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#一角くじらとの出会い

宇宙へ連れて行ってくれる大きなくじらがいた…

それは、ゆったりと天の河を泳ぎ、星々のかけらをまとう。額には大きな角。色は銀河を集めたようなマダラ模様だ。大きな尾っぽをゆーらりと動かして気持ち良さそうだ。一角くじらと呼ばれるそのくじらは天の河の主。

布団に入り目を瞑ると、遠くからゆっくりと星屑がやってくる。

一角くじらが纏う星のかけらだ。一角くじらは深い眠りの海の中に現れる。見つけられずに通り過ぎる者も多い。今日は運良く出会えたようだ。

くじらとの旅はこれで何度目だろう。
 
はじめは、それがくじらとは分からなかった。背中に乗ると、ツルツルとしていてあったかい。包まれているような不思議な感覚。くじらに集まってくる星のかけら達が私の周りにも集まってきて、柔らかな光が心地良かった。

さて、今回はどこへ連れて行ってくれるのだろうか。くじらに乗るにはコツがいる。自転車のように乗り方の話ではなく、くじらへの感謝の気持ちが大切なのだ。だってこの一角くじらは私のためにここにいてくれるのだから。ちょっとの尊敬の気持ちも大切だ。へり下る必要はない。対等な心地の良い関係なのだから。

そしてここは夢の世界、言葉は必要なかった。私は軽く会釈をしてくじらに乗った。くじらは私に合わせて大きさを変えた。それはもうほんとうにちょうど良い塩梅だ。

くじらは私が乗ると、私が見たいところへ連れて行ってくれる。宇宙の案内人だ。いくらでも光を超えて連れて行ってくれる。それには、あの額のツノがとても役に立っているようだ。遠くの星に着くと、くじらは得意そうにそのツノを振りまわす。その仕草はなんとも可愛らしい。

くじらはいつ見ても綺麗だった。私は自分でくじらを見つけたとずっと思っていたけど、くじらも探してくれていたらしい。家族も友達もいなさそうなくじらは私の事をとても慕ってくれている。生き別れの友達と出会えた気分だ。

くじらにはお気に入りの場所がある。それは天の河の底の方、多くの銀河に囲まれた場所がある。そこは色とりどりの光が溢れている。そこに着くとくじらはクルクルと回転しながら上昇していく。同じくじら仲間に信号を送っているみたいだ。私もくじらと共に回る。
 
そうすると大体朝になっていた。
 

くじらは仲間に会えただろうか。




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