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「困難は分割せよ」

受験指導をしていると、この言葉をよく使うことがあります。

「困難は分割せよ」

これは井上ひさし氏の小説「握手」に出てくるルロイ修道士の言葉です。中学校の国語の教科書にも掲載されている作品ですので、多くの方の記憶にあるものかと思います。

私自身は引用を意識せずに使っていたので、よほど言葉の印象が強かったのだと思います。

さらにこの言葉の元をたどると、16世紀の哲学者、ルネ・デカルトに行き着きます。デカルトは方法序説という著作や「我思う故に我在り」という言葉で現代にも知られている西洋哲学の偉人の一人です。

私はこの言葉を二つの意味で理解し、使っています。


一つ目は実際に時間や期間を分割して計画、実行するという意味です。

例えば休日の学習時間を10時間として目標設定します。当然10時間をぶっ続けで実行することは難しいため、3時間、4時間、3時間の3セットにして朝昼晩に分割をする。

あるいは1冊の参考書を仕上げるのに、単元や分野を分けて月毎や週毎に目標を設定し実行する、などでしょう。

言葉通りの意味ですが、あらゆる中長期的なプロジェクトにおいて有効な手段としての時間軸や物量的な分割を行うことで、負荷を軽減し効率的に実行することを指導するときにこの言葉を使います。


もう一つの意味は、現在抱えている問題を切り分けて、課題を明確化するという意味です。

例えば、数学における問題に取り組むときに、その問題を関数と直線の交点に分けて考え、最小値を求める、といったことです。

あるいは、成績が思うように上がらないという問題を、学習時間や取り組む内容、苦手分野や心理的要因、学習方法や環境に分割し個別に解決方法を模索する、といったことです。

デカルトの主張した「分割」はこの意味が強いかもしれません。西洋科学においては古代ギリシャから現代に至るまで「分解」と「還元」による分析こそが大原則になるからです。


私自身も業務上の課題やプロジェクトにおいて、常にこの言葉を頭の片隅において取り組んでいるように思います。

もしかしたら、この言葉には友人や家族と困難を分かち合うという意味の分割も含まれているのかもしれませんが、そこは今後の私の課題ということで。


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