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みっともないと言われてもまだ君が好き

※以下のエピソードはプライバシー保護のため若干設定を変えてある。


A(男性・先輩)とB(女性・後輩)というカップルがいた。私よりも少し若い大学生カップルである。

ひと目見れば誰でもわかるほどAが一方的に入れ揚げており、なぜBは付き合っているのか不思議なほどだった。
Bは特段美人というわけではないし、性格もかなりドライ(イケメンや金持ち以外興味なし)である。それなのに彼女を狙っている男は複数おり、なぜそこまでモテるのか今なお謎だったりする。

AはBにもっと好きになってほしくて努力していた。彼女を喜ばせるために無茶苦茶なデートプランを相談しにきたこともある。私はBとはよく話していたがAとはそこまで親しくなかったため、その溢れる情熱の発露に驚きを隠せなかった。

しかし彼は夏祭り直前に振られてしまう。彼女との特別な夏の思い出づくりを前にその夢を打ち砕かれてしまったのである。

Aはよほどショックだったのか女遊びにハマりかけていた。一方のBはイケメン若手講師に熱を上げるなどAとのことなどなかったかのようであった(もちろん講師には相手にされず)。

だがそれから1年ほど後のある日、Aが突然私に話しかけてきた。

「聞いてくださいよ、Bが最近また連絡をくれるようになったんです」

「えっ、あ、そうなの?」

誰でも予想がつくだろうが、私自身も感じていた。脈などない、と。しかし彼は再び彼女の好意を取り戻せると思い必死になっていた。

私自身諭したこともある。

「Bはドライだし、来年就職して財力のある大人の男になって迎えに行った方がいいんじゃないのか?」

しかし彼からすればそのドライなところが彼女の魅力なのだという。蓼食う虫も好きずきである。

念願叶って再び交際を始めたらしいA。私は何も聞かなかった。聞いても破滅への道しかイメージできなかったためである。

それから数カ月。噂によると彼女と一緒にいるために大学に近い企業に就職を決めたらしいA。もはや目も当てられなかった。

さらに数日。ばったり会ったBはぼんやりした顔で私に言った。「なんか勉強にやる気が起きない。最近失恋したの。邪悪生命体さんの知らない人に」

聞いた瞬間の私の顔は凍りついていたに違いない。私とAに面識があることは彼女自身知らないはずがなかった。そう、彼女は別の男に恋をしていたのだ。

確かにはっきり交際しているとA・Bどちらからも聞いたことはない(周りはそう言っていたが)。Aが告白せずに舞い上がっていたのか、それともBが平気で二股をしていたのか。後者はない気もするが、前者はもっとあり得ないように思える。

しかし事情も知らずここでBを糾弾したところでAは何も得しない。むしろAが(何も知らずに)傷心のBに優しくできればBもAに惚れ直すかもしれない。
ここは黙っておくのがAのためかと思い、私はこの会話を胸に閉まった。

それからひと月後、目に涙を潤ませ、今にも泣きそうな顔で通路を通り過ぎていくAを見た。今度こそ幕引きであった。


振られても忘れられないほど好きだった。その気持ちを否定する気はさらさらない。

こう言うと「男は昔の恋愛を引きずるから女々しい」とよく言われるが、これに根拠などないだろう。男性と女性の脳に違いはないと科学が証明しているし、ただの偏見だと私は考えている。 

それに逆に女性側が失恋を引き摺っていれば「一途」と言われ称賛(?)されるように思う。なのに別れてもあっさりしていれば女性側は「女は強い」と褒められ、男性側は「(引き摺らないのは)本当は好きじゃなかったからだ」とdisられる。やっていられない。※あくまで持論。個人の体験談による。

別に男女差議論を相対化する意図はさらさらない。男だろうが女だろうが、いつまでも過去の恋愛を引き摺ることはあり得ると言いたいだけである。

これから約1か月後、振られた元カノから久しぶりに連絡が来て喜ぶ別の男子学生を相手にしていて溜め息が漏れた。
脈なんてない。でも本人は舞い上がってしまっている。バカと言われれば確かにそうかもしれない。

第一、私自身経験があるから止められないのだろう。相手にもされなかった失恋した相手から再び連絡が来て、会ったらまた好きになってしまったことがあるから。それまで失恋しても引き摺ることなんてなかったのに。


back numberの「僕は君の事が好きだけど君は僕を別に好きじゃないみたい」の歌詞にある通り(歌詞の引用は難しいので自粛するが)、欲しいのは君なのである。自分の成長や満足なんていらない。ただ自分の想いと願いさえ叶うのならば。

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