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【読書メモ】山本貴光=吉川浩満『人文的,あまりに人文的』

今日の本

山本貴光(やまもとたかみつ)=吉川浩満(よしかわひろみつ)著
『人文的、あまりに人文的』古代ローマからマルチバースまでブックガイド20講+α
https://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860114510.html


索引・参考文献

● 索引あり。本書が書評本ということもあり,タイトル索引(4頁)・人名索引(3頁)・キーワード索引(3頁)が用意されています。

● 参考文献の記載はありません。但し,本書は書評本であるから対象となる本の文献情報は当然記載されています。


内容

● 本書の内容については2頁で端的に紹介されています。以下,引用いたします。

「本書は対談によるブックガイドです。『人文的,あまりに人文的』という書名にもあるように,もっぱら扱うのは『人文書』」
「『人文』とは『人の文(あや)」のこと。『人文学』といえば,人間や人間が生み出すものを扱う学問領域を指します(詳しくは本文でお話ししまょう)。」
「そんなふうに,おおいなる謎であり続ける人間やその創造物に,さまざまな角度から迫ろうというのが人文学といってよいかもしれません。そして,人文書とは,そうした探求の成果や試みを報告したり検討したりする本を指すのでした。」

● このように,本書は山本さん・吉川さんによる対談形式で為されるブックガイド本です。

● と言っても,当然ですが,単なる漫談が為されているわけではありません。広範な知識を有するお二人が毎回2冊の本を取り上げ,それらの本の内容を説明するだけでなく,それらの本が取り扱っているテーマに関連する知識や関連本をご紹介・ご説明くださいます。

● 「少しのことにも,先達はあらまほしき事なり」という有名な徒然草の一節(第52段)があります。ブックガイドについても同様です。本書は優れた先達です。

● また,お二人の話しぶりや,そのお話の内容は,知的好奇心を刺激します。「おお,これは面白そうだ」・「読んでみたい」という感情が湧き出てきます。

● 実際,私は,本書を読み,以下の書籍を購入しました。私の自宅と職場には積ん読の「タワー」が既に複数ありますが,それでも買わずにはいられませんでした。その意味で本書は罪な本です(笑)。

● 最後に,本書のイメージを掴みやすくするため,幾つか引用いたします。

「ところで、こうした『感情の劣化』状況は、いつ頃から顕著になってきたんだろう。『劣化』という言葉を素直に受け取ると、これは劣化していなかった状態から変化したという含意もあるよね。装置さえあれば誰もが発信できる環境になって、互いの耳目に入りやすくなっただけかな。それとも、あるときを境に『劣化』が生じたのか。」(13頁/山本)
「ものを読んで考えるのもそれと似た面があるよね。とくに哲学書が典型だけど、人が取り組んだ研究って、結論とかそこに至る議論だけを読んで受け取ろうとしても、うまく飲み込めないことが少なくない。その手前で、そもそもその人はなにを探究しようと思ったのか、なにを知りたいと考えてその研究に乗り出したのかという出発点にある動機がわからないと、ついていけなくなっちゃうことも多い。
 言い方をかえれば、著者がどういう動機に導かれて本を書いたのか、という観点から問題を共有したり共感できれば、俄然面白くなってくる。それに気づけば哲学書を読むのも楽しくなる。」(30頁/山本)
「吉川 歴史の表舞台に出ることの少ない人びとの声だよね。大きな歴史の記述の隣には、いつもこうした人びとの具体的な証言を並べておきたい。
山本 そうしないと、われわれはすぐ大きな主語で語り、ともすればどこにも実在しないものごとについて、自分ではそれと気づかないうちに本当のことのように信じ込んでしまいかねない。そんなお題目 (イデオロギー)だけが先に立てばどうなるか。本書はその顛末を教えてくれてもいる。」(104頁)
「ときどき学校その他で『本を読んで理解を深めるにはどうしたらよいですか』と尋ねられることがあります。そんなときは,読んだ内容を誰かに話すのをお勧めしています」(287頁/山本&吉川)

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