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【余談】馬主さんを怒らせた件から思うこと【同人】

SHO+XENONです。

 今回はちょっと連載を小休止して、今朝起こっていた炎上事件を見ていて思ったことをつらつらと。

オーナーさんの好意と厚意

 ニシノフラワーとセイウンスカイという馬が過去にいまして。これらはウマ娘にもなっているので今となってはよく知られた名前となっていますが、もう四半世紀も前の話ですので、未だにこんなに名前が語られているのは、普通だったらあまりないことです。

 このことについて好意的な反応をしていたのが、両馬のオーナーである西山茂行氏でした。

 正直、ウマ娘プリティーダービーに馬名を貸すことにはそれなりに葛藤があったと思うのです。それによって自分の資産の価値を下げられるリスクがあるからです。もちろん、そのリスクが顕在化するか否かはウマ娘側の運営やファン次第ですので、必ずそうなるとは限りません。しかし、その可能性はゼロではない、その判断は簡単にできることではありません。

 西山氏はそんな中、やはり名義を貸さないという決断を下したオーナーもいた中で、有難くも名義を貸してくれました。そのおかげでセイウンスカイやニシノフラワーはウマ娘の世界を彩る一員となってくれているのです。

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 そんな西山氏、これまた有難いことに、「こんなに愛してくれるなら」と、「二次創作も自由にしてくれて構わない」というような姿勢を明らかにしてくださったのです。

西山氏を激怒させた一言

 そんな西山氏が、その表明から半日程度で、このような声明を出しました。

【うちの馬の創作2次使用、エロ使用、固くお断りします。】

 なんと、西山氏の表明を受けて、「やったー、エロ描き放題だー!」といった、「エロ同人の自由化」を喜ぶ声が湧き上がったのです。

 詳細は端折りますが、このような言葉を受けて西山氏は「常識で考えろ」と不快感を示し、その後上記の表明に繋がるのです。

 最終的には、エロに関しては完全に否定しつつも、全年齢対象の二次創作に関しては自由にして良く、基本的には運営側の示すガイドラインに従って欲しい旨を表明し、一端騒ぎは終息しました。

これはウマ娘に限った話ではない

 私はこの件については「とうとうこのときが来たか」という想いで見ていました。ただ、「これが未来のある時ではなく今起こったこと」、「判断を下したのが西山氏であったこと」は、とても幸運だったのではないかと考えています。

 はっきり言えば、西山氏が寛大な方であり、物事を俯瞰的に見て判断してくださる方だったから、「この程度で済んだ」ように思うのです。もっと厳しい方だったらこのレベルでは済んでいなかったかも知れないという気がしています。

 さて、今回は大いに盛り上がっているウマ娘関連だからこそ、猛烈な勢いで話題になりましたが、話の本質は別にウマ娘固有の問題というわけではなく、いわゆる二次創作全てに言えることだと思います。というのも、これは権利の問題だからです。

そもそも権利というものの本質

 結論から言ってしまうと、権利と義務は同じコインの表と裏必ずセットになっているものであって、義務なくして権利もないという関係です。

 例えば日本国憲法は基本的人権というものが定義されており、日本国民全てが有しているとされています。これはまるで義務なく与えられている権利のように思えますが、日本国憲法には「国民の三大義務」もまた定義されています。日本国民に平等に与えられる権利が基本的人権であるなら、日本国民である以上必ず三大義務を背負っていることになります。ね、義務とセットになっているでしょう?

 また、権利を有するものは、その種類に関係なく、例外なく一つの義務を背負います。それは「他人の権利を侵害してはならない」というものです。他人の権利を自由に侵害して良いとするなら、同時に自分の権利も好きなように侵害されることを受け入れなくてはならないのです。自分の権利を護りながら他人の権利を好きなように侵害したいなら、それが可能なだけの圧倒的な力を持つ必要があります。

 さて、今回の件に当てはめるなら、西山氏はセイウンスカイやニシノフラワーのオーナーであり、名前を含めた「所有する権利」を有しています。この権利を、何らかの条件と引き換えにCygamesが借りることで、セイウンスカイやニシノフラワーというウマ娘を産み出しています。セイウンスカイやニシノフラワーというウマ娘キャラはCygamesが権利を有しますが、その名前の権利は相変わらず西山氏のものであり、ウマ娘の権利を有しているCygamesと言えども西山氏の権利を害するような運用をすることはできません

 では二次創作者達は、セイウンスカイやニシノフラワーの、あるいはそのウマ娘らに関するどのような権利を有しているでしょうか。他のウマ娘に関するどのような権利が認められているでしょうか。その権利が認められるためにどのような条件のもと、どれだけの対価を支払ったでしょうか。
 何もないはずです。つまり、彼らがどのような自由を主張しようにも、彼らは何一つ権利を有していないのです。二次創作者達の多くは本来、二次創作をする権利を持っていないのです。それでも二次創作ができていたのは、あくまで権利者が「何も言わないでいてくれているから」に過ぎません

 ウマ娘以外に関しても全てそうです。鬼滅の刃然り、東方Project然り、艦これやアイマスやボカロしかり。どれに関しても単に権利者がお目溢ししてくれているに過ぎません。彼らがある日NOを突きつけてきたら、我々はそれを受け入れることしかできないのです。

 はっきり言えば、そのことを分かっている者は事前に自重し、あるいは自浄しようと試み、分かっていない者が好き放題に自由だ権利だとありもしないものを掲げて声高に叫び、勝手なことをやっては他人の権利を我が物顔で侵害しているのです。

 今回はたまたまその、すでに歪みに歪みきっていた二次創作というものへの認識を顕在化させただけに過ぎません。今回こうならなかったとしても、いつか必ず同じ問題が何処かで起こっていたに違いないのです。今回西山氏は大変不快な思いをされたことでしょうが、あの寛大な西山氏だったからこの程度で済んだのです。そうでなければ高い代償を支払うことになっていたかも知れません。場合によっては問題を起こした本人以外も連帯責任を負わされて。


終わりに

 というわけで、今回の問題に関しては以上がことの本質であると思っています。願わくば、創作というものに関わる者全てが、このことをちゃんと弁えているような環境のできあがらんことを。

 ただまあ、これって凄く先進的な考え方なんですよ。この現代においてでさえちゃんと理解できているのは、地球上においても先進国に住む一部の人の、さらにその中の一部に過ぎないのです。教育や学習によってこの日本においては理解が進みつつありますが、未だにそれが理解できない者が非常に多いのです。この文明国家日本において文明的なことに携わるなら、野蛮人であってはならないと思います。

SHO+XENONでした。

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