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枯れた花の咲かせ方 壱

割引あり

私が私で愛せる人はあなたしかいない。

「だからお願い、愛して」

第一章

 6月、私は人口がそう多くないが田舎ともいえない街へと引っ越してきた。新年度になり、約2ヶ月「もう、グループできてるだろうな」そんなことを考え初日前夜を過ごした。翌日朝7時、家の中でけたたましくアラームが鳴る。ある程度支度を済ませ、2階の自室から1階へ。「朝食と昼食はこれで」ダイニングのテーブルの上にはそう書かれたメモと少量の現金が置かれていた。いつも通りのことでむしろ安心する。8時、私は家を出た。
 8時半、学校のチャイムが鳴る。「おい、今日転校生が来るらしいぞ」「女子だったら激熱じゃね」教室の前に着くなり声が聞こえてきた。騒がしい生徒はどの学校にもいるものだ。そこに担任が入り話を辞めるよう注意を促す。「皆知っているかもしれないが今日は転校生が来る日だ。莢蒾、中へ入って」その声を聞き教室の中へと足を進める。「今日転校して来た莢蒾だ。莢蒾軽く自己紹介頼む」担任が話を終え、口を開く「僕は、東京から来ました。莢蒾 桜兎と言います。ここには全然慣れていないので、色々教えてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」教室に拍手の音が響く。
 私の一人称は私だ。だが、見た目は男だ。だから、男の子の見た目をした私は人前では「僕」や「俺」と言っている。なんで、男の格好なのかなんて自分でもわからない。でも、昔から私は他のほかの女の子より背が高く、声が低く、力が強かった。男の子といるほうが楽で女の子と遊んだことは数えるほどしかない。どちらで過ごしていても特に困る事はない。だけど、男の子として生活していた方が楽なんだ。男の子と一緒にいても何も言われないし、女の子を好きになっても良いからね。前いたとこでもばれたり、疑われたことはなかった。こっちでもうまくやれるだろう、きっと。

第二章

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