人生ではじめてアートを買った話
よく行くインテリアショップでヴィンテージアート展が開催されていました。
展示されていたのは1920〜50年代のファッション誌のアドバタイジングページを額装したヴィンテージアート。
当時の印刷技術は多色刷り活版印刷によるもので、インクも上質なものが使用されていたのだとか。
当時のパリのファッション誌を彩ったそれらはDiorやCHANEL、今回印象的だったのはHERMESの広告たち。本当に素敵なページだった。
現在ハイブランドとして君臨し続けるだけあって、当時のアートから伺えるブランドそれぞれのイメージは今見ても色褪せない美しさがある。
よく似たタッチのイラストを目にした。さらっと眺めているだけなのにこの人の絵にとても目が惹かれた。
同じ時代に様々な有名ブランドのイラストを手がけていたようだった。
イラストに添えられたサイン…なんて読むんだろう。
店員さんに聞いてみると、これは「ルネ・グリュオウ」のサインだと教えてくれた。
ショップには額装されたアートたちが壁の一角にずらり。そして、テーブルの上にも積み上げられたアートがずらり。
一つ一つ手にとって、引いたり寄ったりして見ては、「ああ、かわいい。かわいい...!」が止まらない私。
友達と一緒に行ったけど、彼女は彼女で気になる商品を店員さんと選んでいて、おかげでじっくり考えることができました(笑)
なんとか3つに絞って、テーブルの上で吟味していると店員さんが声をかけてくれた。
「よかったら、一つずつ壁にかけてみますか?ご自宅の壁の色は何色ですか?」
彼女の提案に乗って、自宅の壁色に合わせてショップの白い壁にかけてもらった。
順番にかけてもらい、最後の一枚に。一番初めに「これ可愛い〜!」と思っていたものをトリにしていた。
私と同じようにこの展示を見ていた夫婦が隣に来た。60代くらいだろうか。
二人とも綺麗めな格好。爽やかで背筋が通った姿がとっても素敵だった。
「これ、私たちも素敵だと思ったのよ。」と奥様。
「うん。やっぱりいいね〜。」と旦那様。
「かわいいですよね〜」と返しつつ、なんだなんだ、二人もこの絵を狙ってるのか。早く決めなくちゃ、なんて焦る私。
「あなたに似合うと思うわ、この絵。」「素敵だね。」と夫婦はにっこり。
意外な言葉に嬉しくなった。可愛い可愛いと言いながらずっと私が眺めているものだから、きっと譲ってくれたのだと思う。
店員さんの方を見て、ようやく「これに決めます!」と伝える。
彼女は私がこれに決めるだろうと内心わかっていたらしく、夫婦と目を合わせてにっこりしていた。
私は大満足でこの絵を連れて帰った。
見ず知らずの人と、同じものを見て「素敵だね」と言い合えたあの時間は、とってもラッキーなオプションだった。
人生ではじめてアートを買ったこの日のことをきっと絵を見るたびに何度も思い出すと思う。
▲パリのジュエリーブランドとコラボして描かれたものだそうです
それではまた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?