見出し画像

6/13発売『インフルエンサーのママを告発します』作者のことば

6月13日に韓国の児童書『インフルエンサーのママを告発します』(作:ジェ・ソンウン、訳:渡辺奈緒子)が発売になりました。

主人公・ダルムのママはインフルエンサー。ダルムが生まれてからの日々のほぼすべてがSNSにアップされています。そのために「ほんとうの自分」でいられないダルム。しかし、クラスメートのアラの言葉が彼女を変えます。

なぜ、SNSに許可なくだれかの写真をのせることは、いけないのか?
自分がいやだと思ったときにどう行動できるのか?
SNSを使うすべての人必読のものがたりです。

本書発売前に「作者のことば」を公開します。

作者のことば


 子どもが生まれたとき、わたしはミニホームページ[*1]とカカオストーリーに子どもの写真をのせました。かわいくて、おかしな姿をすべて記録にのこしておきたかったのです。子どもがそれなりの年齢になるまで、メッセンジャーのプロフィールにも子どもの写真を使っていました。

 ところがある日、子どもが「SNSに自分の写真をのせないでほしい」と言ってきたのです。わたしとしては、かわいいと思ってしていたことでしたが、子どもがいやがることもあるのだと、そのときはじめて知りました。

 その日以来、ほかの親たちがネットに子どもの情報を出しすぎているのが気になるようになりました。子どもの個人情報はもちろんのこと、すこしはずかしい場面まで、はばかることなく公開されていることもありました。

 テレビの子育てバラエティ番組も同じです。かわいい子どもたちを見て、「オンラインおばさん」[*2]として応援したこともありましたが、度がすぎる設定を目にするたびに、子どもの将来が心配になりました。

 ソーシャルメディアに子どもの写真をシェアすることを「シェアレンティング」といいます。共有(シェア)と親(ペアレンツ)の合成語です。シェアレンティングは、子どもの同意なしに写真が流出し、深刻なプライバシー侵害を引きおこすといいます。そういうわたしも、子どもの写真をSNSにのせていた母親なので、心配と同時に、申し訳なく思う気持ちもあります。

 この話の主人公、「ナム・ダルム」は、社会に影響力のある「インフルエンサー」をママにもつ子どもです。思いとはうらはらに、自分の一挙一動がママのSNSで公開され、悩ましい日々をおくっています。しかし、一連の出来事をとおして、ママの所有物ではない「ナム・ダルム」自身として成長していく勇気をわたしたちに見せてくれます。

 わたしは、ダルムがママのSNSや他人の視線から自由になり、自分らしさを見つける旅路を応援したいと思いました。

 人前で素敵なところだけを見せている人生よりも、わたしが何者で、なにが好きで、なにがきらいなのか、自分をひとつひとつ知っていくことのほうが大事ではないでしょうか。

 このはなしを読んでくれたみなさんも、自由に、自分らしい姿で成長していってくれることを願います。
 自分だけの道を切りひらいていく姿は、それだけでもじゅうぶんに美しいのですから。

2021年、ジェ・ソンウン

 
[*1] 過去に韓国最大のSNSだった、サイワールド(싸이월드/cyworld)のユーザー個人ページの名称

 [*2] テレビやSNSなどに出てくる他人の子どもを、親戚のおばさんのような心情で可愛がり、応援するファンを意味することば



『インフルエンサーのママを告発します』
作:ジェ・ソンウン
絵:チャ・サンミ
訳:渡辺奈緒子

A5版変形・144ページ
ISBN:978-4-7949-7365-8
定価:本体1800円(+税)

https://www.shobunsha.co.jp/?p=7641

装丁:アルビレオ

購入はこちらから☟
https://amzn.asia/d/5ZqfaYl(Amazon)
https://books.rakuten.co.jp/rb/17517812/?scid=af_pc_etc&sc2id=af_101_0_0(楽天ブックス)
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784794973658(版元ドットコム)https://honto.jp/netstore/pd-book_32518678.html(honto)

もくじ
ママは#インフルエンサー
最初はそうじゃなかった
みんなとちがうナム・ダルム
今日のコンセプト
へいぼんなユン・アラ
だれにも言えないひみつ
消えたぼうし
うそのパレード
いやだと言う勇気
わたしはわたし!
インフルエンサーのママを告発します
善良な影響力

作:ジェ・ソンウン
韓国の児童文学・絵本作家。放送作家と編集者を経て、児童文学作家となる。2011年、「掃除が消えた日」で「セボッ文学賞」童話部門を受賞。創作童話『騒音を集めるアパート』『思春期対更年期』『思春期対パパの更年期』『思春期対中学生活』『トークルームの幽霊』『うちの家族は推し活中』『見ない目を買います』、絵本『踊るタオル』など、著書多数(いずれも未邦訳)。

絵:チャ・サンミ
視覚デザインを学び、多数の児童文学や育児書、映像などのイラストを描いている。『はずれのないガチャガチャ』『5月の1年生』『どう言えばいいんだろう』『春の日のくま』『時計屋の子ねこ』などの絵を描いた(いずれも未邦訳)。

訳:渡辺奈緒子 (わたなべ・なおこ) 
1983年生まれ。ソウル育ち。「ことばの森ソルレム」代表。国際基督教大学教養学部卒業。一橋大学大学院言語社会研究科修士課程修了。「韓国語多読の会」や翻訳などを通して、韓国の絵本や児童書を日本に紹介している。訳書に『村上春樹のせいで』『ダンボール』『かたつむり』『おこづかいの賢い使い方』などがある。