボブフォッシーのようなエンターテインメント性溢れるファンタンファニーというナンバーや、女の子って楽しいののナンバーなど、天才振付家の上島さんのカッコいい振り付けを踊れたことが最高に嬉しかったです!
もう得意中の得意ジャンルだったんでね(笑)
でも、こうやって大舞台でダンスらしいダンスを久しぶりに踊ったので毎公演踊りに出る直前が一番緊張しました!
あの感じ久々だったから、結構消耗しました…🤯

今回は、芝居、ダンス、歌の全てが均等にハイクオリティでなければならない。
それがアンサンブルに求められた事でした。
だから、最高に楽しかったです!

以上フラワードラムソングのあとがきでしたー✨

もしよかったら、次の出演作品にも是非足をお運びいただければと思います。

ありがとうございました!

真面目でダンスセンス抜群の鈴木昌実ちゃん
芝居でお互いの表情で涙ぐみそうになってた堂雪絵ちゃん!
ミーハーで威張り散らす工場長チョンさん
大千穐楽の翌日から20曲歌う自分のライブ本番だった主演の古屋敬多くん(凄すぎる!)
胡散臭いレストランオーナーのミーハーなリーさん(岡崎大樹さん)
ちなみにこの写真は難民の私が時給2000円だからといって雇われた瞬間の嬉しい時、、彼がこのあとどうなったのかは誰も知らない…
何もかもが素晴らしかった石井一孝さん
(このnoteは完全に石井さんのインスタグラムの文章に影響を受けて書きました!カズさんありがとうございます!)
大スターアンクルサミーとボーイズ
チャイニーズオペラ楽しかったー
プロの俳優仲間であり、同期であり、僕の数少ない友人の荒木啓佑
稽古初日に33歳になりお祝いして頂きましたー
集合写真

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