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略字での漢字表記【小論文の漢字】  



【1】 略字が用いられる場面  

 小論文に限らず、志望理由書や自己推薦書等を作成する際、例えば「門」(もんがまえ)のような文字で略した書き方ができる文字について省略形で書かれる方が時々いらっしゃいます。よく見られるのが「関係」の「もんがまえ」の部分を省略形にしている略字や、「第1」「第2」の「第」を省略形にしている略字です。現代ではあまり用いられていないためか、特に高校生や大学生ではこのような略字で書いて原稿を提出される方はほとんどいませんが、社会人入試で受験をされる方はなかなかの割合で略字が用いられています。

【2】 「慶應義塾」と「慶応」  

 2023年夏の高校野球では、甲子園球場での表記は「慶応義塾」高校とされていました。これももちろん省略形の状態で正式な名称としては「慶應義塾」と表記されるものですが、一般的に「慶応」「慶応義塾」と表記されることも多く、私が在籍していた当時の慶應義塾内ではもはや「KO」として略して書く習慣もあったくらいです。今でもそのように用いられているのかは定かではありませんが、画数が多いためそのように省略形を使うことが多かったのは事実です。

【3】 省略表記がなぜ好ましくないのか  

 略字を書くことによるメリットといえば、それは何よりもその1文字をスピーディに書き終えることができることです。制限時間がある小論文試験において少しでも速度を上げる手段があるのであればそれを採用しない理由はありません。また稀に、略字の方が文字として綺麗に書くことができるという人もいるかもしれません。その2点が略字を書くメリットといえるでしょうか。

 しかし、小論文や志望理由書等において絶対に省略文字で表記をしてはいけません。特に志望理由書のような提出書類では絶対に略字で書いてはいけません。それは単純に、受験先に対して大変失礼な状態になるためです。

 私たちはあくまでも志望先に対して「多くの受験生がいる中でこんなにも高い倍率の中で合格不合格を決める状況にある中、こんな私ですがなんとか他の受験生を差し置いて私を合格させてください。お願いします。」と、極端に言えばなんとかお願いをする、どうしても合格させて欲しいと懇願する立場です。もちろん大学側としてはホームページ等で対等の立場であることを表現しているかもしれませんが、実際にパワーバランスとしては当然ながらお願いをする側とお願いをされる側のような状態です。その中で「省略」という、いわば面倒だからサッサと書いて次に行くような態度を取る状態というのは大変失礼を極めた状態だといえます。あくまでも合格をさせていただきたいとお願いをする立場ですから、自分の実力以上に綺麗な文字で読みやすい文字で丁寧に丁寧に書いていかなければならないわけで、そのような前提で省略表記を選択するというのはもってのほかです。

【4】 「慶應義塾」には特に注意  

 大学名で最も有名な略字といえば上記のように「慶應義塾」=「慶応」ともいえるでしょう。特に良くも悪くも2023年夏の高校野球で世間一般に知れ渡ったように、慶應義塾の一体感や帰属意識はかなり強いものです。三田会に代表されるように「絆」ともいえるこのつながりは非常に強く、そのためプライドも高いものです。そこで「慶応」と安易に省略形で表記してしまうことは人によってはかなり悪い印象を持つことも多いと言えるでしょう。気にしない人はまったく気にしないことですが、異常に気にする人も多いのは事実です。ですから、特に志望理由書・エントリーシート、プレゼン資料等において「慶應義塾」の表記には注意しておきましょう。

【5】 省略どころかむしろ全力で丁寧に書く  

 このように省略表記をするというのはもってのほかで、実際には普段通りに書くというレベルを超えて、なんとか丁寧に丁寧に、自分の中で出せる最も綺麗な文字、読みやすい文字を書いていかなければなりません。これは何も「美しい文字」「達筆」を意味しているわけではありません。実際には達筆ほど読みにくい文字はないわけで、小論文や志望理由書に求められるのは「丁寧な綺麗な文字」です。極端にいえば最も読みやすい文字というのは完璧に整理されたこのようなデジタルで作られた文字なわけです。そこは正確に理解をした上で、自分の中で最も丁寧な最も綺麗な文字を心がけましょう。

 

 



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