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思考

今日は久々に興奮する景色を拝むことができた。
冬が終わり、春が来るまでの間撮影に行ってなかったせいか腰が重くなってしまった。気づけば夏になり様々な花があちらこちらで咲いている。

「行くか〜」と文鎮のような腰を上げ撮影に出る。がしかし、しばらく天気も見なければ新しい撮影地の開拓もしておらず、行くところ行くところ天気やシーズン物の時期を見誤り空振りの連続。
完全にスランプに陥った。

悔しい気持ちは生まれるもので、心機一転、初心に戻り失敗をしつつも以前の感覚を戻すように回数を重ねる。

前日の夜天気アプリで次の日の天気を見てみるとこれは確実だろうという感じだった。
候補はいくつかあったがやはり今はレンゲツツジ。気になってた場所へ向かう。

3:00 到着
道中は濃霧。
日の出は4:30頃。
車を停めてもなお視界不良の放射霧。
放射霧はいつも忙しくなるので裏切られる可能性も含めて色々と頭を整理する。

3:30
出発し歩き始める。
ライトで花が咲いてるかを確認しながら進む。
標高が上下するので場所によっては花が終わっていたり咲いていたりする。

ここで"TPE 3D"アプリを使う。


地形図を用いて時間によってその場所がどのような日の当たり方をするのかを調べられる。
日が入るタイミングで適切な標高にいなければならない。
暗い中で特徴的な木や地形を把握しておく。

3:45
空が段々と明るくなってくる。
かなり歩き回った。やはり少し標高を下げるだけで全く花がない。行ったり来たりをして花が咲いているポイントを把握する。
まだ霧はある。

4:00
霧が消える。
戻って場所変えるか?
いやそんな時間はない。
放射系の霧は日の出で動きが激しくなるからそれを信じるしかない。霧がなくなったおかげで地形把握は容易になった。

4:15
空が焼ける。爆焼け。
赤い雲は久しぶりに見た。
もうこれで霧がないのであれば他の被写体に切り替える。模様や斜光で日が当たりそうな木々を探し始める。

4:30
日の出。
あんなに濃霧だったのが嘘のようにすっからかん。
近くのライブカメラを見るとそっちに霧が移動していったようだった。

「また場所を見誤った…」

脳裏にチラつく。
興奮しながら動き回っていた間に出たアドレナリンが一気に切れて疲れがドッと押し寄せる。

4:40
東側に小高い山があるのでまだ日は入ってこない。よく見るとその山の斜面に霧が走っているように見えた。

行くか。

小走りでその山を登る。登りきった反対側の斜面は既に日が登り辺りを強く照らしていた。
斜面を走っていた霧はなんと反対側に流れ込み一帯がオレンジ色に輝いてる。

こっちかい。

そんなツッコミをしながら対戦開始。
逆光は難しい。GFレンズは逆光にめっぽう弱いのでこんな景色を前にしても正直これといったものは撮れなかったと思う。

5:00
その山からさっきいたところを見下ろすとなんと霧が薄くだがわいていた。
このパターンはこれからもっと増えるはず。
まだそこには日が当たっていないのでさっきいた場所へとまだ戻る。
決めていた構図で"その時"を待つ。
霧が濃くなることを信じて待つ。

5:07
予想通り数分の間に何もない状態から辺りは一気に霧に飲まれる。
日が入るタイミングと同時だった。

さぁこのあとはフィーバータイム。
急ぎたいけど走ると滑るし木道を痛めるのですり足みたいな早歩き。超疲れる。

太陽の角度的に白虹出るなと思った。
まだ見たことないから見たかった。

出た。
木道あると難しいからスマホで記念写真だけ。

光芒も撮れるから形のいい白樺まで再び競歩。
若干構図微妙。最初のポイントの光加減が変わったからまた戻る。

霧が引く。引き際もまた美しい。
若干下の方の木々を見下ろせる場所を覚えていたからそっちに移動。引き際は霧から浮き出る木の表面を撮れるだろうと予想してた。
撮れた。

また霧がわく。
光芒いけないかと再チャレンジでさっきの白樺に移動。また撮れない。

白虹でいい構図ないかと探す。
もうちょっと分厚めに霧があればって感じだった。

6:00
気温差もなくなり霧も消えかかる。
さすがにもう終わり。

木や森の撮影はワンポイントシューターと違って多くの作品を一日で生み出せる効率のいい被写体ではあるが、これから起こり得る現象とその確率や優先順位、空気の流れ、太陽の位置などを短時間で計算して動き、正しい位置取りと順番を考えなければならない。
最重要な勝負カットは絶対に逃さず、並行してサブカットも回収していく。
素晴らしい作品を残せるのもまた気分はいいものだが、自分の思うようにその場をコントロールしているように錯覚する時ほど気持ちいいものはない。

途中不安だったが上手く行きすぎた今日のことを備忘録として残しておく。

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