葵と紅寧

これは、私と彼女が出会ったときの話だ。


 私は小さい頃から学習塾に行かされていてそれなりに成績は良かった。なので、小学校高学年になるころには中学受験の話を家でも、塾でもよく聞かされていた。別に勉強は嫌いではないので親の言いつけを守り、女子中学校への入学が決まった。

 春から入学し、約2か月。部活は、デジタルイラスト部に入ってそれなりに楽しい。小学校からの知り合いはいなかったが友達にも恵まれて毎日何不自由ない中学生生活を送っている。だが最近ずっと気になっていることがある。それは2つ上の先輩でデジタルイラスト部、部長の八乙女葵先輩についてだ。何故気になっているのかというと彼女は絶対に人に自分が描いた絵を見せないのだ。八乙女先輩は部長になるだけあって責任感があって周りの部員を引っ張っている姿には惚れ惚れする。だからこそ、何を描いているのか知りたい。気になり始めてすぐ他の先輩にも聞いたがやはり誰も見たことがなかった。でも、隠しているのに直接聞くのは気が引ける。引退するまで、もしくは一生見られないのか、と半分あきらめたとき転機が訪れた。

いつも通り部室に行ったのだが誰もいないどころか鍵すら開いていなかった。なんとそこに八乙女先輩がきて2人とも顔を見合わせる。「今日、部活ありましたよね?」「あったと思うけど」そこでようやく月間予定表を見ると「今日、休みになってますね、これ見てください」「予定すら知らないなんて、ひどい部長だね私は。部活もないし私は帰るよ」今なら2人きりだし絵のこと聞けるかもしれない。もしこれでだめなら諦めよう。「八乙女先輩、先輩が描いた絵を見たいです」「私の描いた絵?家まできてくれるなら...いいよ」さっきまではきはきと話していたのに急顔を赤らめて細々と話す姿は照れているようでとても愛らしかった。

「着いたよ」遂に先輩の絵が見られると思うとどんどん嬉しくなってくる。家に上がって、すぐに先輩の自室に通された。「そういえばまだ下の名前聞いてなかったよね、きいてもいい?」「はい!紅寧、早乙女紅寧です」「紅寧さん、今から見せるけど私とあなただけの秘密だからね」「もちろんです」そこでようやく先輩はパソコンに描いた絵を映し出してくれた。意気揚揚と見た絵は少しアダルトな百合創作だった。「どう、かな?」「とても綺麗です」「紅寧さんは百合は好き?」「はい。だって私、先輩のこと大好きですから」

 

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