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キッド・カディの映画"Entergalactic"を見た。

キッド・カディがプロデュースしたNetflixオリジナルのアニメーション映画"Entergalactic"を見ました。

ニューヨーク、マンハッタンに引っ越してきたグラフィティ・ライターのジャバリが、仕事で悩んだり、隣人に恋をしたり元カノと揉めたり、気のいい友人たちと昼も夜も遊んだりする、都会のラブロマンス。かなり王道のプロットと言っていいでしょう。

話の構造はシンプルなんですが、それを表現する映像や音楽がすこぶる美しい。映像はマンハッタンの夜やスカイスクレーパー、ネオンや朝日・夕日をロマンティックに描きつつ、ストリート・カルチャーのエッセンスも美しく表現されています。動き出すグラフィティ。ロードバイクで駆け抜けるシティスケープ。ドラッグでサイケデリックに歪む夜。

ジャバリはキッド・カディのスタイルそのまま。クリエイティブな才能があって、優しくて、思慮深さもあるけれど、快楽主義に流されるところもある。細身で、ラッパーともロックスターとも取れるファッション。そう、この作品は登場人物のファッションもとてもいい。これがリアルなニューヨークの若者スタイルなのかは分からないけれど、ストリート、ヒッピー、アスレジャー、いろんなスタイルが楽しめる。これがまた美しい。

音楽は、すべて映像と同名のキッド・カディによるニューアルバムから。というか、この映像作品がアルバムのコンセプト・ワークみたいですね。

キッド・カディは元々メロウで叙情的な音楽作りのエキスパートだけど、このアルバムはジャンルを見ても「R&B / Soul」とカテゴライズされていて、かなりメロディック。語りかけるようなカディの声が作品のロマンチックなトーンとよく合っている(そのように作っているので、当然の話なのだけど)。

ミスコミュニケーションからの愛のすれ違い、それを乗り越えるためのメッセージに目新しいところは無いが、だからこそ普遍性を持って響く。現代マンハッタンで、黒人の青年を(ロマンチックに)描くとこうなる、というスタイルだけど、メッセージは広く届くんですよね。ヴァージル・アブローに対するリスペクトが強く感じられるこの作品だけど、ブラック・カルチャー/シティカルチャーをレペゼンしながら領域を超えて自分のクリエイションを届けたヴァージルのように、普段ロマンスなんか見ない日本の地方に住む私にも響いた作品でした。

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